(5)母校対談~吾郷主将・波部~

 記録への挑戦と限界の突破。常に自分との戦いだが、そこには仲間の支えがあり、仲間とともに歩んできた努力の道がある。そんな競技に魂を燃やす選手たち。それが明大ウエイトリフティング部だ。

 11月9日から行われる全日本大学対抗選手権(インカレ)に先立ち、明大ウエイトリフティング部の魅力をお伝えします。選手紹介に始まり、母校対談や写真館、選手の意外な一面もお届けするのでお楽しみに!
 第5回は吾郷英之主将(農4=出雲農林)と波部真也(農3=出雲農林)の母校対談です。高校だけでなく、学部も同じ2人。時々逆転する2人の関係に注目です!

――高校時代はどんな先輩後輩でしたか。
吾郷
 最初は競技やっていけるのっていうぐらい体ができていなくて…。
波部 もやしでしょ。
吾郷 本当にこいつ競技やっていけるのって思ってたけど、結果的にインターハイに出たりしてました。練習は真面目にやってたかな。
波部 どんな先輩だったか…。小、中は知ってはいたんですけどあんまり絡んだことなくて、高校に入ってから絡み始めて…おとなしい先輩でしたね(笑)。

――練習も一緒にしましたか。
吾郷
 後半はしてたよね。
波部 そうですね。高1の途中くらいから結構頻繁にやってました。

――練習以外で交流はありましたか。
波部
 練習後は一緒に帰ってましたよね。
吾郷 まあ大抵ね。帰る方向も同じだったし。
波部 練習やって、雑談しながら一緒に帰ってたっていう(笑)。
吾郷 それ以外はないよね?平日遊びに出るっていうこともなかったし…。
波部 ないっすね(笑)。

――高校時代に影響を受けた人はいますか。
波部
 2人とも地元の一つ上の先輩に憧れてましたね。
吾郷 競技自体も強くて体バキバキで、人としても面白い人だったので。
波部 元キャプテンだったんです。練習スタイルとかちょっとまねしましたよね。今では出雲農林の練習スタイルですけど、練習中に吾郷先輩と自分が比較的脱いでるじゃないですか(笑)。
吾郷 ああ、確かに。
波部 脱いでる率は吾郷先輩と自分が高いです。あの影響を受けたのがその先輩でした。

――脱いで練習するとどうなるんですか。
波部
 テンションが上がります。
吾郷 正直、動きやすいっていうのが自分の中ではあります。

――高校時代の印象に残ってる試合を教えてください。
吾郷
 あんまりいい思い出じゃないんですけど、最後のインターハイです。1カ月くらい前にふら~っとジャーク100㎏くらいを太ももに落として、左の足首捻挫ねんざの足首も軽くひねって、太ももも打撲でした。結構崩れ落ちるようにケガしちゃって、まともな練習ができなかったんです。試合の2週間くらい前からまともな練習ができ始めて、インターハイ自体もベストが出てれば入賞狙えてた…のかな。
波部 いつもの調子だったら入賞狙えてましたよ。
吾郷 でもやっぱり本調子じゃなくて、ぎりぎり入賞できない9位くらいで悔しいという面でそれが一番印象深いです。

――ケガで練習できなかった時に何か声は掛けましたか。
吾郷
 何してんですかっていうのは言われた気が…。
波部 いや、言ってない(笑)。そんなこと言ってない(笑)。違いますよ。自分は最初落としたことを知らなかったんです。次の日の朝、練習行ったら吾郷先輩が松葉づえで、えっ! てなって、あ、この人もう終わったと思いました(笑)。後から知ったので驚きましたね。骨折れたかと思いました。
吾郷 骨は頑丈なので。
波部 骨折ってなくて、この人は怪物だなと思いました(笑)。100㎏を落としたら普通足折れますよ。

――波部選手の印象に残ってる試合は何ですか。
波部
 高3のインターハイでジャーク3位に入ってメダルもらえたことですかね。予選の1週間前に扁桃腺が腫れちゃって、点滴を打ちながら試合に出たんですよ。それでインターハイ出場権を得た感じになりましたね。

――大学進学を決めた一番の理由は何ですか。
吾郷
 声を掛けてもらったのが春の選抜でした。高3のインターハイまでずっと悩んでいて、高校だけで終わりにして、競技を続けるとしても一般の方でやろうかなと思っていたんです。
波部 それは初耳。
吾郷 就職も考えたりしてたんですけど国体までは部活をやることになっていて、高校の先生からも大学どうするって話もされて、途中までは答えをはぐらかしてたりしてました。時間がなくなってきて明治の寮の方にも見学に来て、すごいところで生活してるなって思って(笑)。寮自体の印象はあまり良くなかったんですけど、大学が明治って聞くと、ねえ?
波部 (笑)。
吾郷 六大学だし、行けるものなら行きたいという感じで来ました。
波部 自分はですね、本当は吾郷先輩に憧れて来ましたっていうのが一番いいんだろうけども…。
吾郷 まあ、そうは思わないよね(笑)。
波部 もともと大学に行こうと思っていて、卒業後どういうかたちにしろウエイトは続けようと思っていました。吾郷先輩も行っていたので明治から話が来て、じゃあやろうかという感じです。

――同じ高校の後輩が入ってくると知った時の心境はいかがでしたか。
吾郷
 やっぱり入ってくるのはうれしいです。自分の時も母校から初めて明治に行くってことで、周りからいろいろ言われていたので、その後に続いて来てくれて…。高校で競技を始めたら高校で終わる人が多いので、続けてくれたのはうれしかったです。

――先輩がいる明治に行くことを報告しましたか。
波部
 最初、地元の高校の先生から話されて、たしかメールで言いましたよね?
吾郷 うん、まあ。
波部 一応メールで伝えはしました。「明治から話来ました」「おう」。それくらいです(笑)。やりとりはそんなしてないです。
吾郷 こっちのことを伝えるわけでもなく、ああそうなのっていう感じでした(笑)。
波部 メールではそれだけだったんですけど、吾郷先輩が夏休みに地元の高校に戻ってきた時にはいろいろ聞きましたね。こっちでの生活とか大学の勉強とか。

――明大に対して持っていた印象を教えてください。
吾郷
 明治くらいになると全国でもトップクラスになるような人ばっかり入っていて、自分たちで通用するのかなっていうのがありました。勉強面でも高校は一応専門高校だったんですけど、そこまで詳しく勉強は…。
波部 え、しなかったんですか(笑)。
吾郷 しなかったかなー(笑)。レベルが何個か飛んだようなものばっかりで、こんなのできるのかなって思ってました。入ってみたら、まあ友達にいろいろ助けてもらってるんですけど、意外にできるかなっていうのはありました。
波部 自分は部活に対しては明治は駅伝とかでよく話を聞くじゃないですか。スポーツが強い大学なので、高校のトップレベルの人たちが集まってるところだから、できるだけそれをしたいなっていうのはありました。勉強面に対しては自分の学科が農業経済学とか社会学で新しい分野への挑戦だったので、吾郷先輩と一緒で正直言って通用するか心配はしてました。

――同じ農学部ですが助け合ったりすることはありますか。
波部
 共通科目が一緒なので、まあ一緒に授業に出て、1年生の時は吾郷先輩からテストの情報もらったりして助かりました。最近は吾郷先輩が自分の学科の授業を取ったりしていたので、テスト前に一緒に勉強したりしました。
吾郷 農学部は大変です。
波部 大変です。

――高校と大学でお互いに変わったところはありますか。
波部
 吾郷先輩は高校時代から結構努力家ではあったんですけど、大学入ってより一層がんばるようになったというか(笑)。
吾郷 (笑)。
波部 ちょっとキャラは変わりました。高校時代はおとなしいっていうイメージもあったんですけど、すごく真面目な先輩で…。
吾郷 今は真面目じゃないの?
波部 大学入って、ちょっとおとぼけキャラになったかなー(笑)。おとぼけというよりギャグを言うキャラになってたんですよ(笑)。
吾郷 変わったんだと思います(笑)。

――反対に吾郷主将から見て波部選手はいかがですか。
吾郷
 何か変わった?
波部 変わりましたよ。
吾郷 高校の時は部活くらいしか知らなかったので、大学で一緒に授業受けたりして案外きっちりしてるところはきっちりしてるなっていうのがありました。大学でもゼミ長とかやってるみたいなので、部活以外でも頑張ってるなって思います。
波部 新発見ですね。変わったところはないっすね(笑)。
吾郷 変わったところはよく分からないです(笑)。

――ご自身ではいかがですか。
波部
 10代から20代、まあ高校から大学に変わるにつれて、ものの見方の視野が広くなったと思います。まあ、いろんな生き方があるなと(笑)。
吾郷 なんか漠然(笑)。
波部 大人でしょ(笑)。
吾郷 自分はあんまり変わった感覚がないんですけど…。競技面ではあんまり変わってないかな。高校の時もほっとかれても1人で練習するような感じだったので、性格は…前よりはよくしゃべるかな、たぶん。どうなんだろう。
波部 本当に高校時代はおとなしかったんですよ。部室に自分が一番最初に着いたって思った時でも、振り返ったら実は吾郷先輩がいたっていう(笑)。それくらいのおとなしさだったんですよ。
吾郷 影が薄いんです。ここにいるよーみたいな感じじゃなくて、1人で細々とぼーっとしてる感じだったので。
波部 明るくなったというか、東京出てきたからっていうのもあると思うんですけど、恐らく人に着いていタイプだったと思うんですよ。
吾郷 間違ってない。
波部 それが東京に1人で出されて、多少は自ら動くようになったかな。保護者みたいじゃないですか、自分(笑)。

――今年は主将をされていますがいかがですか。
吾郷
 昨年の年末に主将って言われて、人についていくことが多かったので、逆に引っ張っていくことができるのかっていうのがプレッシャーになって嫌になってました。でも、いつまでもそんなこと考えててもしょうがないので、気持ち切り替えてやってはいたんですけど、やっぱり1人でやっていくのは難しくて…。高校の時も一応主将はやっていたんですけど、主将2人制っていう変わった感じだったので、高校の時は主将っていうことを気にしたことはなかったんです。でもやっぱり大学になると…。
波部 まあ、要約すると責任感が生まれたんですよ。
吾郷 ああ、それでいいです(笑)。何言ってるか分からなくなっちゃった。

――お互いに尊敬し合ってる部分を教えてください。
波部
 吾郷先輩は結構不器用なんですけど、一つのことに対して頑張れる人なので、さっきの責任感じゃないですけど、そういった真面目なところですかね。
吾郷 後輩に話しかけたり、教えたりしてるし、ご飯とかも連れていったりしているみたいなので面倒見が良いところじゃないかな。

――お互い部内ではどのような存在でしたか。
吾郷
 高校の時は後半になったら結構同じくらいの重量やっていたので、良い練習相手になってました。
波部 過去形(笑)。確かに、今はね(笑)。
吾郷 大学に入ってからはいろいろあって、自分が調子悪くて記録が上がってなかったり、でも練習の記録自体に差が出ても練習中はお互い言ったり…。
波部 雑談じゃないっすか(笑)。
吾郷 まあ雑談もするけど何やかんや楽しい練習相手です。
波部 高校時代は競技面だけは記録が今ほど離れてなかったので、スクワットとかほとんど同じ重量だったので、吾郷先輩が何㎏の重量でやったら自分はその1㎏先をいくみたいな、良きライバルというか…。うん、そんな感じですね。大学では競技的には……まあ主将って感じです(笑)。生活面で言うとさっき保護者って言ったみたいに先輩でもあり、年下のような面も持ちつつ(笑)。吾郷先輩のできないことは自分がやって、自分ができないことはやってもらってという感じです。

――競技以外で高校で力を入れていたことはありますか。
吾郷
 競技以外…難しい。部活しかしてなかった。
波部 モンハン(ハンティングアクションゲーム“モンスターハンター”)に力を入れてましたって(笑)。
吾郷 いや、ゲームもそこまで…。
波部 みそ、みそ。
吾郷 あれは卒業するために嫌々やってただけだから(笑)。
波部 自分たちの高校は卒論があるんですよ。その課題研究で、吾郷先輩は食品化学科というところにおられたので、卒論はみそについてでした。
吾郷 加工食品とかの成分分析とかをする授業もあったので、身近な食品ということで。
波部 卒業のためとはいえ、力入れてましたよ。
吾郷 内容はともかく、やりました。
波部 自分は部活だけじゃなくて、学生なので勉強面はしっかりしてました。
吾郷 へえー。
波部 自分は動物化学科っていうところにいたので、動物系の専門知識を勉強して、多少なりとも今の学科とか研究室で役に立ってますね。文武両道!

――競技面で高校時代のことが今に生きていると感じるときはありますか。
波部
 お互い多分一緒なんですけど、スクワットです。明治の中でもかなり強い方なんですよ。高校時代お互いにスクワットを競ってやっていたっていうのもありますけど、人よりか脚は強いかな。今はどうか分からないけど(笑)。
吾郷 一番はスクワットですね。毎日やってたし。
波部 ほぼ毎日やってましたよね。
吾郷 それが当たり前だと思ってやってたしね。

――高校時代の思い出話を一つ教えてください。
波部
 本当にくだらないからなー(笑)。吾郷先輩が高3の時のインターハイで、3年生は最後の試合なので先生も優しい言葉を掛けてくれるんですよ。自分はそのインターハイに56㎏級で出て入賞も狙えたんですけど、減量が苦しくて試合自体ボロボロになってしまったんですよ。まあでも先生が上の人から優しい言葉をかけてくれるので、自分もそれなりに優しい言葉をかけてくれるんだろうと期待していたんですよ。それなのに言われたのが「お前は56㎏級じゃねえ」で、階級を一つ上げるのか、そのままでいくのかその日に決めろって言われたんですよ(笑)。言葉的には階級上げなかったらもう島根には連れて帰らないみたいな感じで、いつも厳しめでした(笑)。でも先生は吾郷先輩にはすごく優しかったです(笑)。励ましの言葉とかお褒めの言葉とかを吾郷先輩は頂くんですよ。でも、自分は中国地方の大会で優勝して新記録出したのにしかられました(笑)。
吾郷 先生は厳しかった。俺には優しかったけどな(笑)。

――大学で自分の力が通用したと感じたことはありますか。
吾郷
 入って1年目はケガが多くて全然記録も伸びなかったのできつかったんですけど、2年で記録が今と同じくらいまで伸びたので、試合でも全日本新人と東日本個人戦で優勝したので、このままいけば上目指していけるのかなって思いました。大学に来て優勝ってなるとそれなりに自信になるので、そのときにこのまま頑張ろうって思いました。
波部 自分はないです(笑)。1年の最初にヘルニアやっちゃって神経にもかなり触れちゃっていて下半身がしびれていて…。ほとんど練習もできなくて、筋トレやったり競技戻ったりで繰り返してましたね。今年の2月にこのままじゃいけないなって思ったので、手術しようって決断して、今は多少記録も伸びてるので…うーん、そうだな、ない(笑)。まだまだです。

――ケガを経験されて競技と向き合えなくなったことはありますか。
波部
 いっぱいありますよ。ケガしてるとずっと筋トレで記録も伸びないし、面白くないんですよ。でもウエイトをやること自体嫌いではなかったので、どういう形にしろ続けていこうっていうのは思ってました。練習中とかはかなり痛かったので、ちょっとしんどい感じが出ると、一応吾郷先輩が大丈夫?みたいな言葉は掛けてくれたのかなー(笑)。

――まだ足りないと感じる部分はありますか。
波部
 もう十分ですか?
吾郷 いや、まだまだだなー。
波部 たぶん吾郷先輩はどこまでいってもまだまだなんですよ。
吾郷 結果的に今の記録が2年の記録で止まってるので、調子がいい時にケガして、調子が悪くなってっていう繰り返しで、やっと今調子が戻ってきたのでまたケガしないか心配なんですけど…。練習のやり過ぎでケガすることが多かったので、記録だけで言うと今の状態に満足したくないし、まだまだです。
波部 自分は気持ちに左右される部分があるので、精神力がまだまだですね。

――最後にお互いを一言で表してください。
波部
 風林火山!
吾郷 えー何それ(笑)。
波部 静かな時は静かなんですけど、熱い時は熱い。
吾郷 そんな熱い時ある?
波部 今はこんなふわーっとした感じですけど、試合とか練習になると目付きが変わります。
吾郷 そんな変わるっけ(笑)。
波部 目が血走ってますよ(笑)。
吾郷 波部は…まったく分かんないな(笑)。
波部 八方美人?
吾郷 ああ、悪い意味じゃなくて八方美人かもしれないです。人によってはちゃんと対応の仕方が変わって、オンオフもしっかりしてます。八方美人じゃないなこれ(笑)。何だろう。
波部 切り替えって言うのかな。何で自分のこと自分で言わなきゃいけないんすか(笑)。
吾郷 言葉が出てこないんだもん(笑)。

――ありがとうございました。

◆吾郷英之 あごうひでゆき 農4 出雲農林高出 166cm・68kg
◆波部真也 はべしんや 農3 出雲農林高出 170cm・64kg

次回はウエイト写真館です。アップは10月24日(水)の予定です。お楽しみに!

◆第58回 全日本大学対抗選手権◆
日程:11月9~11日
会場:羽曳野コロセアム(大阪府羽曳野市)
◆会場へのアクセス◆
近鉄南大阪線「恵我ノ荘」駅から徒歩10分