
若手主体で臨むも良い流れをつくれず/出雲駅伝
3大駅伝で最も距離の短いスピードレースとなる出雲路では1区の8・0㎞で流れに乗れるかが勝負のポイントの一つだ。1区は各校エース級の選手たちが配置され、スピードレースが予想された。しかし何が起こるか分からないのが駅伝。大迫(早大)をはじめ、力のある選手が実力を発揮できない。その筆頭が明大の有村優樹(商2=鹿児島実)。「調子は良かった、メンタル的に弱かった」と最下位の21位で2区前野貴行(農2=須磨学園)に紫紺の襷をつなぐこととなった。
2区は最短距離5・8㎞の戦いだ。2区には7月から急成長中の前野がエントリーされた。前野は初の駅伝出場。「スピード区間なので自分の走りを生かして文元(慧・政経2=洛南)につなげる走りをしたかった」と力走を見せ、順位を21位から15位まで上げ、チームの立て直しを図った。
3区を任されたのは昨年出雲駅伝1区を走った文元。今まで1区を走ることの多かった文元は1区以外を走るのは高校生以来。「集団走ではなく1人で走るのは昨年出雲を走ったといっても全く違う駅伝だった」と振り返った。順位を3つ上げ、12位で4区の駅伝初出場の山田速人(商2=西脇工)へ襷をつなぐ。振り返ると文元は区間5位の好走だった。
文元から襷を受け取った山田速も粘りを見せる。レース前、鎧坂選手から「とにかく粘れ」とメールをもらった。アドバイス通り順位を変動させることなく11位で5区へつないだ。山田速は1年次故障続きで満足のいく走りができず、2年へ進級。今回は駅伝初エントリーの初出場となった。
5区は唯一の1年生で出場となった木村慎(商1=浜松日体)。入学してから「ルーキーは横手(健・政経1=作新学院)だけじゃない」と意識的に練習を積み重ねてきた。5区は全体的にハイペースでの試合となり、区間新記録が4人も出る波乱の区間となった。その中でも木村は区間5位、昨年までの区間記録に並ぶ快走で最終区6区の大六野秀畝(政経2=鹿児島城西)に5区間の選手の思いの詰まった紫紺の襷をつないだ。
最終区の大六野。自らが希望した6区での出雲路となったが「オーバーペースになってしまった」と悔いの残る結果に。大六野自身も「今回全く結果出せていない。納得がいっていない」と悔しさをにじませた。5区から順位を上げることなく11位でのフィニッシュとなった。
今回の敗因を大六野は体調管理と話し、西弘美駅伝監督も「若いから、というわけではなく、力を持ちながら結果が出なかった」と振り返る。「みんなが体調を整えてベストを尽くす、調整力が大事」(文元)と選手たちも課題は認識している。今回は残念な結果となったが、次の舞台、全日本駅伝は目前だ。今回の反省を生かし、リズムよく紫紺の襷をつなぐことができるか。選手たちの成長、活躍に期待が懸かる。
[川原夏樹]
試合後のコメント
西弘美駅伝監督
「惨敗。もうちょっといけるかなと思っていたけど。決して調子は悪くなかった。ただ大事なのは今後にどう持っていくか。逆に膿を出し切って次を迎えるということもできるかもしれない。文元と木村は合格。文元、木村以外は課題の残るところがあった。今年のチームは粒はそろっている。全体として見れば過去最高。その中でこうなってしまったのは何かしら原因がある。それをトレーニングの中で詰めていく。全日本、箱根に生かす。それをやって初めて失敗が生きる。またこれから。(優勝した青学大は)1、2年というだけじゃなくて、4年生との絡みができていた。うちは若いからとかではなく、力を持ちながら結果が出なかった。そこは反省点。他はあまり関係ないけど、駒澤、早稲田もあれだけの力を持ちながら、力を発揮できなかった。それが明治が一番大きく出てしまった。出雲は向かい風があったりして、(タイムの)設定ができない。その条件の中でどうやっていくか。駅伝は流れがものすごく大きい。中央は1、2区で良い流れで行った。明治はスタートで流れをつくれなかったということと、その流れを払拭(ふっしょく)するだけの核になる大砲がいなかった。とにかく次に生かしていかないといけない」
1区有村
「夏合宿からいい流れで来て、調子が良かったので1区は走りたいと思っていた。そういういい流れが来ている中で、チームには申し訳ないことをした。出雲に1・2年生しか来ていない中で上級生にも申し訳ない。レースとしては、外国人と大迫さんが出ていくだろうから、それを後ろから見ていこうと思っていた。失速の原因は調子は良かったが、メンタル的に弱かったこと。普段ならこんな走りはしない。気持ち的に焦ってしまってついていくことができなかった。豪さん(山本豪長距離コーチ)には『出雲が全てではない。切り替えていけ』と言われた。試合慣れができたことは良かったと思う。昨年走った文元からは『3kmまでは上りでそこから』というくらいの話しかしなかった。『若い力』 と言われる1・2年生だけのチームだったが、みんなに迷惑をかけてしまった。でも、あと2回走れるから、全日本・箱根と今回の経験を生かしていけたらいい。今年5区を走った木村が1番安定していた。それは先輩としては申し訳ないが、いい後輩がいるなとも思った。全日本で走らせてもらえるなら、リベンジという気持ちで臨みたい。もう一度1からやり直して、チームのために走りたいと思う」
2区前野
「自分の走りもチームの結果も、非常に良くなかった。1区で遅れてしまったのはあるけど、自分で流れを変えられなかった。それができなかったのは、単純に力不足。スピード区間なので自分の走りを生かして文元につなげる走りがしたかった。(初駅伝で)チームの代表としてやるので、プレッシャーはあった。三大駅伝は特別で、その分重みもある。初戦だったのも力みにつながった。(下級生中心のメンバーだが)半分が初めて。苦い経験になったが、その分それぞれが学べたものも多いはず。走れたことを次につなげたい。(全日本、箱根に向けても)今日のことはプラスに変えていかなければ。気持ちを切り替えて、次は勝負ができるようにしていく」
3区文元
「今回のレースはタイム的に、青学の久保田と40秒差であまり良くないものだった。点数でいうと60点で何とか単位をもらえたぐらい。Cぐらい。残りの40点はやはりタイムのこと。(今回は3区だったが)今回は1人で走ることが多かった。1区は集団走で人数多い中で走るのでその中でレース展開を組まないといけないけど、今回は1人で全部自分でレース展開を考えなきゃいけなかった。難しいというよりは新鮮感があった。昨年の経験といっても1区と他は違う。全く違う駅伝だったので生かせた経験はあまりなかった。高校2年の時からずっと1区を走っていて、今回は3年ぶりぐらい久しぶりだった。長い間1区だったので経験的には1区の方が走りやすい。区間賞を取ろうと思った設定タイムだったので大幅に遅くなってしまった。(全日本に向けて)チームの底上げを今からするのは厳しい。みんな夏合宿できちんと走ってきたのでみんなが体調を整えてベストを尽くす調整力が大事。(自身の体調は)いつも通りでした。1年ぶりの駅伝は楽しいものだった。駅伝が好きで陸上をやっている面もある。襷をもらう瞬間も渡す瞬間も楽しく感じた。1区は流れをつくる大切な区間なので、全体の流れを自分でつくっていきたい」
4区山田速
「緊張して自分の走りができなかった。本来ならば自分は走れるメンバーではないので、今回選ばれたチャンスを生かしたかったができなかった。鎧坂さんから『とにかく粘れ』というメールをもらった。最下位でスタートしたのでとにかく前を追おうと思ってレースに臨んだ。次の木村に勢いをつけるつもりで、思い切って突っ込んだが粘れなかった。まだまだ甘い部分がある。こういう状況でも自分の力を発揮できる選手じゃないと今後は使ってもらえない。全日本までに修正する点はたくさんあると思う。力があると言われていたが今の明治には速さはあるが強さはない。自分は大学入ってほぼ1年間故障だったので、『走りたい』という気持ちがあったがその気持ちだけで終わってしまった。『走りたい』を上回る結果をを残したい。今回の惨敗で1回気持ちを切り替えて、チームが納得いくように全日本までの4週間頑張りたい」
5区木村
「1区から遅れてしまって下位の順位からのスタートとなった。周りに誰もいなく1人で走らなくてはならない状況だった。初め速いペースで行き最後まで粘れた。例年はこの5区は向かい風が吹く中、今回は追い風で走れた。区間タイ記録だがタイムは気にしてなく、もっと上の区間順位を取りたかった。1年生は1人だったので、他の1年生に刺激を与える走りをしたいと思っていた。また、デビュー戦でもあるので悔いのないように突っ込んだ。あと、やってやろうという気持ちで臨み、まずはいつも通りと同じようにやることを心掛けた。また先輩からのアドバイスでコース状況についてラストの残りの下りで粘り、いかにペースを上げられるかがポイントだと教わった。これからの全日本、箱根に向けては今回のことを切り替えて、チームでリベンジをし、個人的には区間賞を取りたい」
6区 大六野
「全然前が見えなくて、少しでも追おうと思ってオーバーペースになってしまった。後半はペースを落として粘れなくて、レース内容としては全然駄目でした。点数にするとしたら20点。80点分は落ち着いて走れなかったことと、その中で全然粘れなくて前とも縮めることができなかったこと。6区決まった時はうれしくて、どの順位で来ても自分の役割を果たそうという気持ちだった。襷を受けた時は、ペースを上げて行って、抜ければいいなと思っていた。今回は全然みんな力出せてない。全日本箱根があるので、みんな体調を上げていければ。エースと呼ばれることもあるが、今回全く結果出せてない。納得がいってない。言われる分には、それに見合った仕事をしないといけないとは思うんだけど、今日は全然駄目なレースだったので自分の中ではエースとは言えないなと。3、4年生がいない中で自分たちが一番上で、緊張感とかは変わらないと思うが、安心感が多分違ったと思う。レースへの臨み方はいつもと同じような感じだった。今後の全日本、箱根で巻き返したい」
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