(2)QB・WR編

 今季のグリフィンズは、伝統のラン攻撃だけでなくパッシングユニットにも目が離せない。例年通りラン基盤のプレースタイルこそ変わることはないが、ラン警戒の敵チームのスキを突くようにパス攻撃が大きな脅威となることは間違いない。
 第2回の今回は、今季のカギを握るQB#2杉浦祐治(文4=駒場学園)とWR#1鈴木謙人(法4=明大中野八王子)の注目のホットラインにスポットを当てる。

QB(クォーターバック)…オフェンスの司令塔的存在。グリフィンズでは基本的にQBがプレーコールを出すことからも、ゲームの流れを大きく左右する重要なポジションである。パスを投げる、RB(ランニングバック)にボールを渡す、自らボールを持って走るなどのさまざまなテクニックに加え、試合状況を冷静に判断できる頭脳が必要とされる。QBの資質がオフェンス全体の優劣に直結するほどで、その責任は重大。以上を含めてフットボールの花形ポジションと言われるゆえんである。

WR(ワイドレシーバー)…パスキャッチを専門とするポジションでQBからのパスをキャッチする。具体的には相手DB(ディフェンスバック)をかいくぐり、ロングパスやタッチダウンパスを捕るのが主な役割。パスプレーはランプレー以上に一発で大きな距離を稼ぐことができるため、試合の流れを大きく変えるインパクトを持つ。しかしその反面、インターセプトによりゲームの流れを変えられるリスクも大きい。

背中でチームをけん引・杉浦祐冶
 グリフィンズのオフェンス陣を引っ張るスターターQBがアメフトを始めたのは高校生の時。中学時代の友達の勧めでアメフトに出会った。高校時代にはQBのほか、LB(ラインバッカー)やTE(タイトエンド)も経験。しかしフィールドの各選手の役割が綿密に振り分けられて決まっているスポーツだからこそおのおののプレーの自由度は減り、高校時代は「やらされているアメフト」だったと当時を振り返る。そのため一時はやめたいと思ったこともあった。しかしグリフィンズに入ってからは学生主体の、自主性を重んじるアメフトに大きなやりがいを感じているという。これは他大のチームとの大きな違いとして、グリフィンズはフィールドに出ている選手が全てのプレー内容を考えるという特徴による。しかしプレーコールを出す役割を一手にQBが担うグリフィンズでは、そのプレッシャーも大きい。アメフトについて考える時間は高校時代と比べても格段に増えた。「自分たちのポジションだけではなく、他のポジションにも気を配ってプレーしたい」。QB以外のポジションも経験したことのある杉浦だからこその言葉だ。杉浦は自身のことを「特徴のない選手」と評するが、だからこそ「タックル受けても最後まで粘る」(小谷田雅哉・政経3=日大三)。最後まで諦めない姿勢でチームをけん引する。

 昨年のリーグ戦対日大フェニックス戦の序盤、得意のラン攻撃が封じられて思うようにゲインできなかった。「苦しい状況を打開するプレーコールができなかった」と振り返る。その反省もあり、今季はチーム全体として多彩な攻撃を目標としている。リーグ初戦の上智大ゴールデンイーグルス戦では「軸になるプレーは何なのか、これが見えず葛藤しているんだと思う」(岩崎恭之監督)と指揮官の評価は辛口。それでもまだまだシーズンは始まったばかり。今季の大一番である最終節の対日大フェニックス戦に向け、チームの強み、自らの強みを見つけてさらなる武器にしてゆく。

長身&快足レシーバー・鈴木謙人
 「自分の持ち味は体格とスピード」(鈴木)。190㎝の長身に加え、40ヤード走4秒5というプロ並みの脚力の持ち主だ。一般入部で入学後、初めてフットボールを始めたものの、高校時代までの野球経験で培ったその身体能力で、ルーキーイヤーから即戦力として活躍する。2、3年次もロングターゲットとしてチームの中核を担う存在としてそのポジションを守り抜いてきた。そして、今季は副将としてキャプテンシーを発揮し、強烈にレシーバー陣を支える。練習後に残って取り組む姿勢からもラストイヤーに懸ける思いは人一倍強い。
 

 「明治はラン攻撃のイメージが強いので、鈴木の存在は一発の怖さを持っている」(高松俊幸・政経4=駒場学園)と、主導権を一気に引き寄せる破壊力は今季も健在。ラン攻撃に加えてパス攻撃が大きなアクセントとなって機能すれば、今季の攻撃の大きな強みとなることは間違いない。現に開幕2戦でレシーブによる獲得ヤード数は136ヤードと好調。「練習でいかにQBと信頼関係を築けるかが勝負」(鈴木)と語るが、縦へのパスを投げれば捕ってくれるというQBの安心感は計り知れない。天王山となる日大フェニックス戦、そしてその先に待つ甲子園ボウルへ。鈴木のここ一番でのビックプレーが躍進の原動力となる。