(4)4年生特集
<高橋直奨>
高校からボートの世界に飛び込んだ。理由は「痩せたかったから」と笑うが、国体3位の経歴を持つ実力者でもある。高校時代に磨いたのはパワフルなこぎだ。水上トレーニングだけではなく、筋力トレーニングにも重きを置いた。またエルゴは毎日の日課。まずはパワーで勝負できる体づくりに励んだ。トレーニングの成果あってか2年生になると出場機会が増え、経験を積み重ねていく。しかし同時に苦い体験も味わった。高校ボートの強豪・関西高に敗北。「ボロボロに負けた。それでインターハイで倒してやろう」とリベンジを誓った。迎えたインターハイ、結局は「置いていかれた」と関西高には敗れるも、舵手なしクォドルプルで準優勝。この結果が明大進学の道を開いた。
「何から何まで自分たちでやる。考えなきゃ駄目」。大学に入って変わったのは自ら学び取る姿勢だ。高校までは自分がやることは決められていたが、大学はそうではない。練習メニューも自分で組み立てる。DVDや同じく戸田で練習を行う実業団やナショナルチームの選手の動きを参考にすることもあるという。大学では指示が限られる分、学生たちが自由に自分のこぎを追求する。生活面ではタフさがうかがえる。他の選手たちが最初は寮生活がきつかったと口をそろえる中でも、それほど苦ではなかった。「やろうと思えばできた」とおどけて見せた。
「ボートはスピード競技。タイムが全て」と競技の厳しさを話す。だから結果を求めるには、競い合って自分を高めることからは避けられない。自分の結果に対して良ければ喜び、今一つなら悔しがる。そんな思いを大切に次の一歩に反映したいという。1年生からの追い上げはやはり大きな刺激になる。「入ったばかりの1年生と大学4年間を経験している4年生では違うものがある」。昨年のインカレ前には体力の向上を感じ、今なら戦える技術もある。言葉では伝えられなくとも、4年前には上れなかった表彰台の中央に上る姿で伝えられるかもしれない。
<高木智代>
高木は大学1年から結果を出す。山口一穂氏(平23政経卒)と組んだ舵手付きペアで見事インカレで優勝を飾る。「ずっと足を引っ張り続けてきて迷惑を懸けてしまっていたので優勝できた時にはうれしいというよりほっとした」と優勝への重圧に苦しみながらも目標を達成する。続く全日本選手権では予選であばら骨を折るハプニングに見舞われるものの、仙台大の猛追をかわし優勝。「ケガで優勝できなかったとか言い訳はしたくなかった。優勝はしたけどもっとうまくならなくては」と強く思ったという。
2年次は後輩の今井智子(商3=美方)と組むことに。前の年と違って今度は自分が引っ張る立場になった。「ペアの良さは先輩から後輩に受け継いでいけるところだし、自分が去年山口さんから教えてもらったことを伝えようと思った」と言う。そしてインカレ・全日本と見事連覇を達成。「今井はパワーがあるし、とても信頼できる後輩。負ける気がしなかった」というように盤石のレースを見せた。
順調に成績を収めていた高木だが昨年大きなスランプに陥る。昨年連覇を達成したペアでまさかの4位。「インカレの前からいろいろうまくいかなくてそのままインカレに突入してしまった。消えてなくなりたいぐらいに落ち込んだ」と初めての経験に心が揺れた。それでも全日本に向けて角久仁夫監督に「同じペアで勝負させてください」と直訴。ペアの今井とも話し合い「全日本の連覇はまだ途絶えていない」と目標を再び確認する。迎えた全日本では連覇は途絶えるも2位に。「優勝はできなかったけど自分たちの出せるものは出せた」と納得のレースができた。
4年生として迎える最後のインカレは高校時代の同級生・高島朋江(農4=坂出)とペアを組む。「もう一度目標である日本一を目指していく。チームの総合優勝のためにも私たちが負ける訳にはいかない」と気合い十分だ。
高木は大学でボート生活を終えるという。「明大に来て、個を大事にする環境で人間としても成長できた。今年は最後のインカレだし、全部出し切るつもりで燃え尽きたい」。再びの日本一の座へ、彼女の最後の戦いが始まる。
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