5000mで決めた!意地の残留/関東学生対校選手権

2012.05.21
 2部降格の危機を救ったのは1年生ルーキーと主将だった。
 3日目の19日は無得点に終わり、総合得点9点で迎えた関東インカレ最終日。砲丸投げに出場した佐藤一桐(農3=都立科学技術)が14位に終わった時点で、明大はチームにとって最終種目となる5000mを残し、1部全16校中15位。2部降格を前にした崖っぷちの状態であった。チームの命運を背負って5000mに出場したのは菊地賢人主将(理工4=室蘭大谷)、廣瀬大貴(営3=洛南)、横手健(政経1=作新学院)。横手が4位、菊地が7位に入賞し、チームの1部残留を決めた。

 スタートから外国人留学生や大迫(早大)を中心とした先頭集団に揺さぶられながらも、粘りの走りを見せ4位に入った横手。自己ベストを更新し、5点を獲得した。中盤から後半にかけ徐々に順位を上げる理想的なレースを見せ、1年生ながらチームに大きく貢献。「残留に向けて後がない状況だったが、焦っても仕方がないのでとにかく自己ベスト、入賞を考えて走った」と大物ルーキーの実力を示した。

 菊地も前半から先頭集団で攻めのレースを展開した。3600m過ぎからのペースアップに対応できず、後半は少し疲れたものの、ラストの直線100mでは意地のスパートで村澤(東海大)を振り切り7位。「4年が得点できないままでは終われないし、主将としてもこのままでは終われないと思っていた」と主将らしい走りで2点を獲得した。
 ゴール後、菊地と横手はすぐさま抱き合い、明大の応援席も1部残留を喜ぶ歓声で沸き上がった。

 明大はこの5000mで計7点を獲得し、合計16点で総合14位に浮上。食中毒で苦しめられた昨年に引き続き、今年も厳しい戦いであったが何とか1部残留を決めた。

 今大会は長距離部門での得点が12点と多くを占めたが、得点を取れる選手、種目で得点できない部分もあった。佐々木洸(商3=人吉)と仁和光一(政経2=星稜)、2人の7位入賞で4点は獲得したものの、短距離やフィールド、競歩部門でも安定して得点できる強さが欲しいところだ。「短距離はまだまだ若いチームなので、来年の方がいい結果を出してくれると信じている」(平松巧至・政経4=磐田南)と来年に懸かる期待は大きい。
 

 長距離部門もこの結果を今後のトラックシーズン、その先の駅伝シーズンにどう生かしていくかが課題になるだろう。「またここから鍛えていく。来年はもっと楽に残留できるようにしたい」と西弘美駅伝監督は既に先を見ている。「今のチームは大砲はいないが、協力して頑張っていくチーム」。菊地のこの言葉には、総合力で戦う明大競走部の躍進を感じた。

~レース後のコメント~
遠藤和生監督

「1部残留はまあまあ。これが定位置だから、昨年と同じポジションだし、去年並みの力はあるのかなと。でももう1回鍛え直していかないといけないよね。夏の練習も秋の試合に向ても。残留したのは予想通り。最終日も特に焦ることはなかった。最低でもここまで来るというのは分かっていたし、選手も分かっていただろうし。横手はしっかり鍛えてきただけにいい走りをした。真の力が付いてきているのかなと思う。菊地もオーソリティな走りで4年生になって成長してきていると思う。とりあえず一つの目標は達成した。目標があるのは選手にとってもいいこと。これからのトラックもこれを機にしっかり臨めると思う。1部残留は語るまでもない。1部と2部の差は天国と地獄だから」

西駅伝監督
「(5000mは)厳しいレースの中で取った点数なので、高く評価できる。廣瀬はもう少し上にいけると思ったが、遅れたので残念だった。菊地は最後まで粘れていたし、今後につながっていくと思う。(1部残留が懸かっていたのは)本人たちも分かっていただろうから、しっかり自分たちのレースをしろとだけ伝えていた。5000、1万で入賞するのは至難の業。1万より5000の方が厳しいかなと思ったけど、インカレ独特の駆け引きの中でよく耐えてくれた。本当は1万mでも1、2点欲しかった。(菊地と横手は)1万mを引きずらなかった。横手にしても、インカレで自己ベストの13分51を出せるということは、それだけ力があるということ。(関東インカレに出場していない選手については)故障しているのもいれば、故障が癒えて練習に入ってきているのもいる。またここから鍛えていくということ。去年今年とぎりぎりでの残留だったので、来年はもっと楽に残留できるようにしたい」

福重俊二短距離コーチ
「(短距離部門として)もう少しいけたかなというのが率直な気持ち。マイルが残念だった。ケガ人が出たりして急きょ変更があったりしたけど。短距離だけでも1部残留できるくらいの、総合力を見せないといけない。来年は平松が抜けるけど、宮寺、佐々木、徳永大と主力も残るし、慶應と法政と並ぶくらいにいきたい。(110mHの佐々木は)彼の力からすればまだいけたかな。あと二つくらい。ただ関東インカレはシーズン入って間もないし、パフォーマンスとしてはよくやった方だと思う。予選、準決でうまくいかなかった部分を決勝で修正するのは難しいが、それができるようになればもっと上にいける。宮寺は練習ではうまくいけてたんだけど。ハードルのインターバル、6台目7台目の切り替えがうまくいかなかった。走力がついてきて、ハードルのインターバルがまだ走力に追い付いていないという部分もある。短距離としては、しっかり点を取れるようにしないといけない」

菊地
「1部に残留できて本当に良かった。今回のインカレは4年が結果を残せてなかったし、力を出し切れないまま4日目を迎えたので5000mでやるしかなかった。5000mは横手に助けられた。横手が頑張っていたし、4年が得点できないままでは終われないし、主将としてもこのままでは終われないと思っていたので1点でも多く得点しようと前を前を追った。結果として自分で得点を挙げることができて良かった。コンディションは1万mよりは良かった。それでもピークに持ってこれていなかったが5000mは1万mよりも距離が短く、スピードが生きる。レース展開も異なるので、1万mでの失敗は失敗として捉えしっかり切り替え臨むことができた。最低限のレースはできたが、結果として横手に負けた。横手はこのコンディションの中でベストを出せたのはすごい。そういう意味で自分の課題も見つかった。これをステップにして、インカレ、駅伝に向かって頑張りたい。全体的に取るべきところ(400mH、10000m、ハーフ)で得点ができなかったが諦めずに最後まで精一杯取り組んだ。今のチームには鎧坂さんのような大砲はいないが、協力して頑張っていくチームだと思う。(西監督が5000mで12点取りたいと言っていたことに関しては)最低限だとは思っていたが苦しい12点だった。他のところで得点したかった。2部の中で戦うのは、1部とはレベルも異なるし、たくさん得点しないといけないので(1部に)戻るのも難しい。後輩たちに2部で戦わせたくなかったため、残留できて本当に良かった。1週目で得点できたことで、今日の得点にもつながり、残留できた。でも1週目の得点が気の緩みにつながった部分もあった。そこから全員がしっかり危機感を持つことができ、1部残留につながった」

大江啓貴(政経4=須磨学園)
「自分自身で得点したかったけど、横手と菊地はよく頑張ってくれたと思う。もし落ちてたら自分に責任があったと思うので。昨日のハーフはすごく後悔している。もっと水分補給すれば良かったし、根本的に力不足だった。今後に向けてはそれが課題です。後輩たちにも今回の1部残留という結果でさらに勢いづけていけたらいいと思う。最終日、正直きついかなと思ってたんだけど、火事場の馬鹿力でよく残った。今年は4年生で最後。後輩たちにも伝えたいものがある。自分の力のなさが露呈したので、もっと体力を付けて力のなさを補いたい。チームとしてもさらに飛躍したい」

平松
「去年は食中毒があって最後の5000mまで残留が決まらない状態だったが、今年はこんなにドキドキするとは思っていなかった。短距離は目標が8点だったので、入賞者1人の2点は良くない。(決勝に残れる選手が確実に残らなければいけないと話していたが)参考タイム、持ちタイムを考えると、行くべき選手が行けなかった。記録より結果が必要な大会で、結果を出せなかった。それが課題。(1部残留は)長距離さまさま。短距離でもっと取らなきゃいけなかった。短距離はまだ若いチームなので、来年の方がいい結果を出してくれると信じている」

廣瀬
「1部に残れたのは良かったが、それに貢献できなかったのは悔しい。プレッシャーはあったが、自分のレースをするだけと思って臨んだ。ベストを尽くそうと思った。位置取りはいつも通りだった。徐々に上げていこうと思ったが、足が動かなくなって、ペースアップに対応できなかった。それで失速してしまった。他の選手が頑張ってくれて、残留できた。今年のみんなの頑張りを無駄にしないよう、次は自分が貢献したい」

松井智靖(営2=世羅)
「入賞ギリギリのラインで粘っていたが最後まで粘り切れなかった。調子も良かったので、とにかく入賞という強い気持ちでレースに臨んだ。同じ学年の選手にも負けたくなかった。1部残留のために、少しでもチームに貢献したかったがポイントが取れなくて悔しい。関カレのような大きい舞台は初めて。これからどんどん経験を積んで全国で勝負できる選手になりたい。今後の目標は、故障をせずに夏合宿を頑張ること。箱根駅伝のメンバーになり、優勝したい」

横手
「1万mでは初めて腹痛になり混乱してしまったが、5000mは走り慣れているし、最初からポイント狙いでレースに臨むことができた。5位以内で1部残留だったので4位で終われて良かった。ラストは安心した分気持ちが緩んでしまい、前の選手に着いていけなかったが残念。(レース自体は)ベストを出せたし、1部残留にも貢献出来たと思うが、狙っていた13分40秒台が出せなかったので80点。プレッシャーもあったが、焦っても仕方がなかったので、とにかく自己ベストと入賞を考えて走った。レース前も落ち着けていたと思う。高校時代はラストの強さが活かせていたが、大学レベルではまだまだと思う。最初から勝負できるトータルの強さが欲しい。今回の関カレでは長距離として結果を求められ、ポイントを取れるはずの人でも取れなかった。来年はもっと厳しい状況になるかもしれないが、レベルの高い1部に残ることで自分自身の成長にもつながるので頑張りたい」