伊与部、日本選手権で初の表彰台/日本選手権
決勝のレースには無我夢中で泳ぐ伊与部の姿があった。「朝からベスト記録が出ていた」と予選を4位で通過し、決勝へ。レースでは序盤から3位につけ、最後までその位置を譲ることなくフィニッシュ。記録52秒24という自己ベストをたたき出した。
しかし、1位の選手との差はわずか0.13秒。「あと少しだった」。表彰台のうれしさとは別に、そのタッチの差に悔しげな表情も見せた。
今回は古賀淳也(第一三共)がまさかのB決勝でのレースとなり「こういうチャンスはめったにない。勝ちたい一心だった」と、伊与部の勝利に対する強い思いが表彰台という結果につながった。
目標は4月のロンドン五輪代表選考会。「(4月には)入江選手(近大)もいるし、今のままだと厳しい」と冷静に現実を見る一方で「自分は挑戦する立場だから、悔いの残らないようにがんばりたい」と全力を尽くすことを約束した。約1ヵ月半後の辰巳で、伊与部は五輪の切符をつかみにかかる。
中塚は、予選から五輪派遣標準記録の54秒09を突破する泳ぎを見せた。B決勝では「前半からいこう」と53秒台を出す勢いで臨んだが、惜しくも予選のタイムを下回る54秒55。
今大会に照準を合わせているわけではないと話した中塚。「調整していない割には良くできた」と結果には満足げな様子を見せた。しかし「タイム的にはまだまだ」と課題も残る。
今月15日から3月10日まで、4月の日本選手権へ向けて明大の選手たちはアメリカで高地合宿を行う。日本へ戻ってきたときに楽に泳げるようにと、酸素の薄い山の上での練習。中塚は「不安もあるが、がんばってきたい」と力強く意気込んだ。
昨年のインカレで冨田(中京大)を破り、2位に輝いた金子は100mも200mもB決勝止まりと今大会は不調に終わった。
9日まで参加していたグアム合宿の疲れもあり「調整をかけていない分、体も重かった」と万全な体調ではなかった。1日目の予選では自己ベストを記録したが、B決勝5位。2日目の200mB決勝では150mのターンで2位につけたものの、最終的に3つ順位を落としまたも5位でレースを終えた。レース後「ぜんぜんダメだった」と肩を落とし「狙っていたタイムを狙えなかった」と悔しさをにじませた。
「自分の力を発揮した上で代表に選ばれなかったとしても、悔いはない」。彼の本当の力が4月のレースで試される。
1日目の400m個人メドレーで自己ベストを出した作道も、2日目の200mでは予選敗退。「今日もいけるかなと思っていたけど…」と悔しい表情を浮かべた。しかし、以前から課題であった平泳ぎは「努力が実ってきた」と、今大会でも調子が良いことは大きな収穫だ。
数少ない女子部員の1人として部を盛り上げてきた彼女だが、今年は2人ほど女子が入部する予定だという。「男子に負けないようにいっしょにがんばっていきたい」とうれしさを感じるとともに、彼女のやる気にもつながっている。
今までは納得のいくタイムを出せず、苦しむことも多かった作道。しかし、4年生になる今年は、今までに比べタイムは戻ってきているという。「もうひとふんばりして、いい結果を残したい」と、その笑顔が表彰台の上で見られる日も、そう遠くはないだろう。
現役選手とともに4年生の麻生も大会に参加した。引退しても「五輪は小さい頃からの夢」と、以前から泳ぎ続けることを決めていた麻生。今大会は最近まで行っていた鹿屋体大での合宿の疲労感もあり、結果は悔しいものに。「(今大会で)収穫はあまりなかった」と肩を落とした彼だったが、合宿では毎日6000m近い距離を泳ぎ「いつもの倍」の練習をこなしてきた。また、日本人で初めて1500m15分の壁を突破した宮本(鹿屋体大)にも「スピードでは戦える位置にある」という。「あとは持久力」と10日間の合宿で自信と課題の両方を見つけてきた。
麻生の目指すものももちろん、ロンドン五輪代表権。「夢を貫き通した結果で水泳を引退したい」。彼の水泳人生の最終章が今、幕を開ける。
4月の選考会に向け大きな弾みとなった今大会。決勝に残ったのは伊与部ただ1人だったが、選手たちはそれぞれ自信をつけ、新たな課題も見つけた。
果たして五輪の切符を手にするのは誰なのか。4月の辰巳に、そして今後の明大スイマーたちに注目が集まる。
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