51年ぶり往路3位 総合上位へ希望の光がさす/第88回東京箱根間往復大学駅伝競走

2012.01.03

 区間エントリー変更を見た時、驚いた人も多かろう。鎧坂主将(営4)の名前があるべき場所にない……。「鎧坂頼り」といわれた今シーズン。しかし、明大の選手たちは力強くも安定した走りを見せてその不安を払拭してくれた。往路3位入賞。実に51年ぶりの快挙だ。ゴールに走りこんだ大江を囲む選手たちや首脳陣の表情は希望に満ちていた。

 落ち着いた表情で大六野がスタートを切り、明大の戦いが始まった。大六野は出雲の3区、全日本大学駅伝1区ともに区間4位の好走を見せ、ルーキーながら抜群の安定感を兼ね備える。その安定感が箱根駅伝でも光った。レース序盤から大迫(早大)が引っ張る展開となったが、周りの状況をよく見て歩を進める。5km地点でついに大迫と服部(日体大)が前に抜け出し、集団と差がじわじわと広がっていった。しかし、全く動じず3位集団にとどまり自分のペースで走り続け、12km地点ではペースを切り替えて3位集団のトップにも躍り出た。しかし19km地点で経験の差が出た。撹上(駒大)がスパートをかけるとついていけず、苦しい表情を浮かべた。粘りきりトップ早大から43秒差の6位で襷リレー。「追いやすい秒差で襷リレーしたい」と箱根前に語っていた大六野。役割をしっかりと果たした。

 当日エントリー変更でエース区間、2区に起用された菊地。出雲、全日本ともに勝負どころのアンカーに起用され、首脳陣から注がれる期待は大きい。6.5km地点で6位集団から抜け出て2位集団にあと15秒差までつめる走りを見せた。昨年2区で17人抜きを見せた村沢(東海大)に迫られるが、その差が9秒から縮まらないまま14km地点まで走り、2位集団に追いついた。しかし、ここで2区の難所、権太坂を迎える。毎年各校のエース級の選手たちを苦しめてきたこの坂に差し掛かり、菊地の首が振れて辛い走りになった。一時は2位集団にまで追いついたが、6位で3区石間に襷をつないだ。しかしトップ東洋大との差は55秒、まだまだ挽回を狙える位置だった。「鎧坂さんに頼っていたところが今まであった。全日本から、自分が、自分が、という気持ちが強くなったと思う。今日は鎧坂さんのためにという思いもあった」と試合後語った菊地。準エースから真のエースへと気持ちを新たにした。

 流れを維持したい3区には石間が出走。箱根前には「去年は補欠で終わってしまい今年も出雲、全日本と補欠だったので」と悔しさを語った。念願の箱根デビュー。しかし平塚中継所直前で各校のスパートに足がついていかず8位に順位を落としての襷リレー。4位から8位までの差はわずか15秒。逆転の願いは4区八木沢に託された。

 期待のルーキーとして入学当初から注目された八木沢。しかしケガのために今大会がはじめての大学駅伝となった。二宮のポイントでは城西大、山梨学大と7位集団を構成し、そこに落ち着いた。そこから徐々に順位を上げ、ついに4位に躍り出た。しかしそこに甘んじることなく3位を走っていた久我(駒大)を捕らえた。小田原中継所まで並走し、4位駒大とわずか1秒差の3位で襷をつないだ。前を走る早大とも32秒差。2位に上がる大きなチャンスを作り上げた。区間順位は田口(東洋大)に次ぐ2位。箱根前、ケガからの復活を誓った八木沢。走りたかった4区で明治に大きな希望をもたらし、スピードランナーとしての強さを見せつけ、箱根駅伝という大舞台で鮮烈なデビューを果たした。

 昨年、山の神・柏原(東洋大)に次ぐ2位と5区を好走した大江。今年は山本(早大)との抜きつ抜かれつのデットヒートを繰り広げた。4km地点で井上(駒大)に差をつけ、そのまま山を力強く上る。8kmから9kmにかけてじわじわと山本(早大)を追い詰め、ついに抜いた。しかし、苦しいのはここから。1kmほど並走が続き、再び山本に抜かれ置いていかれる。14km地点では20秒もの差をつけられたが、18km地点で再び大江が山本の前に出る。芦ノ湖では2人の走りの力強さに歓声が響いた。しかしゴール直前の21km地点で再び差をつけられ、最終的に3位でゴールテープを切った。「今井正人選手(現トヨタ九州)の記録を狙えたらいい」と箱根の山に再び臨んだが、今井選手の記録には1分30秒ほど届かなかった。昨年の自らの記録を超え、再びの区間2位。柏原には届かなかったが、5区歴代4位の記録を打ち立てた。

 大エース・鎧坂主将のエントリーなしでつかんだ往路3位入賞。首脳陣は「よくやった」と口をそろえた。復路を走る選手たちにも、往路の結果は大きな勇気と希望を与えただろう。しかし、ここで気を抜いてはいけない。後ろの4位を走る駒大との差は1分22秒。復路5区間を持ってすれば逆転などたやすいものだろう。往路で築き上げた流れを維持し、「3強を崩す」という目標を達成する舞台が整った。大手町に、明大の選手たちの大きな笑顔が咲く瞬間がすぐそこにある。

[関口詩織]

☆首脳陣のコメント☆
西駅伝監督

「みんなよく走ってくれた。予定より2分くらい速い。今までで一番よかったのでは。菊地も一皮むけたと思う。石間は30日まで復路の要員だった。よく頑張ってくれた。一番元気だったので起用した。予定より20秒速く来てくれた」。

山本コーチ
「2、3区変更して心配していたが、全ての選手がよく走ってくれた。せっかく往路でよく走ってくれたから、これをプラスにしていい位置で走ってくれたら。復路は2~4位争いになると思う。前の早大とは秒差があまり離れていないから狙えるし、後ろの駒大はこのまま終わるチームではない」。

遠藤監督
「会心に近いレース。全部マル。とにかく、思ったよりいいところで来たんだから後半につなげたい。ここまで来たら、思ったとおりしっかり持っている力を出せばいける。行きはよくて、帰りが悪いというのはだ駄目。復路も責任を持って1人1人頑張ればいい。往路でいいところまでこれたから、復路のチームが活気付く」。

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