2部降格…予期せぬ結果に/全日本大学対抗選手権

 インカレは各階級のスナッチ順位、ジャーク順位、そして総合順位のそれぞれ1位~8位までに点数が与えられ(1位8点、2位7点……8位1点)、それがチームの得点となる。チーム一人一人の記録が優勝へのカギを握る。

≪1日目≫
 全階級の中で一番初めに行われる56kg級に出場したのは谷中。スナッチ1本目は失敗するが、2本目、3本目と順調に成功。3本目の95㎏を挙げた時には笑顔も見せた。ジャークでは「2週間前から調子が悪く、自信を落としていた」という谷中だったが、3本目まで安定した試技を見せる。3本目の122㎏は落としてしまったが、目標である「全日本選抜・学生選抜・全日本の基準」を超えるトータル216㎏を挙げ、4位入賞。上位進出でチームに勢いをもたらし、トップバッターとしての役割を果たした。

 62㎏級には武市主将と中田が出場。武市主将はスナッチ、ジャークともに2本成功。トータルで準優勝を果たし本学に大きな得点をもたらした。しかし「満足でもない。全然楽しくなかった」と振り返った。その理由は、同階級にオリンピック強化指定選手に選ばれている糸数(日大)が待ち構え「優勝したいのに、2位しか狙えなかった」から。優勝した糸数にトータル16㎏という大差をつけられての準優勝。「4年間最後の結果がこれか」。武市主将にとって悔いの残る大学最終戦となった。
 一方中田は、原(法1)と出場権争いを繰り広げ「中田の方が挑戦できる」(武市主将)と大会2日前に出場権を手にした。インカレを前に「今ある力を最大限に出すことしか考えていない」と決意を口にしたが、スナッチで2本失敗してしまう。得意のジャークで挽回しようとするが、3本目の139㎏で失敗。7位入賞に終わった。試合後「点を取れる実力はあったと思うのに、取り返しのつかない試合をした。言葉にできない」とチームに対して申し訳ない気持ちを口にした。「成功率を上げることが今後の課題」「今回のような失敗を二度としない」と次の大会での活躍を誓った。

 流れに乗りたい69㎏級に出場したのは、ケガから復帰し東日本インカレでは大会新記録をたたき出した加藤(晴)。インカレ前に「4年生というプレッシャー」を感じていたが「やるしかねえ」と大学生として最後の試合に臨んだ。しかしスナッチ、ジャークともに成功したのはわずか1本ずつ。3位に入賞したが「明治のエースとして点数を取らなくちゃいけなかった」と悔しい表情。ついに「2人そろって金メダルを下げる」という武市主将との約束は果たせなかったが「一緒にメダルを下げられたことはうれしい」と笑顔も見せた。後輩には「結果が全てだから、納得の試合を今後していってほしい」。

 1日目最後の階級、77㎏級には高原が出場。今シーズン東日本個人選手権、全日本学生新人選手権で優勝を果たし、本人も「上り調子」と認めていたが、試合の2週間前に練習で腰を痛めていた。「自分にできる限りのことをしたかった」と意気込んでプラットに上がったが「体の状態的に厳しいものがあった」といつもより軽い重量からスタート。苦しそうな表情で必死に挙げ、スナッチ、ジャークともに2本成功し8位入賞。しかし「ケガをしていても共に2本取るのは当たり前。3本取れなかったことが勝負の分かれ目」と肩を落とした。

≪2日目≫
 武市主将をはじめとして谷中、加藤(晴)がチームに大きな点数をもたらし、1日目を総合3位で終えた本学。このままの勢いで2日目を終えれば、表彰台に上がるという目標達成も夢ではなかった。しかし、全国の舞台はやはり厳しいものだった。

 2日目のトップバッターは85㎏級の千原。「1点でも多く取るためにやるしかない」。そう心に決めてプラットへ上った。しかし、スナッチでは失敗を1本に抑えるものの、点数を取ることはできず。ジャークでは3本全てを成功させ何とか1点をもぎ取った。インカレ前に手首を痛め、決して万全の状態ではなかったという千原。「試合中も痛みはあった。でも意識はしなかった」と、苦しい表情を見せながらもただチームのために挙げることだけを考えた。試技を終えプラットから降りた彼はセコンドの加藤(晴)と握手を交わし、学生最後の試合を終えた。
 2年生からインカレに出場してきた千原。今年は4年生としてチームの中心に立ち、チームを引っ張ってきた。「悔しいしかない」。最後のインカレを笑顔で飾ることはできなかった。しかし「高校時代の先生が今でも現役で続けている。その人を倒すまでやり続ける」と、彼のウエイト人生はここで終わりではない。千原はこれからもひたすら上を目指していく。

 本学の最終種目となる94㎏級。全ては敦見と三原に任された。
 今年がインカレ初出場となった敦見。同じプラットには立てない仲間の思いを胸に、インカレの舞台へと挑んだが、チームに点数を与えることはできなかった。
 スナッチでは1本目の125㎏を成功させ、いい滑り出しを見せた。しかし、続く2本目、3本目を決められず点数を稼ぐことができない。「スナッチで期待されていたから悔しい」。成功していれば点数争いにも加われただけに、結果が悔やまれる。ジャークでも2本の連続失敗を許し、プラットの上では肩を落とす場面も。最後に耐えて挙げた156㎏は成功したものの、トータル9位。点数を取ることはできないまま、敦見の初めてのインカレが終わった。成功率が常に課題であった敦見。今大会もスナッチ、ジャークともに成功は1本ずつと、課題克服には至らなかった。「やらなきゃいけない時にやる精神力」がついてこないという。精神力は簡単に身に付くものではない。しかし、今回の悔しさが彼をきっと強くするはずだ。壁を乗り越え、再びプラットへ戻ってくる彼の姿を期待したい。

 一方、2年生エースの三原も試合前から心配していた不調から抜け出せず「スナッチの1本目は緊張して足が動かなかった」という。結局スナッチは1本のみの成功に終わり、点数に結び付けることはできなかった。スナッチ競技を終えた時点で表彰台には乗れないことが判明。乗るためにはジャークで175㎏を挙げなければならない。「順位を狙うより、団体の点数が欲しかった」。彼はチームを選んだ。しかし、試合前のジャークは絶不調。「練習では160㎏も取れていなかった」。それでも163㎏からスタートし、一度も失敗することなく最後の170㎏を決めた。良いとは言えないコンディションの中、そこまで彼に力を与えたのは4年生の存在だった。「千原先輩が本当に調子悪い中で挙げていた。自分もやらなあかんって思った」。応援席では選手が声を振り絞って応援し、彼の試技を見守った。それに応えるように、彼もまた声を張り上げ最後の1本を挙げてみせた。試技を終えた彼にはひときわ大きな拍手が送られ、彼も拳を高く突き上げた。トータル5位でチームに10点を加点した三原。「無事に終わってよかった」と安堵(あんど)の表情を見せたが「納得はしていない。(これからは)4年生のように底力を見せていきたい」。この後悔を力に、真のエースへと生まれ変わる日もそう遠くはないはずだ。

 総合9位。そして2部降格。7位の平成国際大、早大とはわずか4点差。望んでいた結果とはまったく異なる形で幕を閉じた今年のインカレ。「表彰台を狙えるのは今年しかない」(武市主将)。戦力不足に悩まされた昨季に比べ、今年は力のある選手がそろっていた。誰もが上を狙えると、そう信じていた。しかし、まさかの結果となった。「せっかく守ってきたものがここで終わってしまう」(加藤(晴))。自らの力不足、そして後輩たちへ申し訳なさを感じていた4年生。しかし「さすが4年生」(三原)と下級生の目には最後までチームのために必死で戦う4年生の姿が映っていた。「また1からやり直し」(本多監督)。結果を受け止め、前を向くしかない。この反省を、そしてこの悔しい思いを力に変え、下級生たちは新たなスタートを切る。
 結果は残念なものだったかもしれない。しかし、チームのために全力で戦った選手たち、共にチームを支えた選手たちに心から拍手を送りたい。必ず1部の舞台に彼らが戻ってくることを信じて。