(9)明治のキーマン 敦見・三原

 今年のインカレで明治のトリを飾るのは、兵庫出身94㎏級コンビの敦見(営2)と三原(政経2)だ。初出場の敦見と2年連続の出場となる三原。インカレを目前に控えたその思いとは――。

俺はやる 敦見 康平

 「自信とかちゃうねん。やるしかない」。

 明るい関西弁で、インカレの意気込みは語られた。しかし、その笑顔の裏で彼は不安やプレッシャーと戦っていた。

 2年生になった今年、敦見はまさに絶好調の中にいた。チームが2年ぶりに頂点に立った9月の東日本インカレ。彼は初めて団体メンバーに名を連ねた。その後も新人戦で表彰台に上るなど「1年生の時より記録的に通用するようになってきた」。昨年に比べて出場する試合の数も増え、確実に「競技力の向上」を感じるという。しかし「良い結果はついてきていない」と喜ぶことばかりではない。試合での成功率が常に彼の課題だ。表彰台に上った新人戦でも、成功率は3分の1。決して良いとは言えない数字を前に「試合で自己ベストすら挙げられない」と本人も頭を抱える。「本番に強くない」と、練習でできているだけにもどかしさが付きまとう。

 大学界の日本一を決めるインカレ。1年間の集大成とも言える大会のメンバーに彼は選ばれた。「素直にうれしかった」。しかし、彼の出場はすんなり決まったわけではない。「選ばれるか選ばれないか境目のところ」に彼はいた。しかし「ベストを尽くしてほしい」(武市主将・農4)。そんな期待から彼は選ばれた。「選ばれるまでは不安だった」というが「選ばれた以上やるしかない」。今ではその不安がやる気へと変わっていた。

 「俺のせいで選ばれなかった人もおるから、得点取られへんかったっていうのは絶対やりたくない」。初めてのインカレ出場を前に、敦見は選ばれたといううれしさを感じる一方で、選ばれた責任もプレッシャーも痛いくらいに感じていた。出場メンバーを見ても「おれが一番活躍できない」と自分の実力は自分がよく知っている。しかし、同じプラットに立てない仲間がいるからこそ「やるしかない」。やる気も仲間を思う気持ちも人一倍だ。

 敦見はウエイトリフティングの魅力を「自分の成長が目に見えるところ」だと言う。明治に来て2年目、特に今年は自らの成長を実感した。明治のユニホームで、彼は初めての大舞台へ挑む。その胸にたくさんの思いを込めて。

練習嫌いの2年生エース 三原 真吾

 2年連続、三原がインカレへやってくる。昨年は新人戦制覇に始まり、出場する試合ごとに記録を更新。

 インカレにも同階級の遠藤(政経4)から出場枠を勝ち取り、出場を決めた。今年に入っても、彼の勢いは止まらない。全日本ジュニアでは準優勝、東日本インカレでも準優勝で得点を稼ぎ、チームの優勝に貢献した。不調知らずの2年生エースは今年も健在だった。

 そんなエースは大の練習嫌いで有名だ。「毎日やめたいと思いながら練習している」「追い込まれないとやる気が出ない」。それが自分の弱いところでもあると話す一方で、数々の結果を残している三原。試合が近づくにつれて、エンジンが掛かるという。いわゆる「短期集中」。彼は自分のスタイルでいくつもの成績を収めてきた。しかし、インカレを目前に控える今、三原の口からは「調子が悪い」「怖い」「不安」と後ろ向きな言葉ばかりが飛び出した。インカレを前にまさかの不調。そして彼が最も不安視するのは「今年は94kg級の選手全員が同じくらいのレベル」であることだった。「1本のミスが順位に大きく影響する」。しかし「今年の94㎏級は面白くなる」。その感覚が練習嫌いの彼を奮い立たせる。

 初めて出場した昨年は「軽い気持ちだった」。セコンドに全てを任せ、ただ挙げるだけだった。しかし「今年は点数にも絡まないといけない」。エースとしての実力は変わらずとも、エースとしての意識は変わった。「優勝しろ」(本多監督)「三原は心配ない」(武市主将)。周囲の期待も強まり「昨年より緊張している」という。一方で「調子が悪いのが本当に怖い」とやはり不調が気になる。しかし、彼は自他共に認める「やる時はやる」タイプ。「第一目標は表彰台。2番目の目標はその表彰台で何番目に上れるか」。エースに不調は関係ない。「調子が悪いから焦り出している」と隠し切れない気持ちはあるものの、いつでも上を目指すことは変わらない。プラットの上で、エースの本当の力を見せてくれるはずだ。

◆敦見 康平 あつみ こうへい 営2 明石南高出 175cm・86kg

◆三原 真吾 みはら しんご 政経2 淡路高出 165cm・86kg

 “Lifter’s High 2011”は今回で最終回となります。今までご覧いただき、ありがとうございました。
 明日からついにインカレが始まります。選手たちの熱い戦いをぜひ、会場でご覧ください!

◆第57回 全日本大学対抗選手権◆
日程:12月24~25日
会場:磯子スポーツセンター(神奈川県横浜市)
◆会場へのアクセス◆
JR「新杉田」駅から徒歩4分