歓喜の瞬間~チーム一丸でつかんだ1部残留~/関東大学リーグ戦入替戦
明大は一昨年、10年越しの悲願だった1部昇格を果たし、1部2年目となる今年は、定着するために大事なシーズンだった。しかし、9月から約2か月に渡ったリーグ戦では思うように結果が出ず、苦戦を強いられた。そのような状況で迎えた入替戦。「勝ちにいく!」そう口をそろえる選手たちのこの試合に懸ける思いには、並々ならぬものがあった。 スターティングファイブは佐藤(卓)主将(法4)、田村、加藤(法3)、中東(文1)、皆川(営1)。「絶対に負けられない」(安藤・情コミ1)一戦は、リーグ終盤から先発を担うベストメンバーで幕を開けた。
試合の主導権を握るためにリードしていきたい第1クォーター。開始30秒、田村が右45度からのシュートを沈め幸先よく先制する。その後、中大が入戸野を中心にインサイドを崩しにかかるものの、明大は素早いマーク交換を徹底し、相手に万全な形でシュートを打たせない。何度か許したシュートも、加藤、皆川がディフェンスリバウンドを奪い、連続攻撃は防ぐ。2分30秒、安藤が投入されると、そのわずか20秒後に3Pシュートを決め、早速起用に応えると、その後は4分30秒頃まで一進一退の攻防が続く。しかし、5分過ぎに佐藤(中大)に左45度から3Pシュートを決められ、9-13。ここから、次第に暗雲が立ち込める。明大はそれまで優勢だったリバウンドを思うように取れず、攻撃のリズムを生み出せない。逆に中大は、ここぞとばかりに連続攻撃を仕掛け、特に渡邉(中大)のアウトサイドが当たり出す。焦る明大はターンオーバーなどのミスを犯し、攻撃の糸口さえ見つけられない。残り1分30秒、田村の3Pシュートで一矢報いたかに見えたが、終了間際にも佐藤(中大)にシュートを決められ、16-22で最初の10分を終える。
追撃したい第2クォーター。しかし、明大は第1クォーターに引き続きターンオーバーをはじめとするミスを頻発してしまう。すると、その隙を見た中大はポイントガードの佐藤を起点に両サイドにボールを散らし、明大守備陣に的を絞らせない。相手が得意とするアウトサイドに持ち込まれた明大は、焦りからか攻め急ぐ場面が目立ち、近距離からのシュートを外すなどのイージーミスを連発。その後も連続失点し、3分20秒の山田(中大)の得点までで16-31とリードを広げられる。3分40秒、田村のシュートで明大はようやくこのクォーターの初得点を挙げる。5分、安藤、加藤、西川(情コミ2)を投入すると、この選手交代が奏功する。安藤を起点にパスが回り始めると、加藤が献身的なディフェンスで中大オフェンスを封じ、西川はドライブで敵陣深くまで攻め込む。リズムに乗った明大は8分40秒、安藤が右アウトサイドに開き、角度のない難しいコースから3Pシュートを決め、26-37まで詰め寄る。さらに残り42秒、またしても安藤が相手に倒されながらも3Pシュートを沈める。会場に詰めかけた明大生やバスケ部OBの声援の後押しを受けた明大は、佐藤(卓)主将のブザービーターで31-38とし、前半を終える。
点差を縮めていきたい第3クォーター。明大は第2クォーターの勢いそのままにフロントコートを支配する。しかし簡単には引き下がらず、ファウルゲームに持ち込もうとする中大。相手の執拗なディフェンスに苦しめられるが、この日の明大の勢いはそれをも上回るものだった。2分40秒、安藤がバスケットカウントをもらい、35-43と8点差に。その後も攻めては安藤、田村が相手ディフェンスを圧倒し、守っては加藤、土井(政経1)がリバウンドを制圧し、流れを渡さない。そのまま明大ペースで試合が進み、6分40秒、スティールした安藤が速攻からレイアップシュートを決め、47-47の同点に追い付く。続く7分、渡邉(中大)にドライブから速攻を決められ、再びリードを許すも、わずか1分後、佐藤(卓)主将の3Pシュートでついに逆転。さらに攻勢を強める明大は、最後の1分間で連続得点をマークし56-51と点差を広げて第3クォーターを終える。
泣いても笑っても最後となる第4クォーター。開始直後から、勝利に向けて強気に攻める両チーム。高い集中力を維持する両校の選手たちは、パスカットやリバウンドで互いに試合の流れをつかもうとする。そんな中で一歩前に出たのは明大だった。2分、田村がアウトサイドから3Pシュートを沈め、59-53に。その直後、反撃する中大の猛攻を受けるが、チーム一丸となり決死のディフェンスでこの時間帯を凌ぐ。だが、最後まで分からないのが入替戦。最小限のファウルで相手の攻撃を乗り切っていた明大だったが、残り5分を過ぎた頃からファウルが目立つようになる。次第に中大がボールを持つ時間が増え、5分30秒、佐藤(中大)にシュートを決められ61-62と再び逆転される。リーグ戦での明大のままなら、そのままリードを広げられていたかもしれない。しかし、この日の明大は違った。6分、田村が左アウトサイドからシュートを決め再逆転すると、カウンターを受けてもディフェンスリバウンドで競り勝ち、中大に流れを渡さない。すると7分20秒、佐藤(卓)主将が厳しいマークを振り切り3Pシュートを決め、66-62と突き放す。ここで中大がたまらずタイムアウト。残り3分を切り、プレーヤーの体力も限界に近づきつつある状況で「リバウンドとスクリーンを意識しろ」という塚本ヘッドコーチの言葉で、選手は自分たちがやるべきことに集中する。会場のボルテージも最高潮に達し、両チームへの声援がこだまする中、選手は再びコートに戻る。リスタート直後、渡邉(中大)にバスケットカウントワンスローを献上し、66-65と1点差まで詰め寄られる。しかし、すぐさま岸本(政経4)の3Pシュートで4点のリードを奪う。残り1分となり、攻守の入れ替わりが激しくなるが、明大の選手たちは冷静さを失わない。69-67と明大2点リードの残り16秒、中大は最後のタイムアウトを取ると、ベンチからはファウルゲームを狙うよう指示が出る。その言葉通り、リスタート後の残り13秒、安藤がファウルをもらうと「ああいう大事な場面では、高校の時から全て決めてきた。外した時のことは想像せず、絶対に決めてやるという気持ちで打った」という言葉通り、フリースローを2本とも冷静に沈め、再び4点のリードに。このまま試合終了かと思われた残り8秒、渡邉(中大)の起死回生の3Pシュートで71-70に追い上げられ、明大は窮地に立たされる。そんな試合にけりをつけたのは田村だった。残り7秒、鋭いドライブで切り込んで渡邉のファウルを誘うと、きっちりとフリースローを決め、リードを2点に広げる。最後は、中大ボールのラインアウトからシュートまで持ち込ませず、72-70で逃げ切った。
この瞬間、対戦成績を2勝1敗とした明大の1部残留が決定。コート上にはベンチから監督、コーチ、選手が流れ込み、互いに抱き合って喜びを爆発させた。そして選手たちは、応援席で待つOB、友人、家族、共に戦ったベースチームの選手たちの元へ駆け寄り、喜びを分かち合った。
思うように結果の出ないリーグ戦で黒星を積み重ね、早々に出場が決まった入替戦。そんな状況下で、特に追い込まれていたのが4年生だった。「一昨年1部に上げてもらって、今年自分たちの代で落とすのは嫌だと思っていた。来年のことも考えていた」と田村が心中を吐露するように、負けられないという重圧は相当なものだった。それでも「内容が伴わずに負けた試合後などは、皆で集まり互いに言い合って、何が悪かったのか、どうすれば良くなるのかを話し合った」(岸本)と振り返るように、チームとして戦うことを強く意識して大一番に臨んだ。そうして迎えた試合では、佐藤(卓)主将が本来のキレを取り戻し、3試合で計13本の3Pシュートを決める活躍でチームをけん引した。そんなキャプテンの活躍に他の選手たちも刺激を受け、過酷な試合を戦い抜いた。屋台骨としてチームを支えた彼らの活躍を「4年生のゲームメイクが光った」と塚本ヘッドコーチもたたえた。
負ければ2部降格という状況に追い込まれたことで、逆に「勝利」という一つの目標に向かってチームがまとまり、1部残留を勝ち取った明大。そんなチームについて「毎日の試合で成長していた」(塚本ヘッドコーチ)と語る指揮官の目には、涙が浮かんでいた。
逆境を乗り越えて強くなった団結力は、確固たるものとなった。次なる戦いは、全国の強豪校が集うインカレ。入替戦での勢いと磨きのかかったチームワークを武器に、昨年の3位以上を目指して臨む。
☆試合後のコメント☆
塚本ヘッドコーチ
「残留ではなくインカレで東海大を倒すというモチベーションで試合に臨んだことが、結果として勝利に結び付いたのかもしれない。(中大が)1クォーターで入戸野君を使ったのも、中央がどうしても勝ちたかったことの表れだと思う。中央には渡邉君など良いシューターがそろっている。中大にはある意味失礼(な言い方)かもしれないが、中大の情熱を感じた。そういう意味でも明大にとって成長できたこの3試合だった。リーグ戦では選手を信用し切れなかったが、入替戦では信用じゃなく信頼できた。4年生の3人もよくやってくれた。ただ、スリーガードのアジャストがうまくいったという点はある。最後はフィジカルやテクニックではなく、メンタルとハビット。今まで入らなかったが、最後の最後で田村のシュートが入るようになったのもその一例。10何点ビハインド(の場面)で誓哉(安藤)が攻めにいったのには感動した。4年生のゲームメイクも光った。今日の試合前、選手たちには『エキストラゲームの3試合目をやれたことを喜ぼう。』と話した。これからも選手たちには、体育館でやれる喜びを感じながらプレーしてほしい。今日の試合を見て、インカレでやれる手応えを感じた。インカレでは東海大にリベンジしたい」。
田村
「とりあえず終わってほっとしています。勝つことができてうれしい。最初は相手の憩いになられてしまったが、我慢して我慢して。まだまだというのがあった。試合では声を出すことを意識した。1年生が多いので卓哉とは『(1年生は)分からなくなるだろうからしっかりやろう』と言っていた。アウトサイドがしっかりできたのもよかった点。4年生は今年で終わり。一昨年1部に上げてもらって、今年自分たちの代で落とすのは嫌だと思っていた。来年のことも考えていた。1部と2部は違うし、その経験の差も今日の試合で出せたのではないかと思う。リーグ戦を通して、最後の方はいい試合ができるようになった。最後我慢してっていうのができてきて、下級生も多いがまとまってきた。皆川とかも大学入ってからケガで前期は出れなくて、試合や練習でもいろいろ言われることが多かったけど段々変わって来たと思う。リーグ戦はいい形で終われたが、入替戦の初戦が悪く、いい入りができなかった。インカレではそのようなことがないように頑張りたい」。
加藤
「昨日勝ったが、1試合目は悪かった。ただ、悪かったなりに切り替えて修正できた。試合に出ていない人はシューティング(練習)をした。チームとしては、上級生が少なく下級生が多いこともあり、同じミスが続く時があった。悪い流れを引きずることもあったが、リーグ終盤になって、良い流れをつかめるようになった。個人的には周りのチームメートのプレーに気を遣うあまり、自分のプレーを見失っていた。課題を克服できないままリーグ戦に入ってしまったことは反省点。インカレでは、チームとしてはリーグ戦で勝てなかった相手に勝ちたい。具体的には東海大。センターに高いのが2人(満原と坂本)いて手強いが、攻略はできる。個人としては、インカレだからといって普段と違うことをやってもうまくはいかないので普段通りやる」。
安藤
「今日の試合は最終戦ということで、負けたら降格という厳しい状況だった。昨日から気持ちが高まっていた。入替戦全体を通して見ると、この2試合(第2、第3戦目)は良いプレーができた。攻めにいく時間帯はいくしかなかった。リーグ戦と入替戦を通して、技にはガードとして成長できた。また、特に今日の試合で、勝負時は本気で攻めないと流れは来ないことも痛感した。チーム全体のモチベーションとしては、負けられない気持ちと勝ちたい気持ちが均衡していた。インカレは、この流れを切らさないでやれば結果的に良くなる。東海大にはやはりリベンジしたい」。
土井
「今日の試合に勝てたことは、くそうれしいです。勝てた要因は、チームワークと自信だと思う。一人一人の信頼が勝利につながった。リーグ戦と入替戦を振り返ると、試合に出た時の1分1秒の課題が残る。収穫は、少ない時間で1本でも多くリバウンドを取れたこと。インカレでは、一戦一戦出場時間は少ないと思うが、先輩の足を引っ張るミスではなく、どうせするとしても、攻めにいっての積極的なミスにしたい。ディフェンス面の目標は、シュートを打たれないように粘り強くやること。オフェンス面では、スクリーン時にチャージングをしないように相手にダメージを与えて、シュートを入れさせないようにしていきたい」。
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