無念の2位、三木の地でリベンジ誓う/全日本学生三大大会
2日目の第2走行は1落下で順位の変動する厳しい戦いになってくる。各大学2番手までが走行し、一歩抜け出したのが関大の減点4。明大と日大が減点20で関大を追いかける。日大の3番手に登場した伊藤は確実な飛躍を見せて減点0。対する明大は前日、最終障害に泣いた西脇。この日も安定した走行で減点0のまま最終障害までたどり着く。だが、またしても落下。ここで1落下分の点差が開く。勝負は各大学のエース人馬が出そろう最終走行へ。関大からは馬術界に名を馳せるバーデン・バーデンがスタート地点に向かう。減点0ならこの時点で関大の団体優勝が決まる緊迫した局面だが、スタート直後から落とす気配のない貫禄ある走り。見事団体優勝に導いた。優勝がなくなったものの、三種目総合で勝利するためにはライバル・日大に遅れは取れない。実は日大の最終走者・上原が1落下でゴールしたため、明大は減点0でゴールすれば日大を上回る可能性が出てきたのだ。全ては吉田(賢)と明花に託された。水ごう障害までは順調な走りを見せる。しかし、勢いのついた明花はその直後の障害に歩幅を合わせ切れず、障害は落下。その後はミスなく走行し個人3位の成績でゴール。それでも「水ごうから次の障害まで6歩っていう型にはめてしまったのが原因。あそこで瞬時に判断して5歩にできてればまだなんとかなっていたかもしれない」(吉田(賢))と悔しさをのぞかせた。試合後、口をついて出てくるのは危機感のこもった言葉ばかり。実は、総合馬術競技で本来5頭の出場枠のところを3頭しか持たない明大にとって、あまりに痛すぎる負けだったのだ。
3日目の馬場馬術競技は10年連続の団体優勝を成し遂げている、いわば明大の十八番。得点率が40%後半から60%前半と実力差が大きいこの競技で毎年、ポイントを稼いできた。「馬場がカギになる。とにかくぶっちぎるだけです」(吉田(学)主将・政経4)。ここで日大を突き放すことが勝利の方程式なのだ。明大の人馬は軒並み得点率60%越えの高得点をたたき出す。上位10人で行われる個人決勝に出場メンバー4人全員が進出を決め、団体は優勝を飾る。
大会4日目の馬場馬術個人決勝は音楽に合わせて演技をするキュアで争われる。普段は練習する機会も少なく苦手とする馬も多いこの競技。昨年のチャンピオン・西脇と明桑は予選トップ通過で2年連続の優勝に期待が懸かる中での登場。結果は1位と0.075差で惜しくもの優勝はならなかったが、チーム全体としては2、5、6、7位の好成績を収め、ついに三種目総合トップに躍り出た。「プレッシャーのかかる場面でこそ力を発揮しなきゃいけない」(吉田(賢))。ついに最大の局面を迎えた。2頭のハンデを乗り越えなければ18連覇の瞬間は訪れない。この日はあいにくの雨。翌日のクロスカントリー競技では雨の影響は避けられない。波乱のレースを予期するかのような雨だった。
耐久審査はレース開始直後から反抗や落馬により失権が相次ぐ。明大と並び優勝候補の一角の日大でさえ失権とレースは混迷模様。調教審査は僅差の2位スタートだ。遅れを取り戻すためには攻めるしかなかった。明大の1番手は佐藤(政経4)と明政。明政は常勝明治を支えてきたエース馬。明政なら大丈夫。だが、そんな期待は打ち砕かれてしまう。足が止まったのは9番障害。事前にそのコースを走ったことがなかった明政は動揺のためか動かない。3度反抗により失権との知らせが入る。
「絶望的だった」(吉田(賢))とその時を振り返る。2頭で18連覇に挑むのはあまりにも過酷な条件。ただ、その日は何が起きてもおかしくない状況だった。耳に入ってきたのは日大失権のアナウンス。日大はここまで出走した3頭のうち完走したのは1頭だけ。まだ、チャンスはある。途切れかかった勝利への気持ちが再び沸き起こった。とはいえ不利な条件に変わりはない。「行くしかない」(吉田(賢))。リスクを負ってでもダイレクトコースを走る。早いタイムを求める。どんな状況でも攻め続けることが長年、学生王者として君臨してきた明大のプライドだった。吉田(賢)を乗せた明望は傾斜の厳しい三木坂を駆け下りて、このコース最大の難関、水ごう障害へ向かう。多くのギャラリーを前に障害を越え、池に飛び込んでいく。そして水中から障害を飛び越す。体のバランスを崩しながらもなんとか陸へ上がった。そしてもう一度池の中へ。その時だった。池は水しぶきを上げ、会場はざわめく。恐れていた落馬が起きてしまった。こみ上げる悔しさ。会場を後にする吉田(賢)は涙を浮かべていた。
3番手は昨年総合馬術競技を制した明菓。騎乗するのは西脇。ここは安全策のロングルートを選択し水ごう障害を通過、ようやく明大から完走した人馬が出る。残された優勝への可能性はわずか。最後の余力審査で日大から失権する人馬が出てこない限りは難しい。出走順は日大2頭が先だ。長年、明大に明け渡してきた三種目総合の団体優勝に手が届くところまでやってきた。最強世代と呼ばれてきた伊藤、上原がゴールを切った。ついに連覇が途絶えた。
79点差での準優勝。多くの人は拍手で彼らの健闘を称えることだろう。ただ、どんなに厳しい状況であっても勝つことを求めてきた選手たちには到底満足できる結果ではないのだ。「勝てるチャンスがあったのを決め切れなかった」(西脇)。ゆるぎない勝利への思いは悔しさに変わっていた。そして、その悔しさは王者奪還への原動力となる。「また明日からはじまる。乗り越えて一歩を踏み出したい」(作田監督)。やはり、明大馬術部にふさわしいのは大学日本一の称号。来年には表彰台の頂上、いつもの場所で会えるはずだ。
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