1年の集大成を51年ぶりのベスト4で締めくくる/全日本大学選手権
【1回戦】
1回戦の大経大戦、流れは完全に明大のものだった。前半で4点差をつけ後半へ向かうと、中盤までは明大のペース。しかし、終盤に入ると流れは一気に大経大へと傾き出す。気付けば同点になり、そのまま明大は逆転されてしまう。しかし、明大はここで崩れはしなかった。荻原(営2)のファインセーブが連続で決まると、相手のパスミスからの得点などで、終盤で見事逆転、最後はダメ押しのゴールを決め、4点差で試合を終える。「試合内容は悪かった、それでも勝てたことが全て」(寺田主将・商4)と課題は残るもまずは一歩を踏み出した。
【2回戦】
1回戦の翌日に行われた2回戦。関東学生リーグで常に明大と接戦を演じてきた筑波大を破った東海リーグ1位、中部大が立ちはだかる。前半、高田(営3)、池辺(政経2)を中心に得点を重ねるも、明大がノーマークシュートを外すといったミスが目立つ。ミスから流れが悪くなっていくと3点差に、このまま行けば突き放されてしまう。流れを変えるためにも、明大は堤(営1)を投入。秋季リーグ戦では出場機会に恵まれ結果を残したルーキーはインカレの舞台でも結果を残す。投入から数分で2連続得点、点差を一気に詰めると、チームも勢いに乗る。前半残り1分、池辺、堤で得点を決めると1点リードで後半へとつなげた。後半戦、互いにリードされると追いつくといったシーソーゲームで進んで行く。後半残り1分、同点で迎えた明大のセットオフェンス。ここで1点を決めれば明大の勝利、外せば中京大の速攻で敗れる可能性がある状況で緊張感は最高潮へ。エースとはこういう場面で得点を決められるからこそ、エースと呼ばれるのだろう。明大のエース・池辺がしっかりと得点を決め、見事1点差で勝利を収めた。「きん差の試合でしたが、そこで焦るとその焦りがチームへと影響してしまう、焦ることなく冷静にプレーすることを心掛けました」と池辺にはエースの風格が定着していた。
【準々決勝】
準々決勝は西日本インカレ2位の強豪・中京大と対戦した明大。試合は終盤までもつれる緊迫したものとなったが、明大が逃げ切り見事目標としていたベスト4に1960年以来の進出を果たした
明大のスローオフで始まった前半。相手の応援団の声援が会場に響き渡り、リーグ戦ではあまり見られないインカレ独特の雰囲気であった。しかしその中でも選手はいつも通り落ち着いたプレーをこなす。開始早々は一進一退の攻防が続いたが、リーグ戦2季連続得点王・池辺の3連続得点で7-3とリードを奪う。その後もキーパー・糸(商4)の連続ファインセーブにも助けられリードを確実に保ったまま試合を進める。しかし相手も西日本インカレ2位の実力を見せロングシュートや多彩なフェイントを絡めたセットオフェンスで応戦しリードを2点差に縮めてくる。対する明大も寺田主将が速攻から飛び込むなどし、前半を18-15で折り返す。
迎えた後半。「悪い癖が出てしまった」(池辺)とミスから速攻を決められるなど開始から4連取され逆転を許す。しかし「あのままズルズルといってしまったら昨年までと一緒。実力で負ける気がしなかったし、チームがそこで踏ん張れたのは成長してきた証し」と主将を中心にベンチを含めた全員が一体となり流れを相手に渡さない。特に後半はエース・池辺のマークがきつくなった時に要所で寺田主将の速攻からの飛び込みや大倉(商2)のポストシュートが決まり順調に得点を積み重ねていく。終盤連戦の疲れから足が止まり、相手に追撃を許したが何とか33-32と1点差で勝利した。
試合後選手たちはほっとしたような顔を見せながら「ベスト4は最低のライン。僕たちの目指すところは優勝しかない」(池辺)と半世紀ぶりの快挙に浮かれることなく、しっかりと次戦を見据えていた。次の相手はインカレ最多優勝を誇る絶対王者・日体大だ。「春、秋と大敗したが2試合とも気持ちで負けていた。自分自身も人生で本気でやるハンドボールはこの大会が最後なので、全力でぶつかっていきたい」(寺田主将)と気合いが入っている。この思いをプレーに出し、優勝への最大のヤマ場となるであろうこの1戦に勝利すれば頂点はもうすぐそこに見えている。
【準決勝】
前日に中京大との激戦を制した明大。この日の相手はインカレ最多優勝を誇り、年齢別強化指定選手が多く所属する強豪・日体大だ。春、秋のリーグ戦で大敗を喫した相手の圧倒的な個人技と連携プレーに苦しめられながらも、必死に食らい付いた。しかしここぞという所であと1本が決まらず惜しくも決勝進出を逃した。
インカレ準決勝。この日の会場は満員となり盛り上がりを見せる中で、明大のスローオフで試合開始。序盤は両チームとも硬さが見られ得点を決めることができない。そんな中、3分に寺田主将が左サイドから飛び込み先制。ここから試合が動き始める。日体大が強烈なロングシュートを決めれば、明大も得意のリスタートからの速攻で応戦し6分に4-2とリード。しかしここからリーグ戦でも苦しめられた日体大両エースの信太、元木のロングシュートに速攻を絡められ、5連続で失点し逆転を許してしまう。何とか流れを変えたい明大は右サイドを小澤(法2)から秋に台頭した堤に交代。これが功を奏し、堤がここから3得点で25分には1点差に迫り、このまま同点、逆転と一気にいきたい明大。しかし日体大は明大が信太、元木のロングシュートを警戒し前へ出たところにポストを絡めた攻撃で再び点差を離し、結局13-17で折り返す。明大は春、秋リーグで連続得点王の池辺が「ふがいないプレーをしてしまった」と言うように無得点に封じられてしまい得点が伸びなかった。
追い上げたい後半だったが、いきなり池辺が7mスローを止められる。そこから速攻を決められて離されてしまう。その後も相手キーパーのファインセーブの連発され、焦りからかシュートミスが目立つ明大。対する日体大は多彩な攻撃で得点を重ね、11分には8点差を付けられる。秋の大敗が思い出されるような展開だったがここで明大も粘りを見せた。10分に池辺がようやくこの日初得点となる7mスローを決める。するとそのままの勢いで池辺のロングシュート、大倉のポストシュートなどが次々と決まり、2点差に。しかし日体大はここでエース・信太にボールを集める。そこから信太の強烈なロングシュートが決まり明大の流れがストップ。残り5分の状況で明大は焦りからシュートミスが目立ち得点できない。何とか食らい付いていきたかったが再び点差は離れて25-31となったところでブザーが鳴り試合が終了した。
試合後この試合で引退となる寺田主将は涙を流しながらも「春、秋と大敗した日体大を相手にインカレという大舞台でいい試合ができた。計画していた試合運びができたが相手が試合巧者だった」と満足した表情で語った。松本監督も「51年ぶりという記録も出た。1年間で(チームを)ワンランク上にしてくれたことを4年生には感謝している。この経験を積んで、優勝を狙えるようなチームの土台ができた。(4年生に対して)4年間ご苦労さま」と1年間チームを引っ張ってきた4年生をたたえた。
今大会は初戦から苦戦しながらも51年ぶりのベスト4という偉業を達成した。明大ハンドボール部は昨年の入替戦に回るような状況から、今年はリーグ戦、インカレと好成績を収めた。「僕がこの1年間チームに伝えられたのがどのくらいあったか分からない。言葉では表せないけど何かを感じ取ってくれたと思う。今回の成績に満足せず、常に上位にいる名門校と言われるような結果を残していってほしい」(寺田主将)。
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