
流れつかめず8位でシード権逃す/全日本大学駅伝
2大会連続でシード権を獲得している明治。「3強を崩したい」(西駅伝監督)と語っていたように、下馬評を覆し3強の間に割って入るのが目標だった。しかし滑り出しの1区は快調だったものの流れに乗りきれず、次第に順位を落としシード権を逃す。選手たちは涙をのんだ。
レースの流れを作る1区を任されたのは大六野。出雲駅伝でも3区で区間4位という好走を見せている。伸び盛りのルーキーとして期待を集めて今回のレースに臨んだ。レースはスタートからジュグナ(第一工大)が飛び出し独走。他の有力選手が集団となって追いかける中、大六野も集団のなかでしっかりと力をためていた。ラスト1kmで田村(日大)、早川(東海大)らが前に出てジュグナをとらえ、スパートをかけると、それに追随する形で大六野もスパートをかける。「自分の役割を果たせた」(大六野)と区間4位の好位置で2区の鎧坂主将に襷をつないだ。
鎧坂主将は昨年も2区を走り、区間新記録の快走を見せている。出雲駅伝の2区でも8位で受取った襷をトップまで押し上げており、今回もエースとしての走りが期待されていた。襷を受け取った鎧坂主将は1kmしないうちにトップの駒大をとらえ、第1集団を形成して引っ張る形をとる。しかしそこからいつもの伸びが見えず、集団を離すこともできなかった。むしろ7km付近でスピードを上げた村山(駒大)、堂本(日大)らに離され、後ろから追い上げてきた出岐(青学大)に抜かれて襷を受け取った時と同じ4位で中継所に飛び込んだ。腰の違和感を訴えていた鎧坂主将。ただ、「その中でも最低限チームに勢いをつける走りがしたかった」と悔しさをにじませた。
「勝負の区間」と西駅伝監督が位置づけた3区には出雲では力を出し切れなかったルーキー・有村が起用された。有村は、すぐ前で襷を受け取った大谷(青学大)の後ろにぴったりとつくが、「中だるみがあった」(有村)とスピードを維持出来ずに7km手前で宇野(東洋大)、中川(東海大)、矢澤(早大)に抜かれる。その後高松(日大)をとらえ、ラストスパートで大谷を離してシード権圏内ぎりぎりの6位で4区へと襷をつないだ。
なんとしてもシード権圏内を維持したい4区、この区間を走った田中は大学三大駅伝初出場。地元を走るということもあり「みんなに元気な走りを見せたい」と意気込んでいた。しかし襷を受け取った6位の順位を維持することができず7km手前で、佐藤(日大)に抜かれ、高橋(青学大)に抜かれる。ここで高橋に粘りしばらく食らいつくも離され、氏原(上武大)にも抜かれ、順位を9位に落としての襷リレー。「走る前は、自分のレースをしようと思っていたが、自分が悪い流れを作ってしまった」と、ほろ苦い大学駅伝デビュー戦となった。
箱根駅伝5区2位の実績を持ちながら、不調から出雲駅伝では走れなかった大江は5区。「名誉挽回するような走りがしたい」と活躍を胸に誓っていた。「とにかく前にいくしかない」と追いつくことだけを考えて走り、小嶺(青学大)、山岸(上武)を抜き去り順位を7位まで上げる。「4位までいけると思った」と本人は不満気だったが、区間3位の好走だった。
大江の快走の勢いをもってさらに順位を上げたい明治の6区は、今大会唯一出場する2年生・廣瀬が走った。「自分の区間で挽回しなければ」小松(東海大)を抜いたが渡辺(上武大)に抜かれ、ここで順位を上げることはできなかった。また、持ち味はスピードだが、「(スピードを)活かすことなくふがいない結果に終わってしまった」。
7区を任されたのは、細川(勇)。去年も7区を任され、区間4位の好成績を残している。明大はシード権確保に向けてここで追い付いて行きたいところ。細川(勇)は区間5位の走りで6位日大との差をわずかに縮めるが、流れを大きく変えることはできなかった。「チーム全体が(鎧坂主将に)頼り過ぎている」ということを実感するレースでもあった。
シード権死守の最後の望みは8区の菊地に託された。この時点で6位の日大との差は27秒。上武大も日大とほぼ同時に襷を最終走者に渡しており、どちらかを抜けばシード権を得ることができる。今大会中一番長い19.7kmの区間が、最後の勝負どころだった。しかし、「最悪だった」と本人も語ったように、体が思うように動かない。第7中継所では差が2分弱あった村澤(東海大)にも抜かれ、「苦しいまま終わってしまった」と、実力を出し切れずに終わる。苦しい顔で伊勢神宮にたどりついた菊地は、8位でゴールテープを切った瞬間に泣き崩れた。
最後まで流れをつかめず、3年連続でシード権獲得とはならなかった今大会。鎧坂主将も不調であった今回は、それ以降の区間でも流れを取り戻すことができなかった。西駅伝監督も、「(流れを)断ち切られてしまった」と勝負の難しさを嘆いた。さらに指揮官は敗因を「力を持ちながらも発揮できなかったこと」と分析してもいる。出雲駅伝でも、特につなぎの区間の選手達が実力を発揮できずに7位に終わった。箱根駅伝での優勝を目指す明治にとって、選手全員が実力を出し切るために「しっかり上を目指すんだという意識」(菊地)が今後のカギとなることは間違いない。
[岡本幸大]
~大会直後のコメント~
西駅伝監督
「駅伝でやっちゃいけないことは、流れをたちきるかたちきられてしまうかだが、今回はたちきられてしまった。敗因は練習の力が出しきれなかった。力を持ちながらも発揮できなかったことにあると思います。去年より力がありながらこうなってしまうのはなにかしら原因がある。鎧坂は腰に違和感があると訴えてきた。レース途中にも影響が出たみたいです。よく最後まで盛り返して、4番で走ってくれた。評価できる。1区、5区、7区の3人は力通りの走りをしてくれた。あとの5人はまあ鎧坂は悪いなりに仕事をしてくれたが4人は思ったより伸びなかった」。
山本コーチ
「これだけ取りこぼしが多かったら、今の学生駅伝は差がないからこういう結果になる。不自然ではない。1年生を使わないといけない厳しい台所事情。駅伝は流れが大事なので1区は一番調子のいい大六野を起用し、信頼できる鎧坂で流れに乗ろうと思った。大六野は合格点をあげられる走り。鎧坂はあの調子の中でよく4位でつないでくれた。昨年のような区間新の走りは期待していなかったので十分。その後流れが切れてしまったことが今回の結果につながった。襷をもらった位置は悪くなかったと思うけど、個人の能力と調整不足。
(優勝した駒大は)穴がない。2区の1年生がいい走りをしていたし。1年生があれだけ走るとチームに勢いがつく。
練習は間違ってないけどチーム内の競争が足りない。レギュラーであることに安心してしまっているので、もっと緊張感を持って練習しないと。メンバー争いがチームのレベルアップにもつながる。今回はエントリーの11人を選ぶのがやっとだったので、箱根ではエントリーメンバーに誰を入れるか迷うくらいにしてほしい」
1区 大六野
「大学駅伝での初めての一区で緊張した。特に今朝起きてから強く感じた。しかしレースでは自分の役割を果たせた。自分の結果には納得している。調子も良かった。ただ、課題も見つかった。(それは)スパート力。今日もラストで一気に離された。(箱根では)三強を崩してチームで優勝することが目標」。
2区 鎧坂主将
「悔しい。1区以外は全部ダメだった。敗因は個人個人あると思う。(シード落ちという結果は)スタート前はどんな結果になるかはわからないので予想はしてなかったけど、結果を受け止めたい。自分の走りは全然ダメだった。腰の状態もあまりよくなかった。その中でも最低限チームに勢いをつける走りがしたかった。レース展開は見ての通り。それぞれが課題を見つけられたと思う。個人としてはレースに万全で臨むという課題が見つかった」。
3区 有村
「1、2区で4位でつないできてくれたのに自分で落としてしまい悔しい。悪い流れを作ってしまった。前半で流れを作れなかったのが敗因だと思う。
襷をもらった時は前にも後ろにも選手がいたけど後ろは気にしないようにした。前に青山と日大がいたのでまずは青山をとらえようと思っていたけど、途中の上りでペースが落ちてしまった。中だるみがあったことが今回見つかった課題。
最初の1キロは2分44秒くらいで入ってリズムも良かったけど、そのまま押し切れないというのは力がない証拠だと思う。
3区は前半のスピード区間なので前との差を広げられないようないい走りができればと思ったけど、後半に流れを作れなかったことが悔しい」。
4区 田中
「力がないことが分かったレースでした。走る前は練習もしっかりできていたし自分のレースをしようと思っていたが、4㎞くらいからおかしかった。(初めて大学駅伝を走ったが)故障者もいるが今年のチームでメンバーに入れたことがうれしく、楽しみにしていた。でもそれだけじゃだめ。自分が悪い流れをつくってしまった。鎧坂さんとか主力の選手が走ってるんだから、つなぎの自分がしっかりしないとどうしようもない。あと2ヵ月もないがその中で力をつけないと。我慢して我慢していかないといけない。東洋大や駒大はやっぱりタイムだけじゃないものがあると思う。練習できつくなった時も粘っていけるようにしたい」。
5区 大江
「前半は予定通りのペースだったが後半失速してしまった。9位で襷をもらって4位までいけるとおもったが、前の3人の集団に追い付けずに勢いつくれなかった。今まで調子が悪かったので、今回で自分本来の走りをして名誉挽回しようというやる気で臨んだ。区間賞も狙っていたが、届かなかったのでだめでした。3位以内は最低ラインだと思っていたので、最低限の仕事しかできなかった。満足はしていない。上武大、青学大はすぐに抜いて、さらに前の集団までいきたいとおもった。とにかく前にいくしかないと思った。追いつきたかったが、後半体が動かなかったことは今後の課題。後半しっかり走りたい。(今日のレースは)50点。残りの50点は後半の失速にある。8.4km地点で坂道がある。そこで足を使ってしまって苦しかった。後半しっかり走れるスタミナ作りや、メンタルからみつめ直してしっかり調整していきたい」。
6区 廣瀬
「出雲でも自分の区間でなんとか挽回しなければと思ったが、今大会も挽回することができなかった。自分のところで挽回しなくてはいけないのに。(区間順位について)もっと上に行かなければいけないと思う。トラックではいい走りをできるのに、駅伝ではできない。駅伝で一人になったとき自分のリズムを作れないからだと思う。(上武に抜かれて)悔しかった。なんとかしてついていきたかった。上武には抜かれてから一回ついていったが、苦しくなって粘れなかった。ついていければ流れが変わったかもしれない。持ち味のスピードを生かすことなくふがいない結果に終わってしまった。(シード権をとれなかったが)引きずることなく次を見て、今回の課題を生かしたい。(箱根では)上位で戦っていく力はあるので、みんな力を出し切りたい」。
7区 細川(勇)
「まだまだ力不足だなと感じたレースだった。それは全体としてもだけど第一に個人として。流れを変えることができないんだなと痛感しました。(前回と同じ区間だったことは)初めて走る選手よりはもちろん走りやすいと思ったが、去年より区間が下がってしまった。力を発揮できないのは弱さだと思う。鎧坂が腰を痛めたということでチーム全体が頼りすぎてることを感じた。鎧坂がいい意味でもチームを抱え込んでくれているが、プレッシャーがある中で走ってくれている。それが分かったのはよかった。チームとして、それだけ各個人が理解できた。一人一人が鎧坂を生かすことを目標に掲げていきたい。自分としても次の箱根が最後なので」。
8区 菊地
「最悪です。序盤から思い通りのレースができなかった。前が見えていたけれどシードがとれなかったことは、チームにも鎧坂さんにも申し訳ない。前と近い位置だということと村澤がうしろから来るだろうことは聞いていた。状態は悪くないので、しっかりとシード権を狙っていこうということだった。前が見えているのに差が縮まらない、苦しいまま終わってしまった。情けない走りをしてしまった。今回のアンカーは悪くても6位、良くて3位にいかなくてはいけないメンバーだった。本当に全然だめでした。皇学館大学あたりののぼり坂が辛かった。村澤に抜かれてはじめはついたが、体がついていかず、すぐに離されてしまった。(今日の自分のレースは)10点。チームとしてはせっかく大六野がつくってくれた流れを生かせなかった。出雲でもそうだったが、そこがうちの弱いところ。12月の合宿のなかで、しっかり上を目指すんだという意識をもって臨むことが大事。
今年はすごく力のあるチーム。ここまで頑張ってくれた鎧坂さんのためにも、応援してくれる方々のためにも、優勝という形で恩返しがしたい」。
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