
鎧坂主将、好走見せるも課題を残す結果に/出雲全日本大学選抜駅伝
早大、東洋大、駒大の3強の猛攻を止めるため、体調万全で臨みかった。しかし、故障者がいたため明大は、6区間中3区間をルーキーが任されるという異例のオーダーとなった。
レースの流れを決める1区を担ったのはルーキーの文元。スタート直後には大迫(早大)、柏原(東洋大)、早川(東海大)といったエース級の走りに阻まれ下位集団に留まった。しかし「コースが前半下り坂なので、最後に粘ることが重要だった」と後半追い上げ8位で2区のエース鎧坂主将に襷をつなぐ。ルーキーながら好走を見せた。
鎧坂主将はレース前、「遅れても挽回するから」と文元に声を掛け、その約束をしっかりと果たしてくれた。第1中継所では44秒あったトップとの差を区間新記録をたたき出す快走で7人抜き。1位に躍り出た。「後に走る選手のためにも、後ろとの差を広げられれば良かった」と自身の走りに満足はしていないようだったが、エースの実力を見せつけた。
鎧坂主将がつくり出した流れを崩したくない3区にはルーキー大六野が出走。後方で早大と東洋大がつばぜり合う中、後ろも振り返らず落ち着いた走りを見せる。しかし、6㎞地点でその表情が変わる。2校に追いつかれ「うまく対応できなかった」と3位に順位を落としてしまう。そのまま順位を変えることなく3位で襷リレー。残り3区間残されているためまだ優勝する可能性は残されている。しかし、ここからが苦しい展開になった。
どうにかして追いつきたい4区は出雲駅伝初出場の廣瀬に託された。だが追いつくどころか徐々にトップとの差が開き、上位の早大、東洋大の姿が見えなくなっていく。さらに7㎞地点で日体大に抜かれ4位に後退し、首位との差を1分1秒に広げて第5中継所へ。レース後、廣瀬は「最低でも順位は維持したかった」と悔しい表情を見せた。
5区を任されたのは次期エースの呼び声が高い有村。入学時に鎧坂主将が持っていた記録を上回っており、その期待は大きかった。しかし「スタート前から緊張してしまった」と気負いすぎてしまい、区間11位と本来の力を存分に発揮することができなかった。駒大、東海大に立て続けに抜かれ、6位で最終6区へ。「大学に入って一発目のレースなのでよい走りがしたかった」と本人もふがいなさを語った。
最長区間・6区を任されたのは菊地。5人の汗が染み付いた襷とともに終始無難な走りを見せるが、「中盤で苦しくなり乱れてしまった」と拓大の留学生・マイナに抜かれてしまう。6位で渡された襷を順位を一つ落とし、総合7位でゴールテープを切った。
終わってみれば昨年の総合順位を一つ上げてのフィニッシュ。昨年以上の成績は残せたが、鎧坂主将の走りで一時トップに立つも、後続の選手がそれを維持することができなかった。「鎧坂がつくった流れを4、5区で断ち切ってしまったのが厳しい」と西駅伝監督が語るように、つなぎ区間に粘りきれなかったのが今大会で見えてきた課題だろう。上位校ではつなぎの選手が区間上位で襷をつなぐ中、本学も主要区間の周りを固める選手たちがエースをどのように生かすかが重要だ。全日本大学駅伝まで残り一ヶ月。課題をしっかりと克服し、今度こそ3強に切り込むことができるか。このままでは最終目標である箱根優勝には遠く手が届かないだろう。
☆レース後のコメント☆
遠藤監督
「もう少し前に行かないと次につながらない。個々はしっかり走れていたが全体で見ると良くない。まだ持っている力が出し切れていないんだと思う。今のところはこれくらい。文元は十分走れていた。去年より一つ上げたが不十分。これから徐々に上げて行って、最後の箱根でしっかり走れれば。チームの雰囲気は良い。鎧坂がラストイヤーで、今年が勝負の年、重要な年。1~4年みんなまとまっている。鎧坂一人だけじゃなく自分も、という意識が周りに出ている。合宿や練習でもみんなのチームという雰囲気が出ていた。まだ潜在能力を出し切れていないので、全日本でしっかり出すようにし、箱根では全てを出し切りたい」。
西駅伝監督
「今日の出来は60点。まあ合格ライン。出雲は距離が短いから1区間で30秒でもブレーキしたら厳しくなってしまう。いい流れをせっかく鎧坂がつくったのに4、5区でそれを断ち切ってしまったのが厳しい。菊地は無難に走ったと思う。区間順位1ケタで来なければいけなかったので。4、5区にはどこも弱い人がくるところ。その弱いところでやられてしまったのが痛かった。今回の課題を次に生かしたい。課題が次につながる結果だったと思う。故障者もいるが、出雲に出られなかった子の中には元気な子もまだいる。全日本まであと4週間だがしっかり立て直していきます」。
山本コーチ
「7位は予想の範囲内だけど、悪い予想の方。けど3位に入れたレースだったと思う。原因は4、5区の取りこぼしにつきる。文元はよく走ってくれた。区間8位は充分。鎧坂は体調がよくなかったけど、予想以上だった。大六野は1年生で3区は荷が重いけど最低限の走りはしてくれた。1~3区はいい流れで走れたと思う。有村は期待を大幅に下回る走りだった。菊地は普通。あと10~20秒よければ合格点をあげられた。菊地はビックレースで失敗が続いてるので殻を破らないといけない。今日はそれを期待した。最近の駅伝はつなぎ区間がとても大事。全日本は距離が長くなるしそつなく走らないと。選手にはもっとレース慣れしてほしい。1、2年生にも頼らざるをえない戦力だから、1年生には酷だけど頑張ってほしい」。
1区 文元
「初めての大学駅伝で緊張したが1区では早大の大迫さんなどエース級の選手と走れてよい経験になった。次の鎧坂さんにいかに早く渡せるか考えてずっと走っていました。(区間8位に関しては)もっと上位に食い込みたかった。走る前は緊張していたが、しっかり自分の仕事をする事を考えた。2区の鎧坂さんが『遅れても挽回するから』と声をかけてくれて心強かったです。(9月に5000m自己ベストを出したが)それまで13分台がなかなか出なくて、今回やっと戦うスタートラインに立ったという感じ。合宿は練習量が多いために故障しやすいが自分は故障せず乗りきったので、秋口には期待できるのではないかと思う。どの練習がというのではなく全部をこなすことが大事だと思う。それを達成して少しずつ実力がついた。自分の持ち味は後半の粘り。今回もコースが最初下りなので、最後粘ることが大事だと思って走った。ラスト2.5kmが直線でつらかったが、ここで落ちてはいけないと気持ちを強く持って走った。今回は2区の鎧坂さんに頼りきってしまったところがあるので、全日本や箱根では鎧坂さんを生かすような走りがしたい」。
2区 鎧坂主将
「あとに走る人のためにも、もう少し後ろとの差を広げられればよかった。けど、練習があまりできなくて調子が7割程度だったのでその中ではできた方だと思う。チームとしては、1年生が結果を出してくれたと思う。伊勢へ向けて今回の結果を踏まえてそれぞれが課題を見つけたと思うのでしっかりやっていきたい」。
3区 大六野
「大学駅伝は初めてだったがトップで来るのは頭にあった。最初は緊張で硬くなってしまった。中盤からは修正してできたが、抜かれたときに上手く対応できなかった。そこが課題。東洋大、早大についていこうという意識はあったが体が反応しなかった。少しは粘れたと思うが、ラスト1kmで一気に行かれた。区間順位(4位)は驚いている。でも区間順位どうこうではなく、抜かれてしまったのでだめだった。(大会前の合宿、記録会については)夏場調子はよかったので自信がついた。自信を持って走れたのがよかったと思う。合宿は走り込んでいてトラックでもスピード重視でできていた。そのスピードを維持して押すことができて自信になったが、課題も残った。(他の1年生は)八木沢が故障して出られなかったり、選ばれなかった選手の分も頑張ろうと思った。これからの課題は後半を迎えたときのキレ。ペースの変動についていけるようにしたい。後半のスタミナを意識したい」。
4区 廣瀬
「全然だめでした。向かい風強くて、全然流れにのれず足もついていかなかった。ふがいない結果に終わってしまった。区間8位という結果については、もっと上にいきたかった。5000mのタイムでいくともっと上位なはず。最低でも順位は維持したかった。日体大・高田に並ばれたとき、すごい苦しかったので、落ち着いていこうと思ったが、全然身体が動くかなくてついていけなかった。出雲という舞台は前から出たいと思っていたのでうれしかった。出雲独特の雰囲気がある。(記録会で13分台を出せたことについて)合宿で練習がしっかりできていたので、ベストは出せると思ってレースに臨んだ。走り込み中心で、だいぶ走れるようになった。記録会の時と違って、今日は暑く向かい風もあるコンディションのなかで走れなかったので、次はなんとか対応して走ることが課題。チーム全体の結果は去年よりは1つ上だが、力を出していればもっと上に行けたはず。自分はとにかくチームに貢献できる走りをしたい。高校のとき1500mをやっていたので、短い距離の方が得意な方ではある。強いて言うならスピードだがそれを出せていない。文元とは高校も今の部屋も一緒」。
5区 有村
「スタート前から気負いすぎて緊張してしまった。後半も伸びなかった。大学に入って一発目のレースなのでいい走りをしたかった。駅伝の方が好きだけど明治の襷は重いものだと感じた。襷をもらった時は先頭が小さくだけど見えていたのでトップで渡せるようにしたかった。菊地さんに申し訳ない。覚えてないけど何か声を掛けた。今回はがむしゃらさが足りなかったと思う。チームに迷惑を掛けないようにしたい。文元はしっかり襷をつないで、大六野も自分より緊張していただろうにしっかり走っていて。自分だけ駄目で、刺激になった。調子は良かった。合宿の後半で一回落としたけどまた上げることができたと思う」。
6区 菊地
「入りはよかったが、中盤でのペース維持ができず、後半では伸びが足りなかった。村澤(東海大)が見えていた前半はいい感じだったが、中盤で苦しくなり乱れてしまった。スタッフから自分に任せられるような戦いが出来ればいい。今年は1区のリベンジをという気持ちがあったが、1区には適任者がいた。自分は与えられたら仕事をするだけだったが、物足りない。7位という結果だが、もっと上を狙えると思う。1年生が経験を積めたのはいいこと。文元はあの順位で帰ってきたし、大六野もいい感じだった。有村は気負ってしまったのか。しかし力はあるので、立て直していければいいと思う。来年は鎧坂さんが抜ける。自身が主力であるという自覚を持っていきたい」。
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