それぞれの思いを胸に、最後のインカレへ!麻生・大崎

2011.08.26
 水泳部はクラブチームに所属している選手がほとんどだ。クラブチームに入っていても、寮で生活する寮生とクラブチームの寮に住んでいたり、一人暮らしをしている寮外生がいる。寮外生は個人によってさまざまだが、基本はクラブチームの練習を優先させ、月に1度の大学での合同練習に参加する。したがって、寮外生が寮生と関わる時間は少なく、一緒に練習する時間も限られている。そんな寮外生として、この水泳部を引っ張っていくのが麻生(商4)と大崎(商4)だ。

 寮外生の麻生は寮生と会うことがほとんどないという。大会や合同練習の時以外は自身が所属するクラブチームでの活動を主としている。今年は水泳部の合宿ではなく、クラブチームの合宿に参加。クラブチームでの練習は本人いわく「システマチック」。練習後に血液を採り、体の細かいデータを出し、それを参考に練習をこなしていくという。一方、大学の練習は「楽しい」と話す。クラブチームでは少人数で行っている練習。しかし大学の練習には大勢の仲間がいる。そこへ行けば自然と笑みもこぼれる。
 寮外生と寮生との関わりが少ないことで心配されるチームワークや、選手同士の結び付きの強さを高めるためにも大学の合同練習は必要だ。「個人戦に見えてチーム戦」であるインカレを目前に控えた今、チームワークが勝敗を左右すると言っても過言ではない。インカレが近づくにつれ、寮外生と寮生の交流も多くなり「お互い刺激になってチームとしてはいい方向へ向かっている」と麻生はチームの現状を語る。彼自身、寮外生と寮生の交流を深めるために一緒に食事へ行ったり、遊びに行ったりとチームのことを考えながら生活している。また、それは彼にとって「水泳面だけで充実していても仕方がない」と大切なプライベートの時間になっている。そんなメリハリをつけることで練習にも集中できるという。
 麻生の4年間は決して楽な道のりではなかった。4年前、インターハイ2連覇という輝かしい戦績を引っ提げ入学した麻生。しかし、そのインターハイは2年連続有力選手不在での優勝。大学1年次には先月の世界水泳銀メダリストの松田(コスモス薬品)が不在だったためぎりぎり8位で決勝へ進出することができた。「全部運が良かっただけ」。素直に喜ぶことができない日々が続いていた。しかし、大学2年次の日本選手権で彼はようやく心の底から喜びをかみしめた。隣を見れば強敵がいる。そんなレースで彼は「何もなく自己ベスト」を出し6位。もう運など関係なかった。彼は自分の実力で結果を出したのだ。「タッチした瞬間に泣いた」。やっと重圧から解放された感じだったと、まるで最近のことのように話す麻生にとって、このレースは一生の思い出だ。それ以来「水泳観が大きく変わった」という。練習でも常に試合を考えたメニューをこなし突き詰めていく。「自己満度が一番高かったとき、それが自信につながる」。あれだけやったという実感が彼の自信へと変わるのだ。
 インカレまで残り1週間。一番倒しにくい相手は「自分」だという。「自分に一番流されやすくて、その気持ちに左右される」。彼の最後のインカレはもはや自分自身との戦いになる。「自己ベストは自分超え」。最上級生として、最後のインカレで自分を倒しチームを優勝へと導く。「一見ちゃらちゃらしてるけど、チームのことをちゃんと考えてる」(安孫子・政経2)。そんなチーム思いなスイマーの戦いが、今始まろうとしている。

 大崎もまた寮外生の1人だ。いつもはクラブチームでの練習がほとんどな彼だが、今年は8月1日から水泳部の寮へ入り、寮生たちと共にインカレまでの時間を過ごしている。
 やはりクラブチームでの練習は寂しいという。少人数だからこそ集中できる反面「わいわいわいやるのに欠ける」。しかし、彼は今寮生たちと同じ練習メニューをこなし、一緒に生活している。いつもあまり会わない寮生たちとの練習は「仲間の大切さ」を感じる貴重な時間だという。そして、そんなみんなでやる練習は楽しいかという質問に彼は「間違いない」と笑顔で答えた。
 「水泳部の中で一番水泳が好きな人」(安孫子)。先月の世界水泳も「録画して何回も見た」。自分より速い選手は全員が目標だという大崎。その選手たちから「いろいろなものを吸収してスキルアップ」を図る。日々、水泳の研究を怠らない大崎の4年間は感謝の気持ちで溢れていた。この明大で過ごした4年間、多くの大会に出場しいくつものレースを泳いできた。結果が出ないこともあった。表彰台へ上ったこともあった。それは「周りがいてくれたからできたこと」と彼は振り返る。水泳を通して「感謝することが大事なことだと気付かされた」という大崎。水泳は個人競技だ。レースには1人しか出場できない。水の中へ飛び込んだら、自分だけで頑張るしかない。しかし、周りにはいつも支えてくれる仲間がいた。応援してくれる仲間は彼にとってかけがえのないものなのだ。
 1週間後に控える最後のインカレで、彼は個人種目の他にリレーに出場する。「4人で戦うことで、気持ちも強くなる」というリレー。目標は表彰台。「(上れたら)個人種目よりもうれしいと思う」と彼には既にその光景が見えている。
 泣いても笑ってもこれが最後のインカレ。目標はもちろん総合優勝、そしてもう一つ。「結果を出してみんなに恩返しがしたい」。彼のその笑顔が表彰台の上で見られるはずだ。

◆麻生真稔 あそうまさとし 商4 千葉商科大付高出 172cm・62kg

◆大崎瑛人 おおさきえいと 商4 淑徳巣鴨高出 177cm・73kg

 全4回にわたりお伝えした水泳部の特集は、これが最終回となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。インカレは1週間後の9月2日から4日までの3日間行われます。ぜひ会場に足をお運びください。

◆第87回 日本学生選手権◆
日程:9月2~4日
会場:横浜国際プール(神奈川県横浜市)
◆会場へのアクセス◆
横浜市営地下鉄「北山田」駅から徒歩5分

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