(7)4年生特集 強い信念の持ち主 浅利真喜子

2011.08.15
 第7回は女子シングルスカルクルーの浅利(政経4)です。
 インカレまで残り10日を切った。浅利は、1年次からインカレに出場し、チームの主力として活躍してきた。1年次に総合優勝を経験したが2、3年とその座をライバルである早大に明け渡している。喜び、悔しさ両方を経験した彼女のインカレへの思い、またボートへの思いとは――。

 父、母、姉の家族みんなが経験者というボート一家で育った浅利。「エルゴ(※1)も家にあり中学の時によく姉のレースを観戦に行っていた」ほど彼女にとってボートは身近な存在だった。そのため「自分もやるものだと思っていた」。小学校、中学校とバレーボールをやっていたが高校では迷わずボート部を選択。だが見ていたときは軽そうに見えたボートも実際にやってみると大変だった。練習もきつく、とにかく「無我夢中で漕いだ」。学校にも行かず月の半分をボートの練習に費やすこともあった。努力を重ねることで成績も出始め、周りも応援してくれるようになった。たゆまぬ努力の結果、県の代表になり、国体で優勝争いをする選手にまで成長した。

 現在、主力として部には欠かせない存在となっている浅利だが大学でボートを続けるつもりはなかったという。その考えが変わったのは高校3年のインターハイだった。シングルスカルで出場した準決勝で川のコンディションが悪く船が沈んで漕げない状態になってしまう。これにより決勝へ駒を進めることができなかった。「勝てると思っていた」自分よりも遅い選手に負けてしまい「許せなかった」という浅利。この悔しさが「このままでは終われない」と、大学でも競技を続けるきっかけとなった。そしていろいろな大学から声を掛けられたが「明治しか考えていなかった」と父親も在籍していた明大端艇部でボートを続けることを選択した。

 1年生の時は雑用なども多く、慣れない寮生活がつらかった。「オフの日はいつやめようかなんて考えた」。しかし、高校時代から鍛えられてきた実力から1年生からインカレメンバーに抜てきされる。大会前の強化合宿の過酷さは相当なもの。4年生の先輩が言っていることは難しいことばかりだった。だが先輩たちは考えてものを言っている。そんな三つ上の先輩たちが浅利の目にかっこよく映った。「4年生は自分の知らない3年間がある。その人たちの期待を裏切るわけにはいかないと思った」。4年生のために漕ごうとインカレへの思いを強くした。そして、その練習のかいあって、女子部総合優勝を経験した。

 だが連覇を目指して臨んだ2年次には浅利の乗った舵手付きクォドルプルは無念の敗者復活戦で敗退、3年時には決勝では2位になるも、2年連続で早稲田に舵手付きクォドルプル優勝、総合優勝を許してしまった。昨年の決勝レース直後は「すごい悔しくて、2位のメダルなんていらないとも思った」ほど、悔しさがこみ上げた。だが「早稲田はそれ以上の練習をしてきたんだろう」と表彰台に立って感じることができた。あれから1年たち「早稲田は強い。個々の力では負けるけど、大事なのはチーム力。うち(明治)は総合力で勝ちたい」とリベンジすべく闘志を燃やしている。今年こそは総合優勝を、1年の時の喜びをもう一度味わうべく気合を入れる。

 この4年間で考え方も変わってきたという浅利。今までは先輩に付いていき、自分は強みであるムードづくり、チームを盛り上げようとしていた。だが最上級生になった今後輩の性格や漕ぎをくみ取ってあげる立場になり、自分が引っ張らないといけないと痛感。「下の時からそうやっていればよかった。けど、4年生の立場はなってみないと分からないですね」と自分も同じ立場になって先輩たちの気持ちも理解することができた。

 インカレまで残り10日を切った。本番へ向け「自分は勝たなければいけないし、現状維持とかこのままでいいとかは思っていない。インカレまでに強く化ける」と決意する彼女には、強さが感じられた。出場種目はシングルスカル。当初予定していた舵手付きクォドルプルから合宿前に変更し、個人種目で挑むこととなった。それに対し「自分の得点がチームにもつながる。漕ぐのは1人だが、誰かのために漕ぎたい」と彼女は語る。また、部訓である「受け取ることより与えることに意義がある」のように漕ぐことで「伝えられるものを追求していきたい」とも語った。

 高校、大学と続けたボートについて「生きがいです。今は生活そのもの」とまっすぐに語った浅利。そんな彼女は9月の国体で競技を終える予定だ。「正直ボートがなくなったら怖い。そんな生活耐えられるのかな(笑)」とも答えた。7年間ボート一筋でやってきた。残りの試合を悔いのないよう、今までの思いをオールに込め、彼女は全力で漕ぐ。

◆浅利真喜子 あさりまきこ 政経4 由利高出 165㎝ 

(※1…陸上トレーニング用の乗艇マシーン。その漕ぎに対応した時間や距離を計ることができる。)

☆次回のRowing!Rowing!Rowing!レガッタ2011は8月18日掲載予定です。