念願の夢果たせず 男女ともに一歩及ばず/全日本大学対抗選手権

2011.08.09
≪男子≫
 「悔しかった」(白井・営1)。敗退を喫した立命大戦直後、選手たちはそう言葉を残しコートを後にした。むしろこの言葉しか出なかったと言った方が正しいかもしれない。この一言には何事にも言い難い重みがあった。並々ならぬ思いを胸に挑んだ今回のインカレ。それだけにベスト16で敗退という事実は選手たちにとってあまりに残酷過ぎた。勝負の世界の厳しさをありありと思い知ったに違いない。

☆姫路獨協大戦☆
 快調な滑り出しを見せておきたい本学。第1ゲームは先取するが、第2ゲームで竹綱(文4)・望月(政経4)ペアがまさかのストレートで試合を取られてしまう。しかし、ここで動揺を見せることはなかった。次の大熊(法2)・今井(農3)ペアの試合では、今井の相手のプレーを読み切ったようなポーチボレーが幾度となくさく裂。第4ゲームでも白井・堂野(営2)ペアが攻めの姿勢を貫き難なく勝利を手繰り寄せた。初戦で硬さもある中でも危なげのない試合展開を見せた。

☆天理大戦☆
 苦しい試合展開を迫られた天理大戦。まずコートに向かったのは桑山(農2)・寺下(営3)ペアだ。調子の良さを見せる2人は幸先よく4-1で勝ちを収める。
 次に挑むのはエースとしてチームをけん引する大熊(法2)・今井(農3)ペア。この2人には勝ち頭として何としてでも勝利が欲しいところだ。しかし、そう簡単にいくほど勝負の世界は甘くはなかった。いつもは抜群の安定感を見せる大熊であるが、その姿は影を潜めてしまう。相手後衛に攻められる場面も多く見られ、バックアウトのミスが珍しく目立った。そんな中で、前衛の今井もラリーに絡むことが少ないまま試合が進んでいってしまう。終わってみれば2セット目を競り取ったのみで1-4のまさかの敗戦。自分たちのテニスをする前に試合は終わってしまっていた。
 ここで流れを持っていかれてしまったか。2人の後に登場した白井・堂野(営2)も健闘あえなく1-4で試合終了。これで後がなくなってしまう。
 片方が先に3組負けることで勝負が決まる方式の今大会。二つ取られてしまった本学に残された唯一の道は、1ゲーム目で勝利した桑山・寺下ペアが連続で2勝することである。チームの威信にかけて彼らが全力で臨む。
 まずは第4ゲーム、相手後衛のミスを誘う攻めを見せ2セットを連取する。しかし、後の2セットは相手のサーブやレシーブアタックに苦しめられ連取されてしまう。だが、ここからずるずるといかないのが今日の調子の良さを物語っていた。相手のダブルフォルトに乗じて、デュースに持ち込ませず再び2セットを連取。セットカウント4-2で勝利を呼び込んだ。
 ただまだここで終わりではない。勝った方が次へのステージに進める第6ゲーム。連続して出場する桑山・寺下ペアは負けたら終わりというプレッシャーを感じさせない試合展開で2セットを連取する。その後も寺下のこん身のスマッシュがコートに突き刺さる。最終セットはデュースが続くも、桑山のポイントが幾度となく飛び出し反撃の芽を摘み取った。窮地を救った2人には大きな拍手が送られた。エースは大熊・今井ペアだけでないというところを示した瞬間だった。

☆立命大戦☆
 何としてでも2日目へ望みをつなげようと意気込む選手たち。その前に立命大が立ちはだかる。第1ゲームは、白井・堂野ペアが息の合ったプレーを見せ難なく1本目を奪った。しかし、2ゲーム目の大熊・今井ペアは前の試合同様に本調子が出なかったのか、セットカウントをリードしながらファイナルセットに持ち込まれてしまう。追いついた相手の勢いを止めるには既に遅く、ここでもエースとしての責任を果たすことができなかった。続く第3ゲームの桑山・寺下ペアも、最初のゲームを競り合いながら相手に奪われると流れはそのまま、1-4で敗れてしまう。 
 後をなくしてしまい、連勝が必須条件となる本学。最後に望みを託されたのは白井・堂野ペアだ。相手はダブル前衛で、かつカットサーブを駆使してくる。やりづらさがある中で、堂野は白井と共に後ろに徹して深いロブを多用した。それが相手のスマッシュミスを誘いポイントを重ねる。しかし、試合の連続で体力面でも限界に達してしまう。「リードしているのに取りきれなかった」(堂野)と3セットを連取したにも関わらず挽回されファイナルセットに持ち込まれる。粘りのプレーを続けたい2人であったが、大事なところで堂野のレシーブミスが出てしまった。最後は相手のボレーが無残にもコートに突き刺さり、ここでゲームセット。インカレへの挑戦は悔しくもここで幕を閉じてしまった。
 念願の夢はあまりに早くついえてしまった。目指していたものと現実との大きな差に選手たちは動揺を隠すことができない。何も語らずにコートを去る選手たち。その背中はいつもより何だか小さく見えた。

≪女子≫
 一方の女子部は順調に勝ち進み、ベスト8にまで残った。大会2日目に迎えたのは、創部4年目にして初のベスト4入りをかけた運命の一戦。相手は昨年のインカレ女王・早大だ。「向かっていく気持ちで。明治のソフトテニスを見せつけて、絶対勝とう」(山形・政経4)。炎天下の暑さに負けないほどの熱き女子部の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 第1ゲームのコートに立ったのは成田(法3)・工藤(政経4)ペア。序盤は息もつかせぬ打ち合いの末、ミスにより自滅してしまう。しかし、このまま黙ってはいないのが明大女子部の力だ。2セット目からは相手の鋭く角度のあるスマッシュにも食らいついていき、どんなボールも勢いよく打ち返していく。何を打たれても屈しない成田・工藤ペア。早大のミスも絡んで一気にポイントを重ねた。攻めの手を緩めなかった早大だがこちらもやられっぱなしではいられない。成田のコースをついたストロークで揺さぶり、甘いボールが返ってくれば工藤が容赦なくスマッシュをお見舞い。女王早大と互角、むしろそれ以上の試合を展開しセットカウント3-2と追い込んだ。あと一つセットを取れば大事な第1ゲームを先制できる。それでも焦ることなく、しかし速攻で畳み掛け最後は成田の強烈なスマッシュでゲームセット。女王・早大の大将を圧倒しチームカウントを一つ稼いだ。

 勢いそのままに早大をのみ込むかと思われた女子部。しかし「第1ゲーム取ったからいけるかと安心してしまった」(山形)と、一瞬の油断がブレーキをかけた。第2ゲームに出場した山崎(営4)・川田(商4)ペア、第3ゲームを任された山形・佐怒賀(政経3)ペアが立て続けに敗戦してしまい、追いつめられてしまう。嫌なムードが明大側コートに漂う第4ゲーム目、これで負けたら後がない――。チームの思い全てをその背に受け、再びコートに向かったのは成田・工藤ペアだった。
 その二人も、第1ゲームほどの気迫はどこか感じ取れなかった。スマッシュやボレーもキレがなくなっていた。「相手との差はほとんどなかった。冷静にやれば勝てたはずだったのに……」(成田)。第1セット目を奪いリードしていても自分たちが勝たなければならないという焦りからミスを繰り返してしまう。点差をつめられると冷静さを失い、ボールまでのあと一歩が出なかった。最後まで悪い流れを断ち切ることはできず、早大の前に敗退。女子部の夏は昨年と同じくベスト8で幕を閉じた。

 「今年は優勝する力をもっていたチームだった。負けてこんなに悔しいと思ったのは初めて」と創部当初から二人三脚で女子部と一緒に戦ってきた斎藤監督は、あっけない幕切れに唇をかんだ。早大との力の差は、ほぼゼロ。「精神的に強かったらもっと違う結果になっていたのかな」(工藤)。差はメンタル面だけだった。「気持ちや心の面って本当に大きいのだなと実感した。もっとああすればよかった、こうすればよかったって…。本当に悔しい」(山形)。チームを気丈に支えてきたキャプテン・山形も、この時ばかりは涙が止まらなかった。優勝大本命だったからこそ、試合を思い返せば思い返すほど悔しさが溢れた。
 女子部創部から4年。インカレでは少しずつ成績を上げていき、リーグ戦では10部から3部へ上がるなど部の土台を作り上げた4年生はこれで引退となる。試合に勝利しうれしかった時、練習がつらかった時。創部当初から「素を全て見せられる仲間」(川田)と笑顔も涙も分け合ってきたこのチームを離れることとなる。今年のインカレは敗れた。しかし、それ以上に「こんなにいいチームのキャプテンをやれてよかった」(山形)。かけがえのない仲間と共に駆け抜けた日々は何にも替え難いものとなったはずだ。
 残された下級生も落ち込んではいられない。4年生の思いを受け継いで「形ができていないから、これから」(成田)と早くも次なるステージへと目を向けた。悔しい思いをした分、女子部はもっと成長を見せるはずだ。彼女たちの戦いは終わらない。「明治のソフトテニス」を見せつける、その日まで。