涙の敗戦……3部降格が決定/関東大学リーグ2、3部入替戦

2011.07.25
 1人目は山本。表情から緊張がひしひしと感じられたが、会場に駆けつけた大勢の応援の前で一礼し、リングへと上がった。山本は1Rから持ち前のスピードを生かそうと足を動かしていく。序盤、左フックが決まりだし、優勢に試合を進めていった。だが、動き回る山本に対して相手は距離を詰めてくるようになり、ペースを握られる。相変わらず左は入り続けるが、カウンターで右フックをもらう場面もあり、やや苦戦気味で1Rを終える。山本はなかなか自分の距離でボクシングをすることができないが、相手の動きを見極め最後まで粘り強く戦った。結果は10.7-7で判定勝ち。大事な一戦の初戦を取り、見事1人目の重要な役目を果たした。

 続いて2人目には、この試合がチームとして最後のリングとなる友松主将が登場。これまで練習時間がなかなか取れず、今季のリーグ戦には出場機会がなかったが、4年生として、また主将として若いチームを引っ張ってきただけに、この大事な試合で意地の勝利が期待された。試合は相手が序盤から果敢に手数を出し、攻勢に出てくる。それに対し友松主将は冷静に対処。経験豊富な4年生らしくカウンター狙いの戦いで試合を進めた。だが2R目、徐々に受けたパンチが効いてスタミナが切れたのか、相手の攻撃をかわし切れない。3R目には左フックをもらう場面が多く見られ、苦戦を強いられる。終盤右ストレートが決まり、互角の内容でまとめたように見えたが7-10.3で判定負けという厳しい結果に。「もっと力を出せたと思う」と完全燃焼できなかった友松主将であったが最後まで戦う姿勢をチームに見せてくれた。

 まだまだどちらに流れが傾くか分からない3人目。ここで試合前「調子はバッチリ」と言っていた及川がリングへ。本人の言う通り、1R目から体のキレが抜群でフットワークが軽い。リーチのある相手をものともせずかき回し、自分のリズムを作る。終盤にパンチを1発もらうもダメージを感じさせない動きを見せた。2R目もコンビネーションからの右フック、ストレートが効果的に決まり、相手をダウンまであと一歩に追い詰める。結局、3R目もダウンは奪えなかったが、及川は勝利の手応えがあったのかリングサイドで笑みを浮かべた。結果は8.3-7.7の僅差での判定勝ちではあったが、内容は圧勝の一言だった。

 2勝1敗と勝ち越した明大。ここで勝利し、一気にリーチをかけたいところ。この4人目を任されたのは藤原。大柄な体格を生かし、うまく距離を取りながら試合を進める。しかし手数の多い相手に徐々に押され、パンチを受け始めると中盤にはダウンを取られ厳しい展開に。なんとか粘りを見せたいところだったが、再びダウンを喫し1回2分52秒RSC負け。相手を畳み掛けることはできなかった。

 ラスト3戦で2勝2敗のイーブンとなり迎える5人目、鳴海がリングへと上がった。6月11日の専大戦から約1カ月半ぶりのリングとなったが、アップの段階からブランクを感じさせない動きを見せていた。試合の方は1R目から激しい打ち合いに。流れが行ったり来たりする目まぐるしい展開となった。3R目に入っても両者のペースは落ちることなく試合を進め、勝負は判定へ。今後の流れを左右する一戦の結末は6.3-8.3の判定負け。「勝てる試合だった」と悔しさをにじませるように、リングを降りる鳴海の目には涙が浮かんでいた。

 大東大にリーチをかけられ、2部残留へ後がなくなった明大。責任重大な6人目を務めるのは前回の平成国際大戦で圧巻のKO劇を見せてくれた永田だ。試合は落ち着いた入りで始まった。しかし永田は相手の動きを完全に読み切っているかのような動きを見せ、振りが小さく鋭いパンチを繰り出しクリティカルヒットを連発する。そして1R中盤、左ストレートが決まりダウンを奪うとその瞬間、永田は喜びのあまりこん身のガッツポーズ。普段は口数の少ない永田だが、この試合に懸ける思いが伝わってくる場面だった。その後も2ダウン、計3ダウンを奪い見事1回RSC勝ち。プレッシャーのかかる場面で大仕事をやってのけた。

 そして最後の階級はウェルター級。ここまで3勝3敗、勝った方が2部という緊迫した展開に会場のボルテージも最高潮にまで達した。そんな大事なリングを任された小田は観客の期待、そしてチームの思いを一身に受けリングへと上がった。1R目、プレッシャーからか、互いに慎重な入りだしを見せる。先に相手が手を出してきたが、それに小田もコンビネーションなどで応戦する展開に。終盤やや押され気味になったが、互角の戦いで1R目を終える。続く2R目からは相手の手数が増え、小田は防戦一方になる。まだ硬さが取れず、ぎこちない動きにも見えた。中盤、サイドに追いやられラッシュをかけられるシーンも見られ、完全に相手ペースに持ち込まれてしまった。
 この試合最後のラウンドとなる3R目。このラウンドに全てを懸けた小田だったが、無念にも2ダウンを奪われ3回RSC負け。この瞬間、明大の3部降格が決まった。リングサイドで崩れ落ち、涙を隠すことができない小田はその後酒井(文3)に背中を押されながらリングを降りた。チームが引き揚げた後も小田はなかなか会場を去ることなく、最後まで残り続けた。

 試合後、控室で悲しみに暮れる選手たち。「4年生として何かを残してあげられなかった。悔しい」と友松主将は目を赤らめながら語った。しかし、悲しさだけではない。それ以上に得るものは大きかった。今季の明大ボクシング部の主力は1、2年生である。そのため、「1、2年生は良いものを持っている」(友松主将)というように、この経験、悔しさを糧に日々努力を重ねていけば、どこまでも成長し、強くなっていくだろう。「何かが足りない」。丹下監督が発したこの一言を探し求めることが成長への第一歩であることに違いない。

☆試合後のコメント☆
友松主将

「(試合前のチームは)リーグ戦5試合を終え、明治として久しぶりに入替戦とあって3部に落ちる恐怖とも戦いながら、2部残留を目標に持って練習していた。(試合後の率直な感想は)主将として2部優勝、1部昇格と言われ続けてきたが、全部できなかった。(主将として)何かを残すことができず、悔しい。試合ももっと力を出せたと思う。気持ちでも負け、チームとしても負けてしまった。(後輩へ一言)みんな良いものを持っていると思う。(4年生はチームとして最後なので)こうしろとは言えないが、(大学ボクシングは)チームで戦っているので、自分のことだけでなくチームのことを考えてやってほしい。そして今日の結果を、また悔しさを忘れないでやれば絶対に強くなる。4年生は何もできないが、来年成長した姿を見せてほしい」。

酒井
「悔しい。ケガをしてしまい何もできずに(3部に)落ちてしまったことが歯がゆい。自分がいる間に1部に昇格することを目標にやってきて、これで無理になってしまったが仕方ない。来年は(2部に昇格し)イーブンに戻したい」。

鳴海
「(自分の試合は)勝てる試合だった。3Rの始めはこれで最後だから気持ちで負けないで自分でも勝って、チームでも絶対に勝とうと思って臨んだ。そこで勝てば残留できたのに、自分のせいでみんなに迷惑をかけてしまった。来年は絶対に2部に上がりたい。もっと練習して後輩にも見せてあげたい」。

及川
「この日のために頑張っていたから悔しい。自分は勝ったが、チームは負けたので、うれしくない。来年絶対2部に上がれるよう頑張りたい」。

永田
「(自身の勝利について)絶対に勝つという気持ちが勝ちにつながったと思う。みんなで勝たないと駄目なので、この気持ちを忘れずにこれからもやっていきたい」。