(2)QB・WR・TE編

 アメフト特集企画第2弾。今回はQB(クォーターバック)とWR(ワイドレシーバー)・TE(タイトエンド)というパスプレーの際に活躍する3つのポジションにフォーカスする。

QB(クォーターバック)の役割
 一言で言い表すとするならばオフェンス陣の司令塔。フィールド・ゼネラル(フィールドの将軍)とも呼ばれる。近代スポーツの中で最も習得が難しいポジションの一つとされている。勝敗のカギを握る非常に重要なポジションであるため、オフェンスチームはQBのために動いていると言っても過言ではない。そもそも、OL(オフェンスライン)からボールをスナップされたQBがボールを出さないことにはゲームが始まらない。

 試合中の役割としては、まずプレーコールと呼ばれる次に行うプレーの決定や指示がある。プレーはサイドラインにいるコーチが指示するかQBが決めてハドル(円陣を組んでの作戦会議)で通知されるが、QBが相手の陣形を読んでスナップ直前にプレーコールを変えることもある(オーディブルという)。またOLからのスナップを受けた後、ランプレーを選択する場合はRB(ランニングバック)にボールを手渡しし、パスプレーを選択する場合は、時間を稼ぎタイミングを見計らってからWR(ワイドレシーバー)へパスを投げる。走力に自信のあるQBの場合、時には自らのキープラン(QBが自分でボールを持って前進すること)で得点を狙うこともある。

魅力・見どころ
 上記のようにQBは攻撃の際の司令塔。試合の流れを自らの手でつくっていくことができるため、花形のポジションであると言える。魅力としては、「自分が考えたプレーが得点につながるところにやりがいがある」(杉浦・文3)。またQBはその役割故に求められるものも多く、視野の広さ・相手の攻撃を読む力・判断力が必要。しかし、ただ能力が高いというよりは堅実なプレーやチームの信頼感を得ること、パスプレーではレシーバーとの意思疎通などがより大切であると言える。

WR(ワイドレシーバー)・TE(タイトエンド)の役割
 アメリカンフットボールはQBがボールを出さなければゲームが始まらない。そしてQBが一般的にパスを出すことができるポジションがWR(ワイドレシーバー)とTE(タイトエンド)だ。この二つを総称して単にレシーバーとも呼ばれる。ランプレーに比べパスプレーは確実性が劣るものの一気に大幅なゲインが見込めるため、たった一つのプレーでゲームの流れそのものを変えてしまうほどの力を持っている。それ故にロングパスは多くのアメフトファンをひきつけてやまない。

 WRの役割の第一としてはまずQBから投げられたパスを確実に捕球することにある。小回りが利いて捕球のうまい選手が起用されることが多かったが、近年ではそれらに加えて身長の高さが求められている。
 TEはWRの役割に加えてOLの一員でもあるため、相手のディフェンスからボール保持者を守ったり、QBがWRにパスするまで相手のディフェンスをブロックするという役割も持ち合わせている。各ポジションの専門性が高いアメリカンフットボールという競技の中では極めて異端な存在であると言える。それゆえに、プレーの幅が広く戦術の要であることは間違いない。相手ディフェンスをブロックするための体格、レシーバーとしての高さとパス捕球能力、そして何より高い戦術理解力が求められる。

魅力・見どころ
 前述の通り、パスプレーはランプレーに比べて成功率は低い。しかしながらランプレーよりも大幅なゲインが見込め、たった一つのプレーでゲームの流れが変わることもある。

 昨年度エースレシーバーとして活躍し、今年から臨時コーチに就任した安田錦之助コーチ(平23営卒)は「3rdダウン(3回目の攻撃)での働き。どれだけ動けるか、そしてどれだけパスターゲットになれるか」という点をレシーバーの見どころとして挙げている。仮に4回の攻撃権のうち2回目の攻撃が終了してあまり前進ができなかったとき、ファーストダウン獲得のために重要となるのがレシーバーへのパスプレーだ。

 TEは前述の通りパスの捕球に加え、相手ディフェンスのブロックも行うため見どころも多い。「ランプレーの際のTEのフェイントに特に注目して欲しい」(松本・商3)。ランプレーの多い明大グリフィンズの攻撃ではTEのフェイントも重要な役割を持つ。

今季のグリフィンズ
 まず明大八幡山合宿所の食中毒事件の影響で慶大ユニコーンズとのオープン戦が中止となり、プレシーズンの貴重な試合が中止になった影響に触れておきたい。一部リーグの他チームのレベル、そして現在のグリフィンズの完成度が分からないという状態は厳しいものがある。

 第1回でも触れたように、絶対的司令塔・田中蔵馬選手(平23政経卒・現三菱オールライオンズ)の卒業によるオフェンス面での戦力ダウンは大きいと予想される。そのため田中選手に代わるQBの出現は急務。杉浦、廣瀬(商1)の成長に期待が懸かるところだ。「今年のテーマはチームメンバーからの信頼を勝ち取ること」(杉浦)、「1からのスタート。まずは大学のスピードを体に染み込ませる」(廣瀬)と意気込んでいる。
 また同時にメインパスターゲットだった加藤雄哉氏(平23政経卒)、安田コーチなどの卒業の影響もありそうだ。伝統的に明大グリフィンズは「ランの明治」と呼ばれるほどガツガツとランプレー主体のオフェンスを見せることで有名だった。しかしながら、昨年から田中選手を中心にパスユニットの強化を開始。その結果として森野(営4)、鈴木(謙・法3)という2人のレシーバーが台頭した。今年度は森野、鈴木に加えRBの小谷田(政経2)がWRへと転向。「WRは高校の時に経験あるが不安な面が多い。自分は速さということをテーマにやっていきたい」(小谷田)。

 またパスユニットの再構築、OL陣のレギュラーの卒業もあり、今季のグリフィンズ攻撃におけるTEの重要性は大きい。パス・ランともに攻撃に大きく関わってくるポジションなだけに、経験を生かしたプレーに注目したい。

~注目選手~

・杉浦祐治(QB)
 昨年の秋季リーグ最終戦・早大ビッグベアーズ戦で負傷退場した田中選手の代わりに出場。今年度は「安定感・チームからの信頼を得ること」をテーマにプレーする。杉浦がオフェンスの柱になることができるかがグリフィンズの浮沈に関わる。「(4年間スターターだった)田中蔵馬さんと自分とでは経験値やチームの信頼感が違う。早大ビッグベアーズ戦ではチームのみんなに助けられながらなんとかプレーできた。(自分の持ち味は)強いて言えば頑丈さ」(杉浦)。頑丈さで信頼を勝ち取りたい。

・廣瀬湧基(QB)
 足立学園高から関東ベスト4の実績を引っ提げ入学。「高校と大学ではスピードが違う。まずはチームの戦力になれるように、そしてミスをしないようにしたい」(廣瀬)。杉浦を刺激する存在になれるか。

・森野健太郎(WR)
 昨年はシーズン通してレシーバーとして高い身体能力を発揮した。今年は最終学年ということもありクラッシュボウル出場、そして日本一に並々ならぬ思いがある。「QBの2人はまだ経験が少ない。QBを生かすも殺すも自分たちWR。グリフィンズらしく泥臭くやっていきたい」(森野)。

・鈴木謙人(WR)
 昨シーズンは当時のエースレシーバー・安田コーチに次ぐ働きを見せた。今年度は鈴木が師匠と仰ぐ安田コーチの背番号「1」を継承。高い身長と高校までの野球経験を生かした捕球能力は健在。不動のエースレシーバーとなれるか。

・小谷田雅哉(WR)
 昨シーズンは1年生ながらRBとして重要な局面での試合出場もあった。今年度はWRとして明大グリフィンズのオフェンスに色を加える。「自分の持つ力を120%出し切りたい。ロングパスをキャッチする」と意気込む。

・松本巧(TE)
 昨シーズンからTEとして定着。「自分は身体能力が高いわけではないので、自分の仕事を忠実にこなしていきたい。自分のプレーが勝ちにつながるように頑張りたい」(松本)。ランプレーでのフェイントに注目だ。

◆森野健太郎 もりのけんたろう 営4 早稲田係属早稲田渋谷シンガポール高出 181cm・75kg
◆杉浦祐治 すぎうらゆうじ 文3 駒場学園高出 174cm・80kg
◆鈴木謙人 すずきけんと  法3 明大中野高出 190cm・80kg
◆松本巧 まつもとたくみ 商3 明大明治高出 182cm・88kg
◆小谷田雅哉 こやたまさや 政経2 日大三高出 180cm・76kg
◆廣瀬湧基 ひろせゆうき 商1 足立学園高出 182cm・77kg

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