強すぎる 水谷(隼)、前人未到のシングルス5連覇達成!/全日本選手権

1999.01.01
 まさに異次元の強さだった。水谷(隼・政経3)が全日本選手権決勝で張(東京アート)を4ー0で下し、大会史上初の男子単5連覇を達成。昨日ダブルス決勝で敗れた丹羽(青森山田高)も準々決勝でストレートで下した。女子シングルス優勝の石川佳純(ミキハウスJSC)も「いつも(水谷(隼)の)試合を見て勉強させていただいています。優勝おめでとうございます」と祝福の声を贈った。
  

 史上初の5連覇を決め左拳を大きく天に突き上げた。それから高山監督と抱き合った。「年末からずっとやってきたことがこみ上げてきた」(水谷(隼))。優勝候補として追われる立場、連覇が途切れてしまったら、もう5連覇はできないだろうという重圧。大会前は「大会が早く終わってほしい」と思っていたと言う。試合後の優勝者インタビューでは、すべてが解放されたかのように口先は滑らかだった。「周りの人が自分の優勝を疑わない状況だったので、できるだけ簡単に優勝したかった。丹羽には昨日負けていたので、完膚(かんぷ)なきまでに倒したかった。(丹羽との試合が大会で)一番力を入れました(笑)」と会場の笑いもとり、自然と笑みが浮かんだ。
 勝ち上がる程に気持ちをあらわにした。絶対王者が1ポイント奪うごとにガッツポーズを見せ、大きく声を張り上げた。だが、感情が入っても冷静さが失わることはなかった。絶好調の張(東京アート)との対戦となった決勝の第2ゲーム。8―2とリードを奪いながら、8―8と追いつかれた。それでも全く動じることはなかった。張にリードを許さず、一気に試合の流れを呼びこんだ。「リードしてからが勝負だった。追いつかれて普通。落ち着いた精神状態で望めていた」。世界を知る男は大舞台での勝負のポイントを最初から理解していたかのように試合後言い放った。最後はフォアで強打を決め、終わってみれば4―0のストレート勝ち。決勝は接戦を想定して準備してきたと言うが、その想定も杞憂(きゆう)に終わるほどの圧勝劇だった。

 水谷(隼)の闘争心を駆り立てたのはリベンジへの強い気持ちだった。準々決勝では、昨日ダブルス決勝で敗れた丹羽と再戦。気持ち、勢いで完全に上回った。ダブルス5連覇を阻まれた相手を全く寄せ付けず4―0のストレート勝ち。昨日のリベンジを果たした。これで「丹羽と(最終日)最初にやれたのがよかった」と一気に波に乗った。準決勝では大会前に2回練習試合を行い、連敗を喫した高木和(東京アート)と対戦。大会直前2日前に行った練習試合でも破れた相手だった。それでも今日は壮絶なラリーを制しゲームカウント4―1で退けた。課題にしていたバックハンド、レシーブも冴えた。練習試合で負けていても、大一番ではしっかり勝ちきるのは絶対王者、世界ランク7位たるゆえん。「打ち合いを楽しめていたのでは」という記者の質問に「まさにその通りです」と水谷(隼)。全日本選手権の舞台で勝負を楽しむ余裕があった。
 
 来季の明大卓球部主将にも選ばれた。「(明大卓球部の)主将なんだということも見せたかった」(水谷(隼))。今日、水谷(隼)は日本最強の称号と共に新主将としてチームをプレーで引っ張ることも証明した。