吉田(賢)・明花が全日本4位で入賞/全日本障害大会
日本最高の舞台だけあって「簡単に出られる大会ではない」(吉田・学)。そう登録すれば誰でも出られるわけではないのだ。日本馬術連盟の公認競技会で好成績を残せば得られるランキングポイントの年間順位が60位以内でなければ出場資格が得られない。ただ、欠場が出た場合や頭数調整が行われた場合にのみ80位以内の人馬が補欠として出場できる可能性がある。学生馬術界では常勝軍団と呼ばれ、他大を圧倒している明大ですら、出場資格を得られない年もあるほどの困難な条件だ。しかし今年は補欠2頭を含めると6頭が出場資格を持っていた。この最大のチャンスに長田監督は「今年は勝てるかもしれないから出す」と出場を決意。「明治の強さを見せつける」(長田監督)、「一番大きい大会だからこそここで上のほうに行きたい」(齋藤)と気合十分で大会に挑んだ。
試合会場は大阪。人馬は約8時間トラックに揺られた。ただでさえ普段の学生大会よりも相手が格段に手ごわくなる今大会だが、馬にとってあまり経験のない長距離輸送というハンデもあった。しかし、人馬ともに果敢に戦った。予選第一戦では本間と明峯、吉田(賢)と明花がそれぞれ4位、6位と好成績を収める。予選第二戦はスピードアンドハンディネスという速い走行タイムが求められる競技形式。ベテラン勢の壁は厚く、最高でも吉田(賢)と明花の25位に終わった。この二つの予選の総合成績の上位半分が決勝に進める。68人馬のうち34人馬がふるいにかけられてしまう。そんな中、明大から出場した5人馬は3人馬が決勝に進出した。同大会に出場していた明大OBの西脇文泰選手(平21卒・現JRA)も「3人も決勝に残るのは偉い」と絶賛。明治の強さは存分に見せつけることができた。
だが、この程度で終わらないからこそ、明大馬術部は学生王者であり続けることができる。迎えた決勝では吉田(賢)と明花が大奮闘。このコンビは決勝に進出した34人馬中8人馬しか達成し得なかった減点0で走行を終えた。そして、最小減点者が複数出た場合、優勝者を決めるためにもう一度走行を行うジャンプオフに進出を決めた。「割と冷静にいけた」(吉田・賢)と安定して障害を飛越していく人馬。一つだけ障害を落としてしまい、減点4、走行タイム38.72で走行を終えた。結果は4位。わずか0.83秒差で表彰台を逃した。だが「立派だった」(長田監督)。表彰式、金、銀、銅と西日を浴びてきらめくメダルが吉田(賢)首にかけられることはなかった。ただ、頭絡に付けられた入賞人馬の証である白いリボンは女の子である明花には良く似合っていた。「明花が頑張ってくれた。僕というより、馬のための表彰式だった」と感謝する吉田(賢)。表彰式会場を後にするとき、そっと明花の首筋を撫でた。
「全日本で4位。普通ならここまでこられない」(長田監督)。という最大級の賛辞とは反対に、その表情に笑みはなかった。選手に高いレベルを要求する長田監督。そのレベルに達していないときはいかに結果が良くとも選手を叱咤してきた。今大会の選手たちの見せたパフォーマンスはもしかしたら長田監督の求めるレベル以上のものだったのかもしれない。派手に喜ぶことはしないが、「ここまで成長したか・・・」とむしろ静かに深く喜びを噛み締めていたように見えた。「いい結果が取れた。サポートしてくれた人と馬にありがとう」と吉田(賢)も納得の結果。これで日本で四番目に強い人馬になった。もう学生一を目指している場合ではないだろう。吉田(賢)と明花だけではない。本間は関係者から「1年生頑張っているね」と高評価だった。「シニアに交じっても見劣りしない」(西脇文泰選手)、「うまいからこれくらいは当然」(大川尚樹選手・平22政経卒・現乗馬クラブクレインオリンピックパーク)と部員全員が実力を認められている。そうみな日本一を狙ってもおかしくない。日本一の人馬が明大馬術部にいる。そんな日が来るのはもうすぐだ。
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