障害制して17連覇達成!/全日本学生三大大会

2013.09.18
 東京六大学馬術大会の30連覇に始まり、争覇戦2連覇、関東インカレでの個人・団体3種目完全制覇、全日本ジュニア3種目制覇と、今年は常勝軍団と呼ばれるにふさわしい圧倒的な成績を残してきた明大馬術部。最高のシーズンを気持ちよく締めくくるため、今年最後の団体戦にして、馬術部最大の目標である全日本インカレに挑んだ。

 初日は障害飛越競技の第1回走行。この競技は4年連続2位と後一歩のところで表彰台の頂点を逃してきた。それだけに、常勝の名にかけてなんとしても1位になりたいところだ。並ならぬ気持ちでこの競技に臨む明大のライバルは、今年もやはり関西大。この種目は水物で、他の競技に比べて運の要素も大きく絡むが、3年連続で関西大が1位。高い実力をもって運の入る余地を与えないそのさまは、まさに障害飛越競技の王者と言っても良いだろう。そんな王者関西大の一番手は障害を二つ落下させて、減点8で走行を終えた。対する明大1番手の西脇(政経2)と明登。関西大よりも良い成績で走行を終えたいところだったが、このコンビの成績は関西大一番手と同減点の8。主要な大学の一番手が走り終えた時点で、暫定1位は、最近上昇中の早大と強豪日大で減点は4。明大、関西大はその下につけた。

 早大、関西大、日大の2番手がそれぞれ減点15、18、10と障害を複数落としていく中、明大2番手の荒木主将(商4)と明峯のコンビが安定した走行を見せた。大会前に疝痛という腹の病に侵された明峯。荒木主将は早期回復のために寝ずに看病を続けた。ベストコンディションとは言いがたい人馬だが、一歩も引けを取らず、水郷障害に引っかかるだけに留まり減点4。荒木主将らの意地の走りによって暫定順位の一番上に張り出される明大の名。一歩リードする明大だが、関西大はここからの走行が素晴らしかった。3番手は学生馬術界に名を轟かせる関西大看板馬のバーデン・バーデン。走行中、会場のさまざまなところで「すごい」、「落としそうにない」と賞賛が上がる。極めつけは荒木主将も引っかかった水郷障害での飛越。うまく跳躍できずに前脚が障害にかかりそうになるも、まだ地面に残っていた後脚で踏ん張り、ぎりぎりで障害を飛び越す。絶対に負けたくないという王者の執念が馬に乗り移ったかのようだった。この飛越に会場からは感嘆の声。その後は難なくこなして減点0。明大三番手の吉田(賢・政経3)と明花が減点8だったため、差を縮められてしまう。

 三番手の走行が終わった時点で、明大は減点8、4、8の合計20点。関西大は8、18、0で合計26点。その差は6点。まだまだ勝負はわからない。
 関西大最後の選手は減点8。この競技は各学校最大4人選手が出場する中で上位3名の成績が団体の成績になるため、関大の第1回走行の総減点は減点16。明大最後の齋藤(政経3)と明菓のコンビは減点4で走行を終えた。明大の総減点は16。関大に並ばれた。また、意外にも帯畜大が健闘を見せ、減点16と優勝候補の2校と同減点。初日は三校が1位に並ぶという混戦で幕を閉じた。

 二日目の障害飛越競技の第2回走行。西脇、吉田(賢)が減点8、関西大の二人が減点4、8と2番手の選手が終わるころには逆転を許してしまう。関西大三番手は減点4で走行を終えた。96の人馬が出場し、52人馬が完走できずに失格してしまう難コースだけに減点4という数字は非常に優秀な数字だ。もう後がない。3番手荒木主将が前日に続き再び意地を見せる。減点4と、関西大に離されずになんとか喰らいつくことに成功。そして、勝負が決まる関西大4番手のバーデン・バーデン。ここでまさかの減点12。前日は感嘆と賞賛で会場を満たした人馬が、この日は悲鳴を上げさせた。再び明大にチャンスが回ってきた。ただ、チャンスと言っても求められる数字は減点0の満点。簡単なものではなかった。

 勝負を決める舞台というのは、なぜかそれにふさわしい者に回ってくるものらしい。馬術界の誰もが認める明大のエース齋藤と明菓のコンビは一つも障害を落とせないというプレッシャーの中、走行を始める。静まり返る場内。一つ、二つ、三つと次々に障害を飛越していく人馬。そして、静かな場内に明菓の脚が障害に触れる音が響いた。落としたか、いや落ちない。障害は揺れたものの地面に落下することはなかった。そして落下なしで迎えた最終障害。会場の全ての視線が齋藤と明菓に注がれる。齋藤と明菓が障害を飛び越した。障害に触れることなく。満点しか許されない舞台でこの人馬は満点で走行を終える。会場に響く拍手の大きさがこの人馬の走行の素晴らしさを物語っていた。最終減点は明大28点、関大が32点。障害一落下のわずかな差を制し、明大は5年ぶりに障害飛越競技で1位となった。

 2種目は馬場馬術競技。久々の障害飛越競技で1位となり勢いにのる明大は「馬場の明治」と呼ばれるくらい得意の種目で、いかんなく実力を発揮した。出場人馬4人が1、2、4、9位と上位を独占し、当然のように団体1位。この種目の大会に出場すれば、当たり前のように優勝してしまう柘植前主将が引退した今年、戦力低下は否めなかった。関東インカレ直前では今年は馬場の調子が良くない、勝てないかもしれないとまでささやかれていた。ふたを開けてみれば、関東インカレでは金銀銅の3色のメダルが明大の選手のものとなり、全日本の舞台でもやはり「馬場の明治」が席巻。勝利という伝統を確かに守った。

 最終種目である総合馬術競技。ここまで2種目とも1位である明大には、3種目全て1位という記録がかかっていた。この記録は野球に例えるなら完全試合。めったに見られない大記録達成の瞬間を待ち望んでいたものも少なくないだろう。しかし、調教審査で日大に遅れを取ると、耐久審査でも挽回できず、いよいよ最後の余力審査へ。暫定1位日大と2位明大の差は障害二落下分の6.8点。余力審査では日大、明大ともに障害を落としていき、試合はシーソーゲームになった。だが、最後は力尽き、日大がこの種目で1位。明大の3種目全て1位という快挙は達成されずに終わってしまった。それでも3種目それぞれで1、1、2位。3種目総合優勝を果たし、無事17連覇を達成した。

 「中身だな。内容が悪い」。長田監督は開口一番にそう言った。また選手も「内容的には満足できる競技は一つもなかった」(西脇)と暗い顔。結果オーライという言葉は馬術部には存在しない。特に今年の馬術部はここまでパーフェクトな結果を残してきた。それだけに最後のこの大会もパーフェクトな結果での優勝を狙っていたのだ。「大事なところで決められないのが実力。大きな忘れ物をしてしまった。もう二度とこんな思いはしたくない」(吉田(学)・政経3)と来年こそは完全制覇を達成させるべく、もう明大馬術部は動き始めている。最後の一大会の一つの種目で2位となってしまったが、今年の明大馬術部の強さは、常勝軍史上トップクラスだったことは疑いようがない。だが、そんな馬術部でも、出場する大会全てで1位という夢のような記録は達成できず、夢で終わってしまった。来年こそは夢を現実にしてほしい。他大からしたら一回でも優勝することが夢である全日本インカレを17連覇もしているのだから、きっとできるはずだ。

[海保吏]