山本、3年連続の全日本出場へ/全日本学生選手権

1999.01.01
山本、3年連続の全日本出場へ/全日本学生選手権

 全日本学生選手権。日本中の選ばれた学生だけが集う今大会にて、一人ずば抜けた存在感を放つ選手がいた。山本千尋である。本学から唯一の出場でありながら、今大会のパンフレットの表紙に選ばれ、また多くの参加者の中から代表で開会式での選手宣誓も任されたのだ。選ばれた者の中でもほんの一握りの選手にしか経験できない、実に名誉深いことである。それだけの周囲からの期待を背負って今回の舞台に立った山本。自身にとって満足しきれる結果ではなかったが、昨年よりも順位を上げ3年連続の全日本への切符獲得を成し遂げた。

【1日目】
 最初に行われた種目はロープ。山本は赤と黒を基調とした衣装をまとい、アップテンポのかっこいい曲に合わせて演技を披露した。「クールな気持ちで臨むことができず、雑念が出てしまった」と序盤は動きに固さが見えてしまう。回転がよろけてしまったり、器具が乱れてしまったりとぎこちなさがあったものの、大きなミスをすることなくフィニッシュへ。次のフープでは、不思議な曲調にのって静と動が対極的に描かれたような舞いを見せた。終始落ち着きをもって演じていたように思えたが、本来やるべき技を回避してしまったりと「100%の力は出し切れていない」。
 「ミスを大きなものにつなげないように動くことはできたが、よくなかった点が目立ってしまった1日だった」と山本は前半2種目を語った。これまでに1日1日のスケジュールを自分でたて、東日本インカレのときよりもぐっと密な練習の調整を行ってきた山本。そこから得た「自分の力を信じ、本来の自分の演技を発揮できるように」と2日目に挑む。

【2日目】
 2日目は個人総合の後半2種目、ボールとリボンが行われた。
 ボールでは黒の衣装を身にまとい、ピアノとバイオリンのしっとりとした曲に合わせて「優雅で凛とした女性」を表現。しかし、「硬さが出て、本来の演技を出し切れなかった」と最後にボールを落とすミスを犯してしまう。このミスで「気持ちが沈みかけてしまった」と山本。それでも、次のリボンではボールのミスを引きずることなく「クリアな気持ちで演技に臨むことができた」とタンゴ調の曲に乗った情熱的な演技で観客を沸かせた。最終順位を9位で、3年連続の全日本出場を決めた。

【3日目】
 3日目は種目別の決勝。1、2日目の個人総合で各種目上位8名に入った選手たちだけが出場できる舞台だ。今大会、「4種目すべて決勝に進む」ことを目標の一つに掲げていた山本。その言葉通り、見事全種目で決勝進出を果たした。前半2種目のロープとフープは「今季で一番」と自身も納得の出来。3種目のボールでは中盤にミスが出たものの、その後は着実に技をこなした。
 そして迎えた最終種目のリボン。1日で4種目全てを行う種目別では、最終種目ともなると選手たちの体力もメンタルも限界に近い。しかし、そのなかでも山本は誰よりも早くから体育館に出て最終調整に励んでいた。
 「倒れてもいい。疲れよりもやりたいという気持ちが勝っていた」。山本を突き動かしたのは、ただ「演技をしたい」という思い。ひとり黙々と練習する姿に山本のメンタル的な強さがあらわれていた。
 そして本番、圧倒的な表現力で一気に会場を引き込んでいく。力強く、そして華麗に。
 最後まで大きなミスなく演じきり、4種目のなかで自身最高の5位入賞。確かな成長を見せた演技に大きな拍手が送られた。

 3日間にわたっておこなわれた今大会。終了直後、部員に囲まれながら涙を流す山本の姿があった。  「(大会が終わったことで)はりつめていたものがなくなって、ほっとした」という。1分半という本当に短い限られた時間の中で全てを出し切らなくてはいけない新体操の演技は、常人では想像もつかないほどの緊張感や体力、精神力との戦いなのだ。

 今大会を振り返り、「自分の演技をしたいという欲を出すことはいいことだが、それが空回りしてしまった」と悔しさをにじませた山本。いざ本番になったときに「無心」で演技することの難しさ、また、その中で無難にまとめあげるのではなく思いきり表現することの大切さを噛みしめた。しかしその一方で、「ミスに左右されない強い気持ち」をもって大会に挑むことができたという大きな収穫も。今回得た課題も成長も全てを次へのステップに生かし、山本はさらなる高みを目指していく。

 いざ、全日本へ。