4年生、競技生活の集大成/全日本学生選手権

1999.01.01
 学生日本一を決める大会。男子は2年間主将としてチームを支えた織田主将(文4)、女子は大学から競技を始め試合ごとに成長を遂げてきた小林(営4)、2人の4年生が競技人生の集大成として試合に挑んだ。


【男子】
 「織田さん、がんばー」
体育館に何度も何度も響く「頑張れ」の掛け声。その声援を受けて織田主将の演技が始まった。男子団体の最終種目、平行棒の最後の演技者。チームメートたちが見守るなか、次々と技を決めていく。5月の東インカレから難度を上げたという降り技まで大きなミスなくまとめると、笑顔でインカレ最後の演技を締めくくった。着地の瞬間、「織田さん、ありがとうございました」と観客席から次々と織田主将をねぎらう声があがった。
明治の体操部で過ごした4年間。4年生がいなかったため、3年生の時から主将としてチームを引っ張ってきた織田主将。「これまで体操をやってきたバックグラウンドもそれぞれ違う。全部同じことを求めるのは難しい」。そんな個性的な部員たちをまとめてきた2年間を「楽しかったこと、しんどかったこと、全部が良い思い出」と振り返る。
 この大会で主将は3年生に引き継がれるが、選手として引退はせず11月のしもつき杯には出場する意向。「選手としてやりたいことがいっぱいある」。織田主将の挑戦はまだ終わらない。
織田主将以外の団体メンバーは全員が1、2年生という若いチーム。下級生たちも演技で織田主将を盛り立てた。初のインカレ出場となった1年生の下川(商1)。ゆかではチームの最終演技者として堂々の演技を見せた。あん馬では2度の落下があったが、それも技を増やして挑んだ結果。失敗をバネに、これからの飛躍を期待したい。同じく1年生の湯浅(営1)と佐藤(政経1)も、東インカレからの成長を感じさせた。「東インカレはボロボロだった。今回は失敗したくないという思いがあった」(湯浅)と1種目目は緊張からミスがあったものの、その後は自身も納得の演技。また、佐藤はつり輪やあん馬などで長身を生かした、美しい演技を見せた。あん馬では種目別の決勝に進出、安定した演技で見事に3位入賞を果たした。だが、目標だった個人総合での決勝進出がかなわなかっただけに、悔いの残る試合ともなった。2年生の藤井(農2)は跳馬で新しい技に挑戦。今回は着地の際に転んで手をついてしまったが、練習を積んで完成度を高めれば、新技も大きな武器となるはずだ。また、飯田(政経2)も平行棒でミスがあった以外は安定した演技でチームを支えた。
 一方で今回、団体のメンバーには入らなかったものの、1年生の古本(商1)が個人総合の予選に出場。「全国規模の大会は初めてで緊張したけれど、同じ班でまわった他大の方が親切で…」と緊張のなかでも試合を楽しめた様子。苦手の鉄棒では離れ技を決め、着地もまとめたが、ゆかでのラインオーバーなどミスも見られ、今大会は「不完全燃焼」。今後の課題は「着地をしっかりすることと技を増やすこと」だ。これから行われる新人戦での新しい演技構成に期待がかかる。
 「みんなに盛り上げてもらって演技できた。支えられて試合をやっているという感覚があった」(織田主将)。最後のインカレに臨んだ織田主将を演技で、応援で支えたチームメート。他のどの大学にも負けないくらいの大きな声援がチームの団結を物語っていた。

【女子】
 「演技が終わって泣けるっていいなって思いました」。
4年間の集大成を見せ、笑顔で小林はそう語った。最終種目ゆかの演技。最後のポーズをばっちり決めた直後、「(4年間の体操部生活が)終わったよ」という意味を込めてサポートとして一緒についてくれていた同期である岡部(文4)を真っ先に見つめた小林。その目に映ったものは、彼女の涙であった。「1年生からずっと一緒にやってきたという思いから泣いてしまいました」(岡部)。そんな同期の姿を見て、小林も感動のあまり号泣してしまったという。
 「激変の4年間でした」。体操部での日々を小林はそう振り返る。大学から体操を始め、今までと全く違う環境へ挑むこととなった。その中で活動していくにあたってぶつかった壁は数え切れないほど。最初はたくさんいた同期もだんだん減ってしまい、気づけば選手として活動しているのは織田主将と自分の2人という状況に。20人以上もいる部員をまとめるにはあまりにも少ない数である。選手としてありながら、部の主務として、そして部のトップとして活動していかなくてはならない。それでも小林は諦めなかった。4年間くじけることなく部を支え続け、「応援が充実したり、岡部のようなコーチがついてくれるようになった。部にとってそれは本当に大きいこと」と明治大学体操部の発展にどんどん貢献し続けた。
 「しんどいこともぶつかったこともあったけど、最後にこうやって泣けるということは幸せなことだと思うんです」。小林の中で体操部での4年間は、彼女にとって誇り高き4年間としていつまでも刻みこまれる。

 「ミスはそれぞれあったけど練習も意識もほかの大会とは比べ物にならないくらいみんな頑張ってきた。すごくいい試合だったと思う」。今大会において決して欠かすことのできなかったキーパーソンは、チームのサポートに徹した岡部である。すでに競技引退をしている彼女。しかし、チームを全日本へ導くために東インカレでは自らの強い決意により復帰。そして今回はコーチとして1ヶ月間チームを支え続けてきた。試合中も演技前の選手たちにアドバイスを送り、また、演技を終えた選手には笑顔で声を掛ける。常にチームと一緒に行動を共にし、自分のことのようにチームを見ている岡部。彼女の姿がチームにとって大きな励みになっていたことは言うまでもない。
 ユニバーシアード日本代表を2回経験、ほかにもNHK杯や全日本個人で活躍など多くの輝かしい実績をもつ岡部。今までずっと日本のトップに立ち、個人の成績ばかりを追い求めてきたという。しかし、4年生になってから「誰かのために、チームのために頑張るという意味を学ぶことができた。そういう体操を知ることができた」と明治大学体操部でしか得ることのできなかったものを彼女は見つけた。それはきっと岡部にとって、これからもかけがえのない財産となるのであろう。「チームのために」。その一心で動く彼女の姿はどんなときよりも輝いていたのだから。

 今大会を機に4年生が引退し、代替わりをするチーム。今、女子団体メンバーは小林を除くと1・2年生で構成されている。チーム最高得点をたたき出し、みんなをけん引した信藤(文2)。今大会で東インカレよりも技のレベルを上げ、得点を伸ばした脇山(営2)。今まで以上に練習から技を積極的に取り組むようになり、メンタル面を強くできた鈴木(政経1)。全日本で緊張する中、ノーミスで挑むと大きく演技できた庭田(文1)。それぞれがこの全日本という大きな舞台で成長を実感し、さらに上を目指す糧を手にいれた。彼女たちが今後どんな女子団体の未来をつくっていくのかが楽しみである。

 試合後、自然と4年生を囲む輪ができた。そして織田主将の胴上げ。「1年ごとの思い出が蘇ってきた」という織田主将の目には涙が。チームみんなが涙で、でも晴れやかな笑顔で写真を撮り合う姿があった。4年生からバトンを受け取った3年生はインカレ後いよいよ部の中心となる。チームを引っ張る上級生、今シーズン様々な経験を積んできた下級生、チーム一丸となってさらなる高みを目指す。新生明治大学体操部の活躍に期待したい。