5人のスケーターが日本一大きな舞台へ!それぞれ見せた笑顔と涙/全日本選手権
シニア男子には、鳥居主将と佐々木の2人が出場した。鳥居主将、佐々木ともに2年ぶりの全日本出場。だが、大きな期待とともに臨んだショートプログラムで両者の明暗ははっきり分かれた。
今年限りでの引退を決めている鳥居主将にとって、今回は文字通り“最後の全日本”だった。フィギュアスケーターなら誰もが憧れる日本最高の大会、その夢舞台に昨年は出場することすらかなわなかった。1年越しの思いを胸に立った、夢舞台。だが、待っていたのは無念の結果だった。転倒などの大きなミスこそなかったものの細かい減点が響き、42.69点と点数が伸びない。順位も28位と上位進出はかなわず、上位24名のみが進出できるフリースケーティングのリンクに立つことはできなかった。
一方のルーキー・佐々木にとっても、苦しいショートプログラムとなった。理由は滑走順。抽選の結果、佐々木はなんと優勝候補筆頭の高橋大輔選手(関大)の次に滑ることになった。高得点が出ることはある程度予想していたというものの、それを上回る92.85点という高い得点に「思わず“えぇっ?!”って振り返っちゃいました」。会場のどよめきがなかなか収まらないまま、自分の出番が訪れた。「死ぬほど緊張した。普段はこんなことないのにっていうぐらい足はガクガクするし、つまづいちゃったりもして……」。極度の緊張から、冒頭のルッツジャンプで転倒。しかし次第に落ち着きを取り戻しスピン、ジャンプと着実に要素をこなすと、得意のステップでは大きな手拍子も起こった。減点1こそあったものの、59.15点でショートプログラム12位。好位置につけ、フリースケーティング進出を決めた。
迎えたフリーでは、佐々木本来の伸びやかなスケーティングで観客を大いに魅了した。「演技の最初からお客さんに手拍子をしてもらえて、すごく心強かった。2年前のように会場を沸かせることもできたし、とにかく本当に楽しかった」。順位を3つ上げ、総合で9位。思わず笑顔もこぼれた。「今年の全日本はすごくレベルが高くて、負けてられないなと思った。世界と戦える選手の枠に自分も入りたい」。新たに見つけた目標と充実感を胸に、佐々木の全日本は幕を閉じた。
シニア女子には、萩原、石川、高山が出場。それぞれかなりの実力を誇る選手であり、今大会でも好成績を期待されていた。しかし結果は満足のいくものではなく、滑り終わった彼女たちに笑顔はなかった。
「1番大きい舞台で1番いい演技をしたい」(石川)。2009年は数々の大会で優勝したり、急きょNHK杯への出場を果たしたりと大活躍だった彼女。しかし、今大会ではジャンプの不調が響き、まさかのショート落ちとなってしまった。ずっと憧れであり、目標としていた最終グループ入りを本格的に狙っていただけに、とても残念な結果である。しかし、ここで終わるような選手ではない。次の舞台では、今大会で見つけた課題を克服しさらに成長した石川の姿があるだろう。
「最後の全日本で思い入れも強い。笑顔で終われたら結果もついてくるはず」と意気込み、全日本を迎えた萩原。審査員にあえて背を向け、後ろ姿で魅せる大人らしい演技で氷上を舞った。安定したスケーティングを披露するが、ジャンプの得点が伸びず総合22位という結果に。リンクから降りた彼女にあったものは涙。納得のいくかたちで今大会を終えることができなかった。悔しそうな表情で自身のスコアをじっと見つめる彼女はいったい何を思っていたのだろうか。今シーズンで引退を決めている萩原にとって、次のインカレが自身最後の舞台。今大会での悔しさをばねにし、次こそは満面の笑みを見せてくれるに違いない。「絶対に女子団体優勝」という彼女の長年の目標を果たし、有終の美を飾ってほしい。
10位という輝かしい成績でショートプログラムを折り返した高山。続くフリープログラムでは、前半落ち着いた演技で順調に滑り出したが中盤のジャンプの転倒から流れが崩れてしまう。何とか立て直そうとするが、ラスト2つのジャンプであるサルコウとアクセルがどちらもシングルに。結果、総合17位。演技後、「ショートで終わってしまい、フリーにつなげることができなかった。体力不足が原因。納得いく結果ではない。(自分の演技に点数をつけるとしたら)今日は30点」と高山は自分に対して厳しい評価を出した。しかしその一方で「思った以上に緊張で固くなるということはなかった。そこは変化した部分だと思う」と自身の成長を実感するコメントも。次のインカレでは「個人としても総合としても優勝したい」と頼もしく語った。
「この日のために1年間頑張ってきた」。選手たちは皆、そう声をそろえる。全日本選手権はスケーターたちにとってそれだけ大きな意味をもつ大会なのだ。最高峰の舞台で自分のスケートを見事滑り切った明治の5人の選手たち。笑顔で終わった者も、涙で終わった者も結果はそれぞれだが、今大会で得たものは確実に彼らの成長につながるだろう。次の舞台は1月に行われるインカレ。特に女子は去年までとは違い、3人の出場枠を満たしているため総合優勝への期待も大きくかかっている。今大会でつかんだ自信と課題をさらなる飛躍につなげ、一回り成長した彼らの姿を見せてほしい。
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