(6)勝っても負けても、やっぱり伝統の早明戦

(6)勝っても負けても、やっぱり伝統の早明戦
 下馬評では早稲田の圧倒的優勢だった。昨年の明治は24年ぶりの大学選手権不出場、そして史上初の対抗戦負け越し。それに加え前年の7-71という早稲田への歴史的大敗。すべての指針が早稲田の優勢を指し、誰もがその勝利を疑わなかった。その中に、わたしたち明治サイドの人間が含まれていたのは、お恥ずかしい話だが。

 ◆今年最も下馬評が低かったであろう男がニューヨークにいる。シーズン直前の松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース所属)の評価は決して高くはなかった。シーズン中のトレード、引退…。さまざまな憶測がニューヨークを飛び交い、現にケガに苦しむ松井は、シーズン序盤、結果を残すことができない。その弱々しい打球に、松井不要論はますます加速していく。

 ◆しかし、そこから松井の怒涛(どとう)の巻き返しが始まる。シーズン序盤の不調が嘘だったかのように、松井のバットから次々と力強い打球が生まれていく。終わってみれば、近年では最高の成績を残し、ヤンキースの地区優勝にも貢献。ワールドシリーズでの大爆発、そして日本人初のMVP獲得は記憶に新しい。下馬評を覆した松井は、わたしたちに大きな感動、そして希望を与えてくれた。

 ◆昨年の早明戦、結果は24-22。良くも悪くもわたしたちの予想を大きく裏切るものとなった。期待していなかったと言えば悪い気もするが、誰もが負けを確信していただけに、その興奮たるやひとしおだった。勝負も人生も、ふたを開けてみなければわからない。今年の早明戦、勝敗はいかに。