(1)ケガ乗り越え、夢の府立へ・宮下

1999.01.01
(1)ケガ乗り越え、夢の府立へ・宮下
 来る11月29日、尾川体制の集大成である団体インカレがいよいよやってきます。4年生にとって、この大会は最後の戦いです。選手の4年間を回想すると共にこの大会に懸ける思いに迫ります。
 

 「おれ、毎年のように骨折してるんだよね……」。足首を2度、拳は3度の骨折に見舞われた。宮下洋輔(文4)は常にケガに苦しんできた。

 決して体が弱いわけではない。身長182㎝、体重85㎏。中学、高校時代はバスケットボールに勤しんだ。拳法では、その恵まれた体格を生かした組技が武器だ。相手の突きを外し、組み伏せる。自分のスタイルを見失っていた時期の牧コーチからのアドバイスが、この組技主体のスタイルを確立させた。突きも蹴りもどちらかといえば不得手。だからこそ一度組んだら絶対に離さない。「泥臭くてもいい」。勝利に飢えていた。
 
 その向上心とは裏腹に宮下にはいつも不運が付きまとっていた。要所でのケガが誰よりも目立った。描き始めた成長曲線は故障により何度も尻下がりに。着々と力を付けていく同期たち。彼らが試合で活躍する姿を、ただ黙って見ていることしかできなかった。
  

kennpo11223

 気付けばもう4年生。決してチームの軸ではない。それでも、ケガと上手く付き合って、やっとの思いでレギュラーの座を勝ち取った。だが、「チームの勝利に貢献できていないのが何より辛い」。個人戦、団体戦の戦績は共に振るわない。直近の個人戦では1回戦で負けてしまった。それだけにこの最後の試合、チームが一丸となって臨む府立の団体戦では勝利に貢献したい――。並々ならぬ思いがある。
 
 あの時の感動が忘れられない。サポート役に撤していた1年次の府立。府立に流れた優勝の校歌が、みんなで分かち合った喜びが、3連覇を成し遂げた強い明治が。今でもハイライトとして脳裏に焼き付いている。「おれもいつかはプレイヤーとして……」。それがすべての原動力だった。

 夢に見た最初で最後の府立。いよいよ宮下が拳を振るう。3年ぶりの王座戴冠とともに、あのときの感動をもう一度噛み締めてほしい。ケガに満ちた日々のすべてが報われるように。

◆宮下洋輔 みやしたようすけ 文4 薬円台高出 182㎝・85㎏