まざまざと見せつけられた実力の差…帝京大に力なく完封負け/関東大学対抗戦

1999.01.01
 「56-0。これが現実ですね……」(吉田監督)。試合後の会見で力なく語る指揮官の表情は今の明治の状態そのものだった。02年の早稲田戦以来、実に7年ぶりとなる完封負け。昨年度の対抗戦覇者・帝京大にまざまざと力の差を見せつけられた明治は、最終戦である早稲田戦に不安を抱えたまま臨むことになった。

 「帝京はコンタクトが強いチームなので今日の試合では1対1で勝つこととブレイクダウンで圧倒することをチームで意識していこうとした」(伊吹ゲームキャプテン・政経4)。その強い気持ちが通じてか序盤は強力FW要する帝京と互角の勝負。特にスクラムではターンオーバーをするなど、やや明治に歩があった。前半14分両者激しい攻防の中、ペナルティで訪れた最初のチャンス。ここでPGを狙っていったが、SO田村(文3)が蹴ったボールは惜しくもバーに弾かれ先制点ならず。3分後にもハーフウェイライン付近から果敢にPGを狙いに行ったがまたしてもゴールはならなかった。

 流れをつかみたい明治であったが、ここでまたしてもラインアウトの精度の低さが露呈。「前半ラインアウトの精度が上がらず、波に乗っていけなかった」(吉田監督)。敵陣に攻め入っても、キャッチすることのできないラインアウトで再三チャンスをつぶし続け、次第に帝京ペースに。

 そして前半24分、必死にしのいできた帝京の攻撃を止め切れずモールからゲインを許した後、最後は左に展開され先制点となるトライを奪われる。続いて4分後、ヤンボールラインアウトから展開され、相手WTB伊藤が力強く右隅を突破しトライ。ラインアウトからの攻撃がうまくいかない明治をしり目に、いとも簡単にトライに結びつける帝京。ここからじわじわと力の差が浮き彫りになっていく。その後、PGとトライを追加した帝京が22―0と大きく明治をリードして前半を折り返した。


 後半何としても巻き返したい明治であったが、前半に増して帝京の攻撃が勢いづく。後半10分、帝京はFWの連続攻撃でゲインを重ねゴールに迫ると最後はLOツィがチャージでボールを奪いそのままトライ。「後半気持ちが切れてしまうところがあった」(伊吹)と早くも後半攻勢に出たい明治の気持ちの芽を摘み取った。その8分後、明治陣ゴール前でスクラム選択をした帝京はサイド攻撃で追加点を挙げる。その後もセットプレーで完全に主導権を握られた明治は為す術なし。後半6人の選手を入れ替え一矢報いたい明治だったが、結局最後まで1点も奪えずシャットアウト負け。9トライを奪われ、50点以上の大差をつけられての完敗だった。

 26-21。今年の夏に行った練習試合で帝京に競り勝った明治。それから約3ヶ月。誰がこのような試合を予想しただろうか。今日の試合で明治のラインアウトのクリーンキャッチは0。さすがにこれでは優位に戦えるわけがない。「もう自分たちが弱いということを自覚しなければならない。練習通りやればいいと言っている場合ではない」(榎・政経1)。3連敗で迎えることになってしまった早明戦。昨年のように最後に意地を見せ、2年連続の負け越しを防ぐことはできるのか。長いトンネルの出口を照らす光は一向に見えない。

[大嶋悠人]

1.PR 茅島 雅俊(商2) 9.SH 秦 一平(法2)
→20.下村(後半19分)
16 木暮 宗(商2)
2.HO 伊吹 誠介
→17.鈴木(後半0分)
10.SO 田村 優 17 鈴木 亮太郎(政経2)
←2.伊吹(後半0分)
3.PR 小野 慎介(政経2)
→18.榎(後半21分)
11.WTB 斉藤 春樹(農1) 18 榎 真生
←3.小野(後半21分)
4.LO 友永 恭平(政経1)
→19.鎌田(後半27分)
12.CTB 溝口 裕哉(政経2) 19 鎌田 祐太郎(法4)
←4.友永(後半27分)
5.LO 名嘉 翔伍(政経3) 13.CTB 衞藤 陽介(営3) 20 下村 真太朗(法2)
←9.秦(後半19分)
6.FL 三村 勇飛丸(政経3) 14.WTB 居迫 雄大(法3)
→22.小泉(後半37分)
21 染山 茂範(政経1)
←15.石丸(後半9分)
7.FL 堀江 恭佑(商1) 15.FB 石丸 剛也(政経4)
→21.染山(後半9分)
22 小泉 将(営2)
←14.居迫(後半37分)
8.NO.8 杉本 博昭(商3)


~試合後のコメント~
吉田監督
 「56-0。これが現実ですね……。前半ラインアウトの精度が上がらず、7本全て取れなく波に乗っていくことができなかった。それでも1対1や、ディフェンスも前に出てプレッシャーをかけてなんとかくらいついていったが、後半になって帝京の精度の高いラグビーに対して何もできなかった。(早稲田戦に向けて)試合でさすが明治と言われるプレーを見せるためにこれからトレーニングを積んでいきたい。一人一人持っている力はある。しかし12年もの間日本一になってないチームのため、日本一になるために必要である、一人一人の中に確固たるものがない。今はそれを選手に伝え、下地を作っている。試合後悔しさで涙を流している選手がいた。選手たちにはその涙を無駄にすることなくまた一緒に頑張っていこうと声をかけた」。

伊吹
 「帝京はコンタクトが強いチームなので今日の試合では1対1で勝つこととブレイクダウンで圧倒することをチームで意識して戦った。しかし、ラインアウトのミスで攻撃のペースがつかめず後半気持ちが切れてしまうところがあった。ペナルティをもらったらPGを狙うか、ピックゴーで仕掛けていこうとしていた。自分が抜けてからは、石丸がゲームキャプテンに、その後は杉本と田村に協力しながらやってもらうようにした」。

小野
 「前半はスクラムもいい感じでいけると思っていた。しかし、ミスが出て一気に点を取られてしまう。それが今年のチームの悪いところ。これからチームの方向性を確認し、早稲田戦で意地を見せられるように2週間しっかり練習していきます」。

堀江
 「今日は練習してきたけど頑張ってきたけど完敗でした。敗因はラインアウトでミスしたりスクラムを押されたりとセットプレーが安定しなかったことだと思う。ブレイクダウンももっとやれたはず。この試合に向けてやるべきことはやってきた。それを出せるときは自分たちの形になるが今日は相手のペースにのまれてしまった。ペナルティもらったらタッチよりPGなどで1点でも多く取れるよう目指していたが、トライを奪えそうなチャンスもミスで逃してしまっていた。アップからの雰囲気はすごいよくて前半もわりと動けていたけど相手ペースの時間が長くなって後半失速してしまった。ここまできたら早明戦では思いっきり出し切って結果を残したい」。

三村
 「(完封というスコアには)実力の差を感じました。セットプレーが安定しないまま、最後までずるずるいってしまった。(早明戦に向けては)落ち込むのは今日までにして、切り替えてやっていくしかない。今までスタンドから見ている立場だったし、やっぱりこの一戦だけは他とは違うものなので、思いきりやりたいと思う」。


 「今日は完敗です。帝京の外が空いているのはわかっていて、そこを攻めていきたいと思っていたんですがそこまで行きつかず出し切れなかった。ほんと悔しいです。(チームで)試合に出場してない選手とかもいるので申し訳ないです。早明戦は今までやってきたことを信じてやるしかない」。


 「今日は人生最大の失態だった。もう自分たちが弱いということを自覚しなければならない。練習通りやればいいと言っている場合ではない。今日はブレイクダウンで勝つことが共通意識だったが、勝とうとしているところで負けてしまった。勝てるところを作るのではなく、どこからでも勝てるようになりたい。(早明戦までの)2週間ではすぐに変わらないとしても、変えるという気持ち、強くなろうという気持ちを持って練習に臨みます」。