悪夢再び……またも法大に1TD差で散る/関東大学1部リーグ戦

 冷たい雨粒とともに悔し涙が頬を伝う――。遡ること1年前、降りしきる強雨に打たれながら、ただただグラウンドに立ち尽くす雑草軍団の姿があった。リーグ全勝優勝決定戦となった法大トマホークス戦(昨年のトマホークス戦の記事はこちらから)。わずか1タッチダウン差の敗戦に、人目もはばからず涙に暮れた。
 あの日の涙は忘れない。雪辱を固く心に誓った。今季もトマホークスとは同ブロック。「最終節の法政戦までは何がなんでも負けられない」(カラフチ主将・営4)。来る復讐戦へ向け、グリフィンズはリーグ戦を突っ走ってきた。連勝を積み重ね、前節ではもう一つの山場としていた強豪・慶大ユニコーンズに競り勝った。「やっと法政への挑戦権を手に入れることができた」(喜代吉・理工4)。互いに無傷の6連勝で全勝対決、再び。決戦の舞台は整った。

 この日、超満員となったアミノバイタルフィールド。観客が固唾を飲んで見守る中、両雄が並び立った。コイントスによりグリフィンズはレシーブ権を獲得。熱戦の火蓋が切られた。
 第1クォーターのファーストプレー。QB#16田中(蔵・政経3)からRB#6宇佐美(政経2)へのハンドオフミスで試合は始まった。開始早々のファンブルリカバーを許し、攻撃権はトマホークスへ。トマホークスはこの好機を逃さず、フェイクフィールドゴールからのパスを成功させ、エンドゾーンまで残り5ヤード。続くプレーでタッチダウンパスを決められ、先制点を奪われた。

 先制に沸くトマホークスサイド。だがこの男がフィールドの雰囲気を変えた。RB#33喜代吉壮太。昨季のトマホークス戦では、試合終了間際にディフェンスのタックルに対応できず転倒。勝利への思いを乗せたボールをファンブルし、自身の負傷退場とともにチームは優勝を逃した。「法政をぶっ潰す」(喜代吉)と、この一戦に懸ける思いは誰よりも強い。序盤からRB#33喜代吉はフルスロットルでトマホークディフェンスを脅かす。右へ、左へ、中央へ。縦横無尽のランプレーでゲインを刻み、最後も自らでタッチダウン。直後のシリーズで同点に追い付いた。
 RB#33喜代吉の勇猛なラン攻撃に対し、トマホークスはショットガン攻撃を軸に襲い掛かる。パス部門のRating1位に輝いたQB#4山口からのパスを防ぎ切ることができない。パスターゲットをフリーにしてしまう場面が多く見られ、喜代吉のタッチダウン後のシリーズでタッチダウンパスを含め3本のパスコンプリート。第2クォーターに入ってもパス攻撃は衰えず、開始3分過ぎには62ヤードものロングパスが炸裂。7―21と、追いすがるグリフィンズを引き離した。

 互いに1タッチダウンを追加して迎えた第3クォーター。日は沈み、空にはマジックアワー(日没後の残光が生み出す、空が最も美しい時間帯)が訪れていた。残光がフィールドを照らし、辺りは幻想的な雰囲気に包まれる。試合の流れはトマホークス。だがこの演出が、グリフィンズの逆転劇を予感させた。

 後半戦開始の合図。トマホークスレシーブを前に、グリフィンズは賭けに出る。キックオフでΚ#22加藤(政経3)がオンサイドキックを放った。ボールに群がる両軍。ボールキープは――グリフィンズ。攻撃権を奪い返し、反撃に転じた。このスペシャルプレーを機に、グリフィンズは猛加速。RB#33喜代吉、QB#16田中(蔵)、TE#95田中(修・政経2)らの多彩なランアタックで追加点を挙げると、ディフェンス陣もこれに応えた。CB#24清水(理工4)のロスタックルなどでトマホークスのドライブを食い止め、この試合初めてのパントに追い込んだ。再び攻撃権を手にすると、ランプレーにWR#1安田(営3)、WR#22加藤へのパスを織り交ぜたオフェンスで一気に攻め立てる。最後はRB#29小谷田(政経3)のダイブで押し込み、同点となるタッチダウン。遂にトマホークスを捕えた。

 グリフィンズの面々が観客を煽る。魂の同点劇にスタンドは興奮の坩堝(るつぼ)に。自然発生的に明治校歌の大合唱が巻き起こった。グリフィンズと観客は一体化し、次々と選手への応援コールが発生。「4年間試合をしてきて、こんなことは初めて。涙が出そうだった」(長谷部・政経4)と、その声援がグリフィンズの背中を後押しする。
 ファイナルクォーター。トマホークスはラン&パスアタックで再び点差を突き放そうとする。パスインターフェアランスの反則も相まって、エンドゾーン手前までゲインを許し窮地に陥るも、4th&1からのランアタックをディフェンスラインが壁となって死守した。ノーゲインでターンオーバー。流れは完璧にグリフィンズが引き寄せた。いよいよ勝ち越しの瞬間が訪れる――そう思った矢先だった。Ρ#7榊原(文4)へのパントスナップのボールが頭上を大きく越え、後方へ。ボールをキープしパントを試みるも、トマホークスに自陣深くまでの侵入を許してしまう。エースRB#29原のランで詰められ、RB#28堀に優勝に大手をかけるタッチダウンを奪われた。

 残り時間はおよそ5分。まだ追い付ける、こんなところで甲子園ボウルへの道を閉ざしてなるものか。運命のグリフィンズドライブは、伝統のランプレーで押し進めていった。だがスクランブルの刹那、QB#16田中(蔵)が負傷。QBキープを多様したことで、QB#16田中(蔵)の足には想像以上の負荷がかかっていた。1タッチダウン差を追いかける展開での中心選手の負傷退場――昨年の悪夢がフラッシュバックする。
 司令塔を欠いたグリフィンズは、ワイルドキャットフォーメーションで対抗。RB#33喜代吉、WR#22加藤へのダイレクトスナップから、やはりランアタックで押し切ろうとする。時間は100秒を残し、エンドゾーンまではあと少し。迎えた4th&1。雌雄を決する局面で、「最後は喜代吉しかいないと思った」(長谷部)。ボールはRB#33喜代吉に託された。RB#33喜代吉は1年越しの思いとともに、トマホークスにぶつかっていった。だが分厚いラインの壁がRB#33喜代吉の走路を塞ぐ。4thダウンギャンブル失敗。ディフェンスの集まりが勝り、無常なるターンオーバーでグリフィンズは攻撃権を失った。それはすべてが終わった瞬間だった。トマホークスは2度のニーダウンで残り時間を使いきり、反撃の余地を与えない。天を仰ぎながら、試合終了のカウントダウンをただ黙って聞くことしかできなかった。

 そこには1年前のあの日と同じ光景が広がっていた。茫然自失とする者、嗚咽をあげる者、嘆き、怒りを露わにする者。やり場のない無念さが、彼らの表情からにじみ出ていた。頂点には、またも届かない。フィールドを虚無感が支配する中、最後の一人となるまで佇んでいたRB#33喜代吉。何を感じ、何を思っていたのだろうか。
 「日本一を本気で目指せる、本当に良いチームだった」(カラフチ主将)。このチームでのアメフトはこれが最後となった。今季はグリフィンズ生誕75周年の記念すべき年。日本一の冠こそ得られなかったが、それを飾るにふさわしい、誇るべき歴史的な最終戦だったと思う。日本一強いチームにはなれなかったが、皆がアメフトにひた向きで、チームワークが抜群の、日本一素晴らしいチームであったことは間違いない。「グリフィンズは学生生活のすべて。最後の青春だった」(喜代吉)。ここで過ごした大切な日々は、一生忘れることはない。
 雑草は再び踏み付けられ、泥に塗れた。それでもまた再び、さらに力強く、さらに打たれ強く、天へ向かって真っ直ぐに成長してくれるはずだ。雑草軍団の名のもとに――。

[原昂之]