(22)小谷田圭純

 試合中のフィールドに、ひときわ目を引く大柄な選手がいる。FB#29小谷田圭純(政経3)。ほかの選手たちよりも頭一つ飛び出るほどの恵まれた体格を生かした、相手のタックルをものともしない重戦車のようなラン。そしてパスターゲットとして相手守備陣の穴を突く素早い動き――。関東でも有数のRB陣を擁し、それぞれが多種多様な個性を持つグリフィンズの中でも彼の存在はひときわ異彩を放っている。

 出身高校は高校アメフト界の超名門校・日大三高。小谷田はそこでもオフェンスの柱として走り続けていた。高校3年時には、現在もチームメイトとして共に戦っているグリフィンズのエースQB田中(蔵・政経3)らとともに、高校アメフトの頂点である全国大会決勝『クリスマスボウル』を制した。まさしく“エリート中のエリート”。しかし、そんな彼が次の舞台に選んだのは甲子園ボウル優勝20回を誇る強豪日大ではなく、明治。「自分の力でチームを強くして、日大を倒したい」。その強い思いが、彼を“挑戦者”の道へと駆り立てた。

 その日大三高時代から小谷田が務めるFBは、ランはもちろん、ブロックやパスキャッチも要求される難しいポジションだ。自身も「FBはすべてのプレーに絡むキープレーヤー」だと胸を張る。だがそんな彼は一時、別のポジションへの転向を望んでいた。「テイル(TB)で出たい。自分のランをもっと見てほしい」。磨き上げた自身のランに絶対の自信を持っていた。だからこそ、より長くボールを持って走れるTBとして試合に出たい――。だがそんな思いとは裏腹に、グリフィンズでも彼に与えられたポジションはFBだった。
望んだものとは違う環境。それでも、決して腐りはしなかった。そして今、フィールドにはFBとして躍動する小谷田の姿がある。「“小谷田なら何かやってくれる”。そんな風にみんなが注目してくれるような選手になりたい。試合中はとにかく29番を見ててください」。どんなに分厚い壁が立ちふさがっても平気で走路をこじ開けてしまうランプレー、QB田中(蔵)との息ぴったりのパスプレー。それはほかの誰にもまねできない、小谷田だからこそできること。「最初のころはブロック要員だった。でも、いろいろなことができるようになって昨季あたりからFBの楽しさが分かってきた」。彼は今、笑顔でそう語る。ある選手が言っていた。グリフィンズというチームのいいところは、“全員が、チームのために何ができるか、チームのために自分をどう生かすかを常に考えているところ”だと。ならば、自分の“生かし方”を見つけた小谷田は新たなステップへと一歩を踏み出したのかもしれない。

 「もう一度頂点に立ちたい。みんなであの空気を味わいたい」。高校生の時に頂点から見た景色。それは今も小谷田の瞳に焼き付いている。だからこそ、もう一度。今度は、紫紺の下に集った、この仲間たちと――。そのために小谷田は今も走り続けている。
 大学アメフト界の頂点を決める『甲子園ボウル』は、12月13日、甲子園球場で行われる。その夢舞台に、彼は立つことができるだろうか。グリフィンズは8日、ブロック優勝を懸けた法大との最終決戦に臨む。

◆小谷田圭純 こやたたかよし 政経3 日大三高出 185cm・95kg