完全優勝で秋5連覇達成!/関東学生秋季1部リーグ戦

1999.01.01
 春の敗戦から約4カ月――。“秋の明治”が、再び関東の頂点に立った。今年で秋季リーグ戦5連覇を達成。リーグ戦通算優勝回数は男子トップの33回。夏のインカレで得た大学日本一の名を名乗るに恥ずかしくない、“順当な”結果が得られたといえるだろう。

 「目標は優勝」。皆口ぐちにそう言い、気持ちを一つにして今大会へ臨んだ。夏のインカレでは優勝し、秋季リーグ戦は明治が4連覇中。明治有利の展開の中で、今回も下馬評では“優勝は明治”との声が多かった。しかし、同じくそう言われて臨んだ春季リーグ、明治は最終日早大に敗れ、まさかの2位 。「今まで勝ってきてるから勝てるってわけじゃない」(平屋主将・政経4)。周りの声がどうであろうとも、この秋も選手たちにとっては “優勝が確実”ということはないのだ。だが、同じ悔しさを味わいたくもなかった。のしかかるプレッシャーの中で、選手たちは「挑戦者の気持ち」(倉嶋ヘッドコーチ)を忘れず、リーグ戦に挑んだ 。
 リーグ戦開幕初日から4日間、明治は順調な勝ち上がりを見せた。定岡(商3)や松渕(文2)、根田(営1)が負けはするも試合の内容は悪くなく、チームに悪い流れができるわけでもない。「前半戦勝って後半戦につなぎたい」(平屋主将)とリーグ戦前日のミーティングで話し合った通り、全勝で1週目を終えた。

 そして後半戦。リーグ第5戦目の相手は中大だった。中大は実力者がそろっており、春季リーグでは優勝候補の一角とも言われていた。しかし、その結果は7位と、チームの調子が良いとは言えない。明治は前半戦のいい流れをくんで、早々と勝ちを決めたいところだった。

 だが、当たりを見た瞬間思った。これは長い戦いになるかもしれない――。予想は的中。池田(法3)が相手校エースの瀬山(中大)に1セット目を奪うも敗れ、松渕もバックミスが響き、ストレート負け。続く3番手、水谷は安心して見ていられるか……と思いきや、予想外に試合は難航した。相手は中大の主将、森田。水谷が比較的苦手とする左利きプレーヤーだ。全日本学生選手権ランカーでありながら、今年のリーグ戦では負け越しており、不調が続いていた。しかしこの日、森田の調子は良く、逆に水谷の調子は悪い。「相手は思い切ってきてたし、守るところはしっかり守っていた」(水谷)。なんとか2セットを先取するも、3、4セット目を奪われ、試合はフルセットに。それでも最終セットでは日本一の実力を見せんとばかりに攻めていき、相手を4点に抑え勝利。チームにとって貴重な1点を挙げた。

 続くダブルス、水谷・甲斐組は相手に力の差を見せつけ余裕の勝利。これで2―2の同点に追い付いた。あと2人勝てば勝ち、そんな場面で5番手、根田が登場。1セット目は得意のバックハンドドライブで得点を挙げ、セットを奪う。そのままこの流れで根田の勝利かと思われたが、相手の調子が上がり根田のフォアが入らなくなると、完全に相手ペースへ。セットカウント1―3で敗れた。

 これでもう後が無くなった明治。「勝負は早稲田戦」(池田)と、言ってきただけに、ここで負けるわけにはいかない。6番手、軽部(営3)の相手は格下の選手。だがこの大事な場面に「始まる前は緊張してた」(軽部)。それでも試合が始まると、エースとしてのたくましい姿がそこにはあった。緊張など全く感じられない堂々としたプレーを見せる。両ハンドで積極的に攻め、あっと言う間に3セットを奪い勝利。これで試合の行方は7番手、甲斐の手に託された。相手は同じ2年生谷口(中大)。1、2セット目は甲斐が取るも、3セット目はコースを狙ってきた相手に奪われる。4セット目、中盤8―5でリードするも、そこから相手が挽回(ばんかい)。5点連続得点を許し、8―10で相手がマッチポイントを握った。しかし、そこからが今リーグ好調な甲斐の腕の見せ所。慎重になってしまうのではなく、逆に積極的に相手を攻めていった。そして4点連続得点し、見事勝利。明治の全勝を守った。

 第6戦目の相手は、この春1部昇格を決めた日大。そうは言っても関東学生選手権で5位のエース・明(日大)など、実力のある選手がいるため侮れない。1、2番手は明治が余裕を見せ勝利。続く3番手、根田がエース・明との対戦。会場のほとんどが、明の勝利を予想しただろう。明は根田と同じ仙台育英学園高出身の先輩で「いつも勝てなかった」(根田)相手。しかしだからこそ、「思い切ってできた」(根田)。昨日の中大戦での反省を生かし、相手に向かっていった。すると結果はフルセットのデュースで根田の勝利。「昨日よりフォアがしっかり入ってバックも昨日より思い切りできたので良かった」(根田)。リーグ戦でいつも相手校のエースには勝てていなかっただけに、この勝利は根田にとって大きな自信となっただろう。そして4番ダブルスも危なげなく勝利し、明治の勝利が決まった。残すは、最終日、早大戦のみ。

 いよいよ事実上の決勝戦、明治と早大の全勝対決。前日のミーティングでは「選手全員でもう一度、絶対優勝しようという気持ちを再確認したんで、本当にいい雰囲気で臨めた」(平屋主将)。春は早大の勢いにのまれた部分もあったが、この日は、レギュラーメンバー、応援の選手全員含め、明治の力は大きく一つになっていた。

 そして気になるオーダーは……。水谷が1番、早大のエース・笠原が3番手、と、両校のエースが見事にばらけた。笠原はこの日以外は全試合1番手で出場。明治との戦いでは水谷と当たることを避けたのだろう。これで、勝利のカギを握るのはダブルス、そして5番手、6番手となった。

 1番手、水谷は早大の主将・原田相手に危なげなく勝利。2番手、池田の相手は浅沼(早大)。浅沼はそれまで今リーグ6戦5勝と勢いに乗る選手だった。しかし、それにも負けない勢いを持つのが明治の“リーグ戦男”、池田だ。1セット目競った展開となるも、一度流れをつかむと、もう誰も池田を止められない。ストレートでの勝利の瞬間、池田は右手でユニホームの“meiji”の文字をつかみ、左手を高く上に突き上げ、応援席の選手らと共に喜びを分かち合った。

 続く明治の3番手は軽部。相手はエース・笠原。今年の関東学生選手権準決勝で対戦し、敗北を喫した相手だ。2セット目デュースにもつれ込むも、それ以外は終始相手ペースで試合が進み、ストレート負けを喫した。しかし、ここで悪い流れを作ってはいけない。春は3番手で負け、それ以降悪い流れを断ち切れなかったのが敗因ともなった。次のダブルスの試合に、皆が注目した。

 ダブルスは春季リーグ、インカレで共に戦っている足立・笠原組(早大)との対戦。今年ここまで1勝1敗。チームの勝利のためには、絶対勝ちたい勝負どころだった。試合は1セット目から緊迫したものに。途中相手にリードを許すが、6点連続得点で挽回(ばんかい)し、11―8で1セット目、11―7で2セット目を奪った。3セット目もこのまま明治が取るかと思われたが、このセットは徹底的に相手にコースをつかれ、3点でセットを取られる。しかし、今リーグ好調な水谷・甲斐組はここで流れを持っていかれたりはしなかった。4セット目、ラリー戦に持ち込まれてもほとんどのボールを決めていき、気付けば11―3で勝利。いい流れで5番手につないだ。

 5番手は、今リーグからレギュラー入りした2年生、松渕。相手は今リーグ戦で各校のエースと対戦しながらも無敗を守っていた好調のカットマン、御内(早大)だ。だが、御内は松渕が過去に勝ったことのある相手でもある。松渕も果敢に攻めていき、試合は1セット目から競った展開となった。1セット目奪われ、2セット目奪い、3セット目奪われる……。変化のついた相手のボールに上手く対応し、逆にカットマンである相手の嫌うコースをつく。うまい試合運びで、4セット目はデュースで勝ち取った。試合中、松渕が得点するたびベンチ、応援席みんなが声を出して喜び、ミスしても励ましの言葉が飛ぶ。セット間にはカットマンの得意な軽部が松渕にアドバイス。まさにみんなで一体となって戦っていた。5セット目、同じく丁寧なプレーで試合は進む。しかし、ここでは負けられないと思ったか、カットマンながら攻撃も上手い御内がドライブで連続得点。これで流れをつかまれ、惜しくも6―11で御内が勝利した。
 松渕が負けはしたものの、最終日にして一番の好プレーを見せたことで明治の勢いは衰えなかった。6番手、根田の相手は足立(早大)。昨年の関東学生選手権準優勝の実力者だ。格上相手に、根田も積極的に攻めた。粘って3セット目を奪うも、負けられない足立が底力を見せ、1―3で足立の勝利。これで3―3。中大戦に続き、またも勝利の行方は7番手が握ることとなった。しかし、「負けても次の人のために勢いを止めないくらいの試合をしたい」(根田)というように、ここでも明治の勢いは止まらなかった。目指すところは優勝。それまで以上に明治の選手全員が一体となり、7番手、甲斐の試合を始めようとしていた。

 甲斐の相手は高岡(早大)。明かに甲斐の方が実力は上だ。しかし、「自分がリードしていても安心しないようにチャレンジの気持ちで戦うようにした」(甲斐)。これが功を奏したか、“競っても最後は甲斐が決める”、そんな流れで試合は進んだ。甲斐の安定した攻撃で得点し、明治の選手全員が声援を送る。そしてまたそれに応える甲斐。終始明治ペースの試合運びとなった。結果、ストレートで甲斐の勝利。それとともに、明治の優勝も決定。まさにチーム一丸となって、秋5連覇、そして、春のリベンジを果たした。

 試合後、その喜びに涙を流す選手たち。そして多かったのは「ホッとした」という声。周りから見れば“順当な”優勝。しかし選手たちにとってみれば絶対に負けられないプレッシャーの中での“悲願の”優勝だ。それを成し遂げるには、厳しい道のりがあった。実力は十分ある。しかし、団体戦で優勝するにはそれだけでは足りない。チーム力がカギとなる。リーグ戦で試合に出る選手だけが明大卓球部の部員じゃない。その練習相手をする者、裏方でチームを支える者、全員含めて“明治”というチームだ。

 
 「“誰1人欠けてはいけない、関係無いやつは誰1人いない、全員そろって明治なんだ”って強く言ってきたので、リーグ戦での雰囲気、試合に対する姿勢、気迫、応援、団結力、どれをとっても1番だったと自信を持って言える」(平屋主将)。今回の優勝は、間違いなく、明治全員で勝ち取ったものだった。「この喜びは本当に一生忘れられないと思う」(平屋主将)。
 これぞ、卓球界の王者たる明治のあるべき姿だろう。10月には、全日本選手権の団体戦が控えている。学生界だけでなく、真の日本一へ。そして来年こそは、春季リーグ、夏のインカレ、秋季リーグの三冠へ。明治の戦いは、これからも続く。

[荒井りな]

◆2009年・秋季リーグ戦星取表◆
  早 大  明 大  専 大 筑波大 駒大 埼玉工大 中 大 日 大 勝敗 順位
早 大 ●3―4 ○4―1 ○4―0 ○4―1 ○4―2 ○4―0 ○4―0 6勝1敗
 明 大  ○4―3 ○4―1 ○4―0 ○4―1 ○4―1 ○4―3 ○4―0 7勝0敗
専 大 ●1―4 ●1―4 ●3―4 ○4―2 ○4―2 ○4―0 ○4―1 4勝3敗
筑波大 ●0―4 ●0―4 ○4―3 ○4―1 ●0―4 ●0―4 ○4―3 3勝4敗
駒 大 ●1―4 ●1―4 ●2―4 ●1―4 ●0―4 ●2―4 ●0―4 0勝7敗
埼玉工大 ●2―4 ●1―4 ●2―4 ○4―0 ○4―0 ●3―4 ○4―1 3勝4敗
中 大 ●0―4 ●3―4 ●0―4 ○4―0 ○4―2 ○4―3 ●2―4 3勝4敗
日 大 ●0―4 ●0―4 ●1―4 ●3―4 ○4―0 ●1―4 ○4―2 2勝5敗