明大、12度目の挑戦で念願の初周回に成功!!/東京六大学対抗グライダー競技会

1999.01.01
 「この前、航空部って、鳥人間コンテストやってる部活?って聞かれました」。部員から漏れたその言葉に航空部の現状がうかがえる。明大体育会に所属する部のなかでもいわゆるマイナー部に属する航空部。その活動内容を聞かれて即答できる明大生は少ないだろう。

 そんな彼らの今年最初で最後の大会、東京六大学対抗グライダー競技会が8月21日から26日にかけて妻沼滑空場にて開催された。本来競技日程は30日までの予定であったが、27日早朝インフルエンザによる発熱者が出たため競技は中断。26日までの競技成績が最終成績となった。近年、グライダーのライセンスを持つ部員がおらず、オープンでの参加となっていた本学だが、今年はライセンスを取得した井澤(理工3)の活躍で明大初の周回に成功し、団体4位と上々の結果を残した。


離陸前の調整は入念に

2つの目標物を経由して戻ってくるまでの時間を競うこの競技。どれだけ早く十分な高さまで昇りきれるかが勝負のカギとなる。また試合ではその日の最後に飛んだ記録がそのままその日の成績になるため、自分のフライトに満足できなければ選手は何度でもフライトに出ることができる。失敗してもやり直しがきく半面、結果が出る度に選手は次のフライトに出るか選択を迫られるという点では非常にシビアな競技だ。

 競技2日目、空には点々と雲が広がり雲間から射す日光がまぶしい。見ている観客には悪条件。しかし雲の気流を使って空高く舞い上がるグライダーとパイロットにとってはこれ以上ない好条件だった。
 他大学が続々と飛び立つ中、本学期待のエース井澤もこの日1度目のフライトに出た。遥か前方にあるウインチと呼ばれる機械によって、機体は思いっきり空へ引っ張り上げられる。すっと空へ上がった機体はすぐさま円を描くように飛行し始めた。螺旋状に発生している上昇気流の真ん中になるべく長く乗ることで、効率よく浮上することができるのだ。

 数分して1度目のフライトから戻ってきた井澤だが「今日は条件はいいが、今のフライトには満足していない。時間が続くかぎり何度でも飛ぶ」。とその目はすでに次のフライトを見据えていた。続いて飛んだ2度目のフライトは離陸時にアクシデントが起こり、直ちに着陸。失敗に終わった。

 迎えた3度目のフライト。午後に入り条件がさらに好転したことで周回する機体が連発していた。部員の期待を背負った本学の機体は順調に高度を上げていく。高さが出るにつれて小さくなってゆくグライダーは角度によって消えたり、現れたりを繰り返す。地上で待つ部員も見失っては見つけ、また見失っては見つけるという状況が続いた。機体が見えなくなってしばらくして明大が2つの目標物の経由に成功したことを告げる無線が鳴る。「おぉ。すごい!」部員から歓声が沸き上がった。明大にとって今年で12回目を数える六大学競技会でようやく掴んだ初めての周回だった。このフライトで記録した904点はこの日飛んだパイロットの中でも6番目の成績。前回大会の得点が全日程合計で287点であったことを考えると、その飛躍っぷりがうかがえる。「このフライトには満足している。他の大学が好条件のなかで続々と周回に成功させていたので、自分もやらなくてはという思いが強かった」。と井澤。主将の平田(主将・理工4)も「ここ最近部員数が少ないがそれだけ1人1人が質の高い練習に取り組めている。それが今回の結果に繋がったのかもしれない」。と満足げに語った。この後、競技4日目にも井澤が2度目の周回を成功させ、明大は合計1593点で団体4位となった。

 


明大初の周回に成功した井澤(理工3)

明大航空部は日本学生航空連盟に加盟していないことから今のところ今年出場できる大会はこの六大学競技会だけということになる。しかし明大にとって今大会は次に繋がる大きな一歩になったに違いない。来年の目標は?という問いに「六大学戦優勝」と平田主将。高い目標を掲げるところがまた彼ららしい。

 また主将は続ける「航空部では普通体験できない空を飛ぶ楽しさを十分に感じることができます。興味のある人は体験フライトにも来てみて下さい!」
部員は随時募集中だそうだ。明大航空部を知らなかった人も一度足を運んでみると面白いかもしれない。真黒に日焼けした部員たちが笑顔で迎えてくれるだろう。