(23)アラサー・アラフォーに負けるな!

1999.01.01
(23)アラサー・アラフォーに負けるな!
 最終回となる第23回の担当は紅谷春那です。

 いま日本で一番元気なのは“オバサン”だと思う。失礼承知でそう呼ばせていただく。オバサンと言っても電車で飴を配るような年配者ではなく、「アラサー・アラフォー」と呼ばれる30~40歳代の女性のことを指す。そんな広い層を言っても、と思うかもしれない。しかし私が言いたいのは「若者がオバサンより元気がなくていいのか」ということだ。

 100年に一度の大不況と言われるこのご時世でもアラサー・アラフォーをターゲットにした雑誌は売り上げを伸ばし、高価なアンチエイジング商品が飛ぶように売れる。女性の社会進出も浸透し、女上司なんていうのも当たり前になってきた。米国でも自立した女性が主役のドラマが人気を博している。しかし「オバサンがやたら元気だなぁ」などと軽くあしらってはいけない。これはただの流行ではなく、若者最大の危機なのだから。

 そもそも流行とは何だろうか。広辞苑には「ある現象が、一時的に世間に広まること。特に、ある型の服装・言葉あるいは思想・行動様式などがもてはやされて、一時的に広く世間で用い行われること」とある。刊誌の吊り革広告を参考にするならば、今年は“アラサー・アラフォー”“婚活”“肉食女子”だろうか。その流行語の発信源は、オバサンの彼女たちだ。

 彼女たちの登場はこれが初めてではない。20年前の“女子高生・女子大生ブーム”を皮切りに、バブル経済と共に日本列島を沸かせてきた。ティラミスが話題になれば飛びつき、黒髪ワンレングス・ボディコン姿の女性が街に溢れかえった。「若いからなぁ」「時代が良かったんだ」などの言葉では片付けられない。歳を重ねてもその気力は衰えず、いまもなお日本を動かしているのだ。同じ年代の私たちは流行と呼べるものを作りだせていないだろう。いまだマスコミがもてはやすのは、華ともいうべき私たち20代ではなく30~40代の彼女たちなのだ。

 流行を「没個性を生み出す悪いもの」と見なす人も多い。そういった点で現代は物が溢れ、各人好みに合わせて好きなものをチョイスできる。「流行りのものを着るなんてダサい」などと個性派ファッションが祭り上げられ、他人が知らない店の発掘に勤しむ。個性を尊重できることはいいことだが、それでは“他人を巻き込む力”が育たないのではないだろうか。日本経済の原動力となるべき若者が、自分が好きなものを好きなだけバラバラと楽しんでいる印象がある。影響力、と呼ぶのが正しいか分からない。しかし「勢いで流行にしてしまうような活力」が30~40代女性に比べると弱いのではないかと思う。

 30、40歳など一昔前では表立つ存在ではなかったはずだ。そのオバサンが、いまや日本の経済を握っている。これは若者にとって反省すべきことである。同じ女性として見習いたい部分も多くある。何歳になっても人生を楽しむ彼女たちを尊敬している。しかしだからこそ、負けてはいけないのだ。「オバサンの時代は終わった!」と一蹴するべきなのだと思う。みんなでお揃いの服を着ようなどという提案ではない。好きなものは好き、とことん追求する。そしてそれが他人に影響を与え、流行らせてしまえばいい。そのためにはよく遊び、よく学ぶべきである。経験豊富なオバサンたちに負けないものを見つけたい。

 あと10~20年後、オバサンと言われるのかと思うと怖くなる。しかし若者に負けじと仕事・オシャレに精を出すことだろう。そのときに張り合いのない相手だとつまらない。若者は生意気なくらいがちょうどいい。「いまどきの子は…」などとぼやきながら刺激を受けて生活したい。草食男子に負けない存在感を見せたいところだ。

[紅谷春那]

<了>