(16)『女子大生の日』に学ぶ女性の強さ
アルバイトをしているとよくお客さんに尋ねられる。「お姉さん、大学生?」。はい3年生です、と答えると、決まって「今年は就活大変だねえ。まあがんばって」と半ば同情気味に励まされている。そんな応援を受けて、わたしには苦笑を浮かべることしかできない。
20歳前後の女性を見て、大学生かなと思うのは、今となってはごく自然なことだ。1950年代ごろから、『女子大生』という存在は一般的に見られるようになったという。誰もが知っていることだろうが、女性は初めから大学に通って勉強するなどということが許されたわけではない。日本に初めて女子大生が誕生したのは今から96年前。8月16日、今日は日本初の女子大生が誕生した『女子大生の日』だ。
1913年8月16日、黒田チカさん、丹下ウメさん、牧田らくさんの3人が東北帝国大学理科大学入学試験に合格したことが発表された。日本初の女子大生とあって世間の注目を集め、在学中は「体調不良で休学」などといったニュースまで事細かに新聞に取り上げられた。入学試験前には女子学生を受け入れるとした大学側に文部省から「元来女子を帝国大学に入学せしむることは前例の無きことにて、すこぶる重大なる事件に有り」という詰問状が送られる騒ぎもあり、当然風当たりも強く厳しかっただろう。しかしこの3人は熱心に勉学に励み、卒業後も留学で海外に渡ったり黒田さんは日本女性初の理学士となったりと、輝かしい功績を残した。わたしたちには当たり前のように用意されていた『大学進学』という選択肢。その道を切り拓いたのは、彼女たちの努力と勉学への熱意、揺るぎない意志の強さだった。
女子大生になって3度目の夏休み、特別何かに励んだり、熱中したりすることもなく日々が過ぎている。大学生活への道を築いてくれた先人たちを思うと、後ろめたい生活だ。女子大生でいられるのも、あと1年半。今日この『女子大生の日』に、黒田さんたちのような強い意志と熱意をきちんと受け継がなければと思う。「今年は大変だね」と哀れまれる就活は、すぐそこまで迫っている。この不況下でさらに厳しくなる女子の就職難という現実は、あと半年もせずこの身に突き刺さってくるのだろう。しかし痛みへの耐性は女性の強みだ。3人の先駆者に恥じないように、女は強くあらねばなるまい。彼女たちが大学進学という道を作り出したように、わたしたちには何かを『生み出す力』が、きっと備わっているのだから。
第17回は間野彩佳が担当します。
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