(15)“1円”の後悔もしない大学生活を!

1999.01.01
(15)“1円”の後悔もしない大学生活を!
 第15回の担当は田中沙織です。

 久々に気持ちよく晴れ渡った夏の日の午後。取材帰りのわたしは最寄り駅からの家までの道中、ふと道端に落ちている5円玉を見つけた。それから、小中学生の頃に盛り上がった「1円を拾うと損である」という噂話を思い出した。1円を拾うときの『立ち止まり、屈んでつまむ』というその動作に1円以上のエネルギーを使うから拾ったら損だという話である。耳にしたことがある人も多いのではないだろか。

 実際に計算すると、1円を拾うのに3~4円分のエネルギーを消費するというのが通説になっているらしい。これでは損得勘定で考えれば確かに損をすることになる。さらに想像すれば、1円を拾う姿はこっけいにすら見えることから、手放しに喜ぶ人は少ないかもしれない。しかし素通りした直後の買い物で1円足りないという状況になったなら、逃したことをきっと後悔するに違いない。

 これは、わたしたちの生活に置き換えられないだろうか。何か判断をしなければいけない時、面倒くさかったり、苦手だったり・・・・・・それを回避する方が楽である場合、人は普通そちらに流れてしまいがちになる。しかし後に振り返って、まだできたのに・・・こうしていたら良かった・・・と思うときほどつらいことはない。そして当時踏ん張れなかった自分をどんなに恨んでも、その時その一瞬に戻ることはできない。それならば少しくらい骨を折っても、不格好でも後悔しない道を選びたい。その瞬間瞬間でできることに、精一杯力を尽くしていきたい。

 8月中旬になり、大学3年の夏休みが早くも半分近く過ぎてしまった。と同時に、明大スポーツでの活動もあと約半年、大学生活も1年半を切り、本格的な就職活動に向けてもカウントダウンが聞こえるようである。今までの2年半、わたしはどんな風に過ごしてきただろう。少し考えてももっと頑張れた、そう思い出すことは多い。しかし、これからは迷わず1円を拾いながら進んでいこう。1年半後、笑顔で卒業できるように。わたしは5円玉と一緒に、全力で駆け抜ける新たな決意を握り締めた。

[田中沙織]

第16回は斉藤麻衣が担当します。