(1)最強の撃墜王・岩本徹三から学ぶ「本当の強さ」とは…。
今企画では8月1日から23日までの連日、そんな中で感じたことなどを23の視点から、夏休みの主張として綴っていきます。
第1回の担当は臼井俊文です。
敵202機を撃墜した実力、背中には「天下の浪人 零戦虎徹」と書かれたライフジャッケット、丸刈り命令を拒否しての長髪――最強の撃墜王と呼ばれた日本海軍戦闘機隊エース・岩本徹三だ。ちなみにエースとは一般に50機以上を撃墜した者に与えられる称号。しかし、岩本の撃墜数は202とこの数字から見ても岩本の実力は群を抜いているのが分かるだろう。もし、かの剣豪・宮本武蔵が剣を戦闘機に変えて岩本と戦った場合、遠く敵わないとも言われている。そんな岩本の強さの秘密とは…。
オーストラリアの北、ニューギニアの東に位置するニューブリテン島ラバウル。太平洋戦争中、連合軍は「竜の顎」と呼び、恐れた。竜に似た地形と岩本率いる日本海軍最強「ラバウル」航空隊が待ち構えていたからだ。当時、物量で勝る米軍は連日数百機の大編隊で来襲し、岩本らは性能で敵に劣る零戦30機程度で応戦していた。人員の交代も機材の補給もままならない過酷な日々で、岩本らを支えたものは、空に散っていった戦友たちが残した「敵機は俺たちが落とすのだ」というラバウル魂。岩本は「ラバウル航空隊の誇りに懸けてたとえ戦況が絶望的になろうとも敵の戦闘機にだけは負けてはならない」と心に誓っていた。
戦局が悪化した太平洋戦争末期、岩本にも特攻の命令が下される。しかし、「我々戦闘機乗りはどこまでも戦い抜き、敵を一機でも多く叩き落とすのが任務じゃないのか。一回きりの命中で死んでたまるか」と口に出して特攻に反対。「戦闘機パイロット」という職分に反した作戦を実行することは、岩本のこれまで築き上げてきた歴戦のエースとしてのプライドが許さなかった。
自らの技量に対する絶対的な自信と誇りが岩本の心の中にあった。自分を信じ抜くことができる勇気を持っていた。呉市海事歴史科学館館長の戸髙一成氏は「自分のすべてを賭けて戦うものを見出し、懸命にその道を歩む中で確固たる自信と誇りを抱いた時、人間は本当の強さを発揮することができる」と岩本の生き方から学びとった。
現代の私たちはどうだろう。自分のすべてを賭けられるものに出会えているだろうか。その中で懸命に努力し、自信と誇りを抱いたことがあるだろうか。おそらくこんな経験ないだろう。
しかし、大学生の私たちはまだまだ自分と向き合う時間がある。さまざまなことにチャレンジし、自分の気持ちの奥底から「これを一生通してやりたい!」と思えるものを探す。そして、その中でいつか岩本の境地に辿り着いて感じよう。
第2回は大根田千尋が担当します。
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