紫薫(2)ライバル特集

1999.01.01
 第2回は主力選手たちの因縁の相手、ライバル特集です。長いボート生活の中で、選手たちは色々な相手と戦い、多くの勝利と敗北を味わって来ました。そんな中で生まれた、ライバルとのエピソードや選手たちの思いを紹介したいと思います。

リーダーが見据える、越えなければならない日大のライバルたち――伊藤主将(理工4)

 昨年の秋から主将として本学端艇部をけん引してきた伊藤主将。最後のインカレ、男子総合優勝に向け、伊藤主将がインカレで注目している他大の選手とは。

 伊藤主将から出た名前は、日大4年の佐藤と寺島。2人とは面識もあり、「佐藤とはたまに飲みにも行きます」と言う。寺島には高校3年のインターハイで敗れ、世界ジュニア選手権の選考でも僅差で敗れた。本学に入学してからも、1年生のときの日立明対抗戦で2人の乗るダブルスカルに、残りの1000mで惜しくも逆転負け。「2人には高校のときから一度も勝てたことがない」と悔しそうに語っている。

 今大会では佐藤はエイト、寺島はダブルスカルに出場するため、残念ながら舵手なしクォドルプルに出場する伊藤主将は2人と直接対決することはできない。しかし、今までエイトに力を入れていた本学男子の今年の目標は、総合優勝。主将はどの種目でも勝てるクルーで臨むためのクルー編成を行った。日大は昨年のインカレでもほとんどの種目で優勝し、総合優勝した強豪。本学が総合優勝するために、2人のいる日大を倒すことが必至条件となるだろう。

[中島奏子]

王者越えを狙う成長株――小口(政経2)

 近年不振にあえぐ明大端艇部男子。そんな中、下級生から頭角を現してきた選手がいる。小口太陽だ。1年生次より着実と大会経験を増やし、先日の東日本選手権ではダブルスカルで見事優勝をつかんだ。今後部の中心を担う小口に、今一番『勝ちたい』相手を聞いた。

 その注目の相手は「日大の2年生」だ。男子大学ボート界では、現在インカレ3連覇中で、他大を寄せ付けない強さを誇っている日大。小口はそこにいる同期たちに勝つことに熱意を燃やしている。特に「福井県出身のやつらには負けたくない」と語気を強めた。福井県はボートの名門県で、国体などでも毎年上位入賞を果たしている。小口の出身県である長野県とは、国体の予選ブロックが一緒で直接対戦することも多く、何度も苦渋を味わわされてきた。もちろん強豪・日大にも福井県出身の選手が多く在籍しており、日大の活躍を支えている。小口はそんな選手たちと高校時代から競り合ってきた。日大で活躍する高校時代のライバルたちに対し、「大学に入ってからは差がついてしまった」と語る小口。しかし、その眼差しからはこれからの巻き返しへの意欲が感じられた。
 
 すでにダブルスカルでのインカレ出場が決まっている小口。「エルゴ(※1)では今までの記録を大幅に更新できている」と大会への準備も順調のようだ。今までの借りを大学の舞台、インカレで返すべく、小口は新たなスタートを切った。
(※1…陸上トレーニング用の乗艇マシーン。その漕ぎに対応した時間や距離を計ることができる。)

[中宗大地]

部内外のライバルとさらなる高みを目指す――浅利(政経2)

 去年に引き続き舵手付きクォドルプルでインカレに出場する浅利。2年生女子を引っ張る存在といえる彼女に、ライバルについて聞いた。

 「個人的なライバルは、日体大の田中です」と答えた浅利。田中とは高校時代、同じボート部で過ごし、同じクォドの同じポジションで漕いでいた。そして、チームは違うが、大学でもお互いボート続けることに。今まで仲間だった2人だが、これからは優勝を争うライバル同士となった。浅利は、「彼女は手足が長く、ボート選手としての潜在能力が高い。私とは違うタイプの選手」とライバルの長所を挙げる。相手の強さを素直に認めること、凡人にはこれができそうで意外とできない。そんな素直さが、「周りから(いい意味で)刺激を受けやすいので、ライバルの存在は大きい」と言うように、ライバルから得る刺激を、浅利の強さに変える秘訣なのだろう。良きライバルの存在が自分を強くする――。浅利の姿勢からはそんな思いが伝わる。

 浅利のライバルは部外だけではない。初の女子部総合優勝を成し遂げた去年。浅利は舵手付きクォドルプルのメンバーとして出場したものの4位に終わった。「総合優勝は先輩たちのおかげ。自分は全然貢献できなかった」と1年生のころを振り返る。そして、その悔しさを味わった同じメンバーで今年のインカレも戦えることになった。このメンバーの中に田口(法2)がいる。田口とは、高校時代に国体の決勝で戦った。かつてのライバルも同じチームに入ったことで今では良き友となり、共に優勝を目指し日々切磋琢磨している。

「決勝で漕いでいる姿、隣に早大がいるイメージで練習している」と浅利。常にライバルの存在を強く意識した練習の結果が、きっとインカレで発揮されはずだ。

[木村揚輔]

ディフェンディングチャンピオンの最大の敵――女子部

 昨年、本学初のインカレ総合優勝を達成した女子部。連覇を阻もうと他大が厳しいマークをつけてくると予想される今年、明大女子部が最も注目するチームとは。

 「早大には負けられない」(浅利・政経2)、「毎年強いと言われているけど、やっぱり今年も早大が一番の強敵だと思う」(藤原・法4)。女子クルーにライバルを尋ねると必ず名前が挙がるのが、女子ボートの強豪・早大。毎年、大学日本一を目指す女子選手が数多く入部する名門校だ。明大端艇部がインカレで初の女子部総合優勝を達成した昨年も、2得点差で2位に迫っていたチーム。今年こそ総合優勝をと、これまで以上の意気込みで本学の前に立ちはだかることは間違いない。
 今年のチームも、U-23日本代表選手が3人所属するなど実力者ぞろい。特に舵手付きクォドルプルは「クォド=早大」と言われるほど圧倒的な強さを誇り、昨年の本学が唯一優勝を逃した種目でもある。
 この早大の壁を越えずして女子部の連覇は果たせない。しかし、「逆に、早大を倒せば総合優勝が見える」(藤原)ともいえる。最大のライバル・早大漕艇部女子部との戦いに注目だ!

[西村薫]

 次回の「紫薫」(8月5日更新予定)は縁の下の力持ち、マネジャーの1日を追います。