佐藤が自身初の五輪代表に選出! 幼い頃から憧れた夢舞台へ/ミラノ五輪代表選手発表

 来年2月にイタリアで開催されるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪(ミラノ五輪)の代表に佐藤駿(政経4=埼玉栄)が選出された。多くの選手が憧れる4年に一度の大舞台。21日に閉幕した全日本選手権(全日本)での表彰台入りや今シーズンのGPシリーズ(グランプリシリーズ)の成績などに基づいた選考を経て代表に選ばれた。

 決して平たんな道のりではなかった。シーズン開幕前の6月末に行われたアイスショーで右足首の骨挫傷を負い、全治約2カ月の診断を受けた。「10月の末ぐらいまでは本当に完璧な状態ではなかった」とケガを抱えながら挑んだシーズンだった。

 そんな中10月下旬に迎えたGPシリーズ1戦目の中国大会だったが、SP(ショートプログラム)、FS(フリースケーティング)ともに1位で優勝を果たした。2戦目のNHK杯のSPは4回転ルッツで回転不足となったものの、全日本王者の鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)に次ぐ2位に。FSはノーミスの圧巻の演技で1位につけ総合2位となり、GPファイナル(グランプリファイナル)進出を決めた。GPシリーズ2戦ともにジャンプの転倒なしと、ケガの不安を感じさせない見事な演技を見せた。

 「普段の試合と比べて全然緊張していなくて、本当に練習通りの演技ができた」。GPシリーズ2戦での好調の理由をそう語った佐藤。今シーズン安定して好成績を残した背景にはメンタル面が挙げられる。昨シーズンの全日本では緊張からミスを連発し総合7位となり、演技後に過呼吸で医務室に運ばれる苦い経験を味わった。しかし、今年3月の世界選手権がターニングポイントとなる。大会前に五輪メダリストで2023年に現役を引退した宇野昌磨さんと対談する機会があった。「今までの自分だったら失敗を恐れていて、その状態で本番に臨んでいたが、昌磨さんはそういったことを全く考えていなくて『失敗してもいいくらいの気持ちで本番に臨んでいる』という話を聞いた」。その言葉を胸に失敗を恐れない気持ちで挑んだ世界選手権で6位と健闘し、復活の兆しを見せた。

 メンタル面での成長は今年のGPファイナルのFSで力を発揮した。佐藤の演技前、イリア・マリニン(アメリカ)が世界最高得点をたたき出し、会場は熱狂に包まれた。「正直点数を聞いてからはGPシリーズ2戦以上に緊張はしていた」。しかし、その状況でも自分の力を発揮。冒頭の4回転ルッツを含む全てのジャンプを成功。スピン、ステップは全てで最高評価のレベル4を獲得する完璧な演技を見せた。 FSは日本人トップとなる3位につけ、 総合3位となり2年連続の表彰台入りを果たした。昨シーズンの苦い思い出がある全日本でも2位で初の表彰台入りを果たし、熾烈(しれつ)な五輪代表争いを制した。

 メンタルの強さを手に入れた佐藤。つかみ取った4年に一度の大舞台でもその力を発揮するだろう。「自分の小さい頃からの夢の舞台なので、もちろん出たいという気持ちは強いが、出ることが目標ではない。出てメダルを取って、自分の中で今シーズンが一番いいシーズンになれればいいな」。全日本前にこう語った天才ジャンパーは、すでに先を見据えている。

[野原千聖]