(男子)佐藤と三浦がダブル表彰台 OB大島10位、周藤12位で躍動見せる/全日本選手権

 全日本選手権(全日本)の男子FS(フリースケーティング)が実施された。SP(ショートプログラム)5位の佐藤駿(政経4=埼玉栄)がFSでは全体トップの演技を披露して総合2位に、三浦佳生(政経2=目黒日大)が総合3位に入り、明大勢のダブル表彰台となった。大島光翔(令7政経卒・現富士薬品)は総合10位、ジュニアからの推薦出場となった周藤集(政経1=ID学園)は総合12位で大舞台を終えた。

◆12・19~21 全日本選手権(代々木第一体育館)
▼12・20 男子FS

(写真:FS1位で初の表彰台入りを果たした佐藤)

 「6分間(練習)が始まる前は緊張であったりとか不安で押しつぶされそうになったが、観客の皆さんの声援をいただいて、もうその不安とか緊張が吹っ飛んだ」。今シーズンは安定した演技で国際大会でも結果を残してきた佐藤。SPは5位と出遅れるも「FSの曲かけはノーミスの演技しかしてきてなかったので。フリーの方が自信はあったので、あまりそこら辺は気にせずに決まったのかなと思う」と五輪が懸かった大舞台で『火の鳥』を熱演した。1本目に跳んだ代名詞である4回転ルッツは、余裕のある着氷で高いGOE(出来栄え点)を獲得。さらにトリプルアクセルと3回転サルコーのコンビネーション、4回転トーループと3回転トーループのコンビネーションも続けて成功させ、ジャンプの調子の良さを見せる。4本目の4回転トーループは高さ、幅ともに完ぺきな着氷でGOE3.26の加点がついた。演技後半も二つの3回転ジャンプを軽やかに着氷。7本目の3回転ルッツ着氷がステップアウトになったものの、大きなミスなく演技をまとめ上げた。「もうやり切ったという気持ちだし、自分的にはもう100点かなと。最後のルッツのミスも、もうそこまで含めても100点かなというふうに思っている」。TES(技術点)は全選手中唯一の100点超えで188.76をマーク。FSは1位、総合では2位となり、昨シーズンの雪辱を果たした。

(写真:4回転ループを決め総合3位に輝いた三浦)

 ノーミスの演技でSP2位発進の三浦は、FSの冒頭に4回転ループを組み込んだ。「6分(間練習)でループが1発もはまらなくて、最初は少し自信をなくしていた」と直前まで挑戦するか悩んだものの「先生たちが根拠のない自信を述べ始めて」と後押しを受けて構成を決めた。高さのあるジャンプでGOE3.60を獲得し、2本目の4回転サルコーではさらに高い3.88の加点を得る完ぺきな着氷を成功させた。続く4回転トーループと3回転トーループのコンビネーションもしっかりと決め切り「この緊張感と空気の中で、最初三つの4回転をバチっと決められた時にこれはいっただろうと(思った)」。疲れからその後のジャンプは着氷の乱れが相次いだものの、7本目の3回転ループになんとか2回転サルコーをつけるなど、最後まで諦めない姿勢を貫いた。「体の動きはいいし、キレもいいし、やってきた練習もめちゃめちゃ良かった。だから過去の積み上げからの自信は前につなぎづらいというところで、(メンタルトレーニング的には)良くはないが、最終的に根拠のない自信として僕の中に存在した」。ミスこそあったが3本の4回転で演技を勢いづけ、得点は今シーズンの自己ベストを更新する165.53となった。総合では3位に入賞し、幼少期から切磋琢磨(せっさたくま)してきた鍵山優真(中京大)、佐藤とともに表彰台に上った。

(写真:観客を魅了し10位となった大島)

 明大卒業後も現役を続行している大島は第3グループの第1滑走でFSを披露した。冒頭に挑んだのは4回転ルッツ。「上を目指さないやつが上に行けるわけがないので、そういった意味では本当に腹をくくって今日はやろうというふうに決めてやった」。惜しくも転倒してしまったが、2本目のトリプルアクセルと2回転トーループを成功させると、3、4本目のトリプルアクセルと3回転ループも着氷。得意のルッツはエッジエラーの判定となってしまい悔しさをあらわにしたものの、1本目の転倒以外はしっかりとまとめ、パワフルな演技で観客から拍手が巻き起こった。また、会場を沸かせたコレオシークエンスは1.21ものGOEがつき、これは全24選手の中で3番目に高かった。今シーズンの自己ベスト更新となる139.51でFS9位、総合では10位となり「間違いなく人生で一番いい演技ができた」と満足感を語った。

(写真:2年ぶりの全日本で納得の演技を見せた周藤)

 「2年ぶりにこの舞台に戻ってこられて、皆さんにとても温かい拍手で迎えていただけて、もう演技前から少しうるうるしてきてしまった」。SPを13位で発進した周藤は、ケガを乗り越えて挑んだ大舞台で堂々たる演技を披露した。冒頭のトリプルアクセルと2回転トーループを着氷すると、さらに2本目の単独のトリプルアクセルも確実に成功させて高いGOEを獲得する。続く3回転ループは軸がブレてしまったがしっかりと着氷。さらに予定していた3回転ルッツのコンビネーションが単独の1回転になるミスも直後の3回転ルッツと3回転トーループでリカバリーし、練習で積み重ねた安定感の高さを見せた。6本目に挑んだコンビネーションは1つ目の3回転サルコーはこらえた着氷になったが、ダブルアクセルのジャンプシークエンスは「意地でもつけないと」と取りこぼさなかった。ステップシークエンスでは「緊張していて少し足がふらついた」とクラスターでつまずき手をついてしまう。それでも最後の3回転フリップも成功させ「ジャンプの面では(ミスを)ルッツのパンクだけにとどめられて、冒頭のトリプルアクセルなどもきれいに決められたので、この舞台でその演技ができたのはやはりとても自信になった」と舞い戻った全日本で見事な演技を見せた。

[大島菜央]

試合後のコメント
佐藤
――演技後にはコーチと抱き合う姿が見られましたが、どんな思いがあふれましたか。
 「そうですね。SPで悔しい思いをしていたので、FSではルッツをしっかり決めたいという思いが強かったので、先生ともそういった話をしていて、行く前にも『ここまでやってきたものを全部ぶつけてこい』と言われたので、それをそのまま達成することができて本当にうれしかったです」

――悔しい思いをしてもはね返せる自分の強さというのはどういうふうに自己分析しますか。
 「やはり今シーズンたくさん、GPシリーズとGPファイナルと戦ってきて、すごく自信とか、大きい大会で成功するという経験をたくさん積んできたので、その成果をこの全日本には出せたかなと思います。」

三浦
――3人そろっての表彰台というのはいかがでしたか。
 「こんな漫画みたいなことがあるんですねというぐらい。2人との思い入れというのは、本当に少し他と比べても強いという部分があったし、ジュニアの頃から一緒にスケートでまず戦うようになってから仲良くなって。3人でオフの間も一緒にいたりとかして、一緒に目標を立てて、結構未来図を描いたりしてという、結構全部がドラマみたいで、夢みたいなんですけど、本当に表彰式の時もほんとに泣きそうになるぐらい、実際少し泣いていたかもしれないですけど。本当に、自分の個人としてもうれしい結果ですけど、もう3人でというところで、さらにうれしさがあります」

――今シーズンはケガに苦しむ中で過去一番追い込んだとおっしゃっていました。オリンピックシーズン、どのような形でここまで戦ってきましたか。
 「全日本前、本当に死ぬほど追い込んで、ただ周りも絶対追い込んでいるだろうから、こんなの当たり前だろうなとは思っていたんですけど。自分もできることは精いっぱいやっていこうという気持ちでいったので、自分としては報われたかなと思います。でもさらに磨いていけるところはまだまだあるので、もっともっと強くなれるかなとも思います」

大島
――会場の後押しについてどのように思われましたか。
 「本当に、本当に本当に、お客様のおかげで、この声援のおかげで最後まで滑り切ることができたので、本当に感謝しかないです」

――大島選手にとって観客を盛り上げるというのはどれくらい大事なことでしょうか。
 「もちろん、やはり競技者でありパフォーマーであるので、本当に競技者として点数を追うことも100パーセント大事ですし、お客様に演技としてパフォーマンスを楽しんでいただくことも100パーセントどちらも大事だと思っているので。そこは本当に大事、一番大事だと思っています」

周藤
――ジュニアのころに大きいケガをして、そこから戻ってくるというのは大変だったと思いますが、念願の場所まで戻ってきて、この2年間の自分の頑張りをどんなふうに評価しますか。
 「本当に骨折した当時は半年間ぐらいずっと痛くて辛くて。まず足首の可動域が全然曲がらなくて、90度以上は全然曲がらないという状況で、もう歩くのも厳しくて。またこの舞台というか、スケートに戻れるのかなという心配もすごくあって。でもやはり先輩方だったり、ライバルたちからだったり、いろいろな方に応援のメッセージをいただけて。それでライバルの活躍を見て絶対に戻ってやるっていう気持ち(もありました)。とにかく急いで戻ってきた2年間でした」

――シニアに上がってまた次の新しい一歩にもなると思いますが、シニアに向けてどんなふうになっていきたいですか。
 「鍵山選手のように、やはり一本一本のジャンプで4点近い加点がつく選手になっていくと、おのずとトップになっていけると思うので、とにかくGOE(を上げるための)の練習をしていくのと、シニアに上がってやはり4回転が必須なので、来シーズンの始まりまでには4回転2種類をちゃんと間に合わせて、シニアでちゃんと戦っていけるように、悔いのないシーズンにしていきたいと思います」