尾川メイジ、グランドスラムの夢潰える/全日本大学選抜選手権

1999.01.01
 東日本リーグ戦での復活優勝からはや1ヵ月。尾川メイジの第2戦が幕を開けた。今大会は関西の強豪校も集った全国規模の団体戦だ。「グランドスラム(4団体戦オール優勝)」(尾川主将・政経4)を目標に掲げた尾川メイジにとっては絶対に落とせない一戦であったが、準決勝で関大に敗北。無念の3位に、拳士らは涙をこらえきれなかった。

 「仕上がりは良い」(株本コーチ)。拳士らは確かな自信を得ていた。尾川メイジ発足時から続いた地獄のような稽古。昨年度から増加したその稽古量が実を結び、東日本リーグでは2年ぶりの王座戴冠を果たした。「おれのやり方が間違っていないことが証明された」(尾川主将)。今団体戦へ向けたこの1カ月間は、優勝をつかみ取った拳にさらなる磨きをかけてきた。

 トーナメント序盤。週6日にも及ぶ走り込みから生み出された強靭(きょうじん)な足腰で、次々と相手を組み伏せていく。格下である大阪学大、名古屋市大を文字どおり“なぎ倒した”。準々決勝では古豪・龍谷大と対決。この日、敢闘賞に輝いた後山の快勝を皮切りに勝利を重ね、3勝1敗1分で優勝候補の一角を撃破した。
 準決勝で迎え撃つは団体インカレ連覇中の強豪・関大だ。だがこの大一番で下級生の詰めの甘さが露呈してしまう。平松(法1)、神田(理工2)共に、開始早々の面突きで一本を奪うも、「勝ち急いでしまった」(神田)と冷静さを失い、瞬く間にポイントを取り返され逆転負けを喫した。副将・岡部(文1)は勝って尾川主将に望みをつなげたいところであったが、得意の組み技に持っていけず、面突きをたたき込まれ敗北。優勝の夢は尾川主将の眼前ではかなくも崩れ去った。ショックを隠し切れない尾川主将はしばし立ち尽くし、その場から動くことができなかった。
 「勝負は終わってみるまで分からない」(牧コーチ)。一進一退の攻防。勝敗を分けた勝利への執念。勝負の難しさをここに見た。優勝を信じていた拳士らは沈み込み、ただ涙を流すことしかできなかった。
 残された3位決定戦へ向け、応援に駆け付けていたOBらからげきが飛ぶ。「3位を取って締めるぞ!」、「気合い入れてけ!」。最後は牧コーチの掛け声のもと、恒例の円陣。悔しさを振り払い、再び闘志をたぎらせ大商大戦に臨んだ。

 先鋒戦には尾川主将が出場。左の前拳を中心に試合を組み立てていった。巨漢の相手に組み付かれるも粘り腰で寝技へ持ち込ませず、鋭い突きをたたき込みチームに先勝をもたらした。だが次鋒の神田は戦い方に幅を持たせられず、組み技一辺倒の戦いに。得意の分野でも圧倒できず、面突きなどを決められあえなく敗退。続く矢島(文4)はこの日初の出場。就職活動による練習不足が懸念されたが、これまで培ってきた拳法で相手をねじ伏せた。矢継ぎ早に繰り出した組み膝と右面突きで一本を奪い、鮮やかな勝利を果たした。一方、副将・宮下(文4)は「最悪だった」。投げを見舞うも、体を入れ替えられ下になってしまう。必死に食らい付くも、抑え胴突きを決められ完敗を喫した。
 2勝2敗で回ってきた大将戦。勝負の行方は後山に託された。後山は打撃から組み技に移行。組み付いて相手を投げるも、こちらも目まぐるしく体勢が入れ替わる展開に。だが相手の力をうまく利用し、上を取って抑え込み、勝利の抑え胴突きをたたき込んだ。猛る後山。沸き上がる明治サイド。紙一重の勝負を明治が制し、3位を死守した。

 後山は5戦全勝で敢闘賞に輝いた 今大会の優勝校は関大だった。だが「関大との力の差はない」(後山)。中大も決勝で大将戦までもつれ込む大熱戦を繰り広げたように、かつての最強校はもはや飛び抜けた存在ではない。関西発祥の拳法は関東でも成熟。東の拳は間違いなく西をおびやかすまでに成長を遂げている。東の明治・中大・早大、西の関大・大商大、龍谷大の勢力争いは続く。次に西と交わるのは最終戦、大阪府立での団体インカレだ。尾川メイジの天下統一は成るか?!

試合後コメント

秋谷部長
「今の明治は4年生が強く、上手くリーダーシップが取れている。今が一番良いチーム。今日の試合は府立での団体インカレに期待が持てる試合。秋につながる良い大会だった。府立では7人をどう使っていくのかがカギになる。今年は部長に就いて3年目。毎年団体インカレは大阪まで観戦に行っている。今年こそ団体インカレで優勝できそう。楽しみだ」。

北野副部長
「紙一重。努力して、正々堂々と戦っていた。3位だったが、優勝してもおかしくなかった。決勝で関大と当たっていれば勝ってたかもしれない。他大との差はない。部員は一生懸命やってくれた。目的を持っていい学生生活を送れていると感じた。みんなには、この先も努力を続けてください。ごくろうさまでした、と言いたい」。

一ノ宮監督
「1、2年生は詰めが甘く、勝つ執念がまだ身に付いていない。4年生には就活などで練習が満足に行なえない選手もいた。でも今日の経験は必ず秋につながる。良い弾みになった。結果として3位になれたが紙一重の勝負だった」。

尾川主将
「完敗。関大のほうが練習してきたってこと。でもこっちも練習を信じて、やることはやってきた。一本も取れてる。これからは体力をつける練習に重点を置く」。

後山
「明治は取りこぼしがいくつかあった。関大との差はないが、関大は一つ一つの練習がきめ細やかにできていたと思う。3位は最低限の順位。結果には満足していない」。

宮下
「最悪。練習していたパンチが出せなかった。1年生に負けないように、レギュラー入りして、府立で校歌を歌いたい」。

肥下(法3)
「優勝できると思っていた。それくらいの練習をしていたから。もっと役に立たないといけないと感じる。これから4年生に対して恩返しができるように頑張りたい」。

神田
「勝ち急いで負けてしまった。まだまだ改善点がある。もっと立ち技ができるようにならなければダメ」。

岡部
「調子は良かった。関大戦で戦った相手は同級生だったので絶対に負けたくなかった」。

平松
「頑張っているつもりだったけど、甘さが残っていた。中途半端に満足していた。(他大と対戦することに関して)何をしてくるか分からないから、考えすぎて基本がおざなりになってしまった。これからちゃんと仕留められる拳法を目指す」。