水谷単複3連覇達成!しかし今後の明治に不安も…/全日本選手権
日本最高峰の大会である全日本選手権。日本で卓球をしている者なら全てが目標にしている大会だ。今回、水谷隼(政経1)が3度目の頂点に立った。しかも、史上初の、10代での単複3連覇という偉業を達成。また混合ダブルスでも、水野(営4)・梶本(早大)組が、昨年より順位を一つ上げ、準優勝を果たし、各種目で明治の活躍が見られた。しかし一方、昨年はシングルスでランク決定戦に2人進出したにも関わらず、今大会で進出できたのは水谷1人のみ。来年度の団体戦に不安がよぎる結果となった。
<男子シングルス>
男子シングルスには、昨年よりも2人多い13人が本学から出場した。しかし、激戦を制し4回戦に進出することができたのは、水野(営4)一人。残るはシードで4回戦からの出場となった軽部(営2)、水谷が出場した。
4回戦からは7セットマッチのゲームとなる。その4回戦の水野の相手は、今大会の準優勝者でU18世界ランク1位の松平健太(青森山田高)。「昔から知っている仲」(水野)の2人の試合は終始松平がリード。水野は4―0のストレートで敗れた。「こんなにあっさり負けたこと無かった。思っていた以上に強くてできなかった。残念」と水野は悔しさをにじませた。
昨年はランク決定戦で惜しくも敗れた軽部。今年はランク入りすることを目標に試合に臨んだ。その手前の4回戦で、軽部はジュニア男子ベスト8の森本(愛工大名電高)と対戦。序盤、圧倒的に相手が試合を有利に進め、2セット連続2―11という点差で落としてしまう。気持ちを切り替え臨んだ第3セット、軽部が意地を見せ、声を出し必死にボールに食らいつく。そのまま11―8、11―9で2セット連取し、自分のペースつかんだかと思いきや、自身「今はスランプ」と言う通り、再び相手ペースに持っていかれてしまい、まさかの初戦敗退となった。
一方、単複3連覇がかかった水谷。「連覇は難しい。実際、去年一昨年も五分五分の勝負で勝ってきてるんで」と話し、シングルス4回戦に臨んだ。相手は川崎(協和発酵キリン)。1セット目を11―7で取るが、競りつつも、2、3セットを連取されてしまい、見ている者に不安がよぎる。しかし、ここでは終われない水谷が、1点取るごとに吠え、3、4セット目を奪い返した。第6セット目は両者引けを取らない攻撃でデュースへもつれ込む。それでもやはり19―17という接戦を制し、勝利したのは水谷だった。
その後、5、6回戦は難なく勝利し、準々決勝に進出した水谷。対戦相手はダブルスパートナーの岸川だった。この対戦の日を、「1番重要な日。今日できれば絶対大丈夫」と、水谷は小野に話していた。いよいよ始まったその決戦。まず1セット目は、水谷が落ち着いたプレーで先取。しかし続く2セット目は岸川に奪い返される。3セット目もデュースで岸川に。それでも4セット目のデュースを制したのは水谷。これでセットカウント2―2。お互いの手の内を知っている相手同士だからこそ、その試合も熱くなる。会場の誰もが、この試合に注目した。運命の5セット目、このセットを取った者に、試合はかなり有利な展開になる。しかし3―11という点差で岸川に奪われてしまう。水谷には、もう後が無い。緊張の6セット目、水谷は我慢強く強気で攻めた。その勢いのまま、11―6で勝利しセットカウント3―3に。勝負は第7セットへともつれ込んだ。序盤、岸川が圧倒的リード。4―8まで点差が開いていた。ほとんどの人が水谷の敗北を考えたとき、水谷はあきらめていなかった。開き直って逆に作戦を立て直し、流れを変えるためにもバックサーブを使用した。そして1点、また1点と追い上げ、8―8の同点にまで追いつく。そこで決め球を岸川にストレートに返され、またリードされる。しかし、ここで弱気にはならず、「とにかく強気、強気で」プレーし、そのまま相手に1ポイントも与えず水谷の勝利!水谷は全身で喜びを表し、明治の応援席も「俺らの応援の力ですね。気持ちが伝わったって感じ。チーム力が個人戦に出たって感じです」(原(直)・文2)と、喜びに揺れた。試合後、水谷は笑顔の岸川と固く握手を交わし、「岸川さんのためにも絶対優勝します」と誓った。
そして迎えた準決勝、相手は高校の後輩、上田(青森山田高)だった。上田は今大会ジュニアの部優勝という実力の持ち主。しかし、この試合、水谷はどこか吹っ切れたかのように序盤から積極的に攻め、ストレートで勝利。早々に決勝進出を決めた。
決勝の相手は昨年度のインターハイ決勝と同じ、松平健太。またも母校の選手との戦いで、お互いをよく知るが上に難しい戦いとなる。接戦ながらも3セットを連取し、そのままストレートで水谷の勝利かと思われたが、第4セット目を松平に奪われてしまう。第5セット目も松平のリードで進むが、また水谷がサーブで流れを変え、5―9から5点連続得点で一気に10―9へ。デュースとなるも、先輩、そして日本の王者としての貫録を見せ、17―15で勝利し、単複3連覇を達成した。
両腕を振り上げ勝利の喜びを表した水谷。試合後、これまで共に戦ってきた高山監督と握手を交わし、応援していた明治の仲間に囲まれ喜びを再確認した。水谷は「強いだけじゃなくていい選手、感動を与えられる選手になりたい。来年もまた優勝したいです」と、笑顔で語った。
今大会、明治の水谷の快挙に、監督、選手みんなで喜んだ。しかし、水谷以外の選手の目立った活躍が見られなかったことで、これから1年間の明治に不安がよぎる。1人だけが勝っても団体戦では勝つことができない。今大会を成長するきっかけとし、今年も“団体戦の明治”の活躍が光る1年にしてほしい。