全日本選手権特集 (3)

 全日本選手権特集第3回として今回お送りする選手は、2年ぶりに全日本選手権に出場する鳥居拓史(文3)だ。昨年は出場権を得られず、悔し涙をのんだ鳥居。あの悔しさから1年、今年の鳥居は一味違う。

――シーズンが半分ほど過ぎましたが、現在の調子はいかがですか?
 ショートがほぼノーミスでできるようになってきました。(10月の)東日本選手権でも5位に入ることができましたし、(11月の)オール関東選手権では久し振りに150点を超えて、集中した演技ができたなって思いましたね。

――では、そんな中での課題とは何なのでしょうか
 ショートは良いんですが、フリーで最後まで体力がもたなくてミスをしてしまうことですね。演技中、手が下がってしまったり、ジャンプができなかったりといった部分です。体力がない中でも、力を入れるところと抜くところをしっかりメリハリつけて演技するようにして、克服したいと思っています。

――そのフリーは、今年はどういったテーマですか?
 リバーダンスというタップダンスの舞台がテーマです。

――なぜそのテーマにしたのですか?
 リバーダンスが東京公演をしたときに、たまたま見に行ったんです。そうしたらあまりのすごさに感動して涙が出てしまって。それでフリーでやりたいなって思ったのがきっかけでした。DVDを見て研究しながら練習していますが、激しく動く構成なので、今はまだ演技をすることでいっぱいいっぱいになってしまっています。もっと練習しないといけないです。

――昨年は腰のケガにも泣かされましたね。
 ケガと言いますか、自分は冬になると腰が痛くなるんです。今も練習のとき、終盤になると痛んできますね。そこで今年からはインナーマッスルを鍛えて骨がずれないようにするトレーニングをしています。専用のジムに通い出したんです。おかげで今年は痛み出す時期が遅くなりました。

――さて、もう間近に全日本選手権がせまっていますが、鳥居選手にとって全日本選手権とは?
 シーズンの中で一番重みのある大会だと思っています。ここで良い結果が出れば海外の大会への出場権も得られますし、また1年間の課題が見つかる大会ですね。そういった2つの意味で「次につながる」大会だと思います。

――昨年の出場できなかった悔しさを晴らしたいですね。
 そうですね、一昨年に出場したときもケガをしていてドクターストップを押し切って出場したので、満足いく滑りはできなかったですし。

――昨年、出場できないことが決まったときのことを教えて下さい。
 (全日本の予選となる)大会が終わって家に帰って、部屋に着いた瞬間、兄(※1)が「焼肉行くぞ!」って連れ出してくれたんです。あんな優しい兄、初めて見ましたね(笑)。「今は忘れろ!」って言ってくれました。そのあとコーチを変えたりもしました。おかげで今年はがんばろう!っていう気持ちで、シーズンインすることができました。
(※1…鳥居選手のお兄さんもフィギュアスケートの選手。このとき、兄は同じ大会に出場し全日本選手権への出場権を勝ち取っていた。現在はフィギュアスケートを引退している)
 
――ありがとうございました。最後に全日本選手権への意気込みをお願いします。
 去年からの練習の成果を、気持ちの面での成長を、出さないといけないと思っています。精一杯の演技をしたいと思います。

 鳥居は「良い演技ができるかどうかは、試合前にわかるんです」という。それは直感のようなもので、「公式練習のときや試合直前に名前を呼ばれるときにわかります」と教えてくれた。昨年出場権を逃してから、着実にメンタル面での成長を見せている鳥居。さあ、今年はどのような”直感”を感じるのだろうか。その答えは、演技でわかるはずだ。

◆鳥居拓史 とりいひろふみ 文3 足立学園高出 161cm・52kg