インカレ事前インタビュー② 長尾佳音/日本学生選手権

2025.09.02

 9月4日から4日間、大学競泳界最大の大会・日本学生選手権(インカレ)が行われる。今シーズン最後となる大学対抗戦。『mighty』(力強い、偉大)というスローガンのもと、男子は総合優勝3連覇、女子はシード権獲得を目指す。

 今回は、長尾佳音(営4=武蔵野)のインカレ事前インタビューをお届けする。


(このインタビューは8月24日に電話にて行われました)

――インカレについて伺う前にFISUワールドユニバーシティゲームズ(WUG)についてお伺いしたいと思います。振り返っていかがでしたか。
 「前回の大会も出場して2回目ということで、同じような失敗というか『ただ出て楽しかったな』だけじゃ終われないなと思っていました。あとは女子のキャプテンを務めさせていただいたので、自分のことだけでなく、日本チームのことをまとめることは、前回の大会とは全然違うプレッシャーもありました。その中で自分の結果を出すことはすごく難しいかったですが、でも最後の400メートルの自由形で、すごく良い記録で終われました。期間が長いだけあって、その長い期間の中で色々修正して、自分で考えて結果を最後出せたので、すごい成長を感じられた遠征だったと思います」

――400メートル自由形は事前に伺っていた目標タイムと比較しても、かなりいいタイムだったと思います。
 「やはり最後の種目だったというのもあったし、あとは400メートルは上位の8人が決勝にいくので、1本目が終わってしまったら、2本目はなかったので。その前までは自分にプレッシャー感じたりとかもあったんですけど、そういうのがすごく吹っ切れたというか、覚悟を持って、この1本で終わってもいいというぐらい、1本目からもう全力出し切ろうと。覚悟を決めて臨めたレースが予選にあったので、その分『上げないと』という気持ちもあまりなく決勝に臨めました。気持ちが軽い状態泳げたのが逆にいい記録につながったんじゃないかなというふうに思います」

――銅メダルを獲得したリレーを振り返っていかがですか。
 「泳順とか泳者もコーチとかと話があった中で、私が年上ということと、女子キャプテン務めてることもあって、アンカーを務めさせていただきました。メダルはどこの国がとってもおかしくない状況なのは分かっていたので、緊張はすごくありました。予選も他のメンバーが泳いでくれていたので、予選を泳いでくれてたメンバーたちにもメダルを取りたかったです。佐野コーチと他の多くのコーチたちがいろいろ考えて『佳音に託そう』というふうにしていただいたと思うので。コーチと選手全員の思いを背負って、絶対に3番目に私が帰ってきたいという強い思いがありました」

――女子キャプテンとして、意識して行動されたことはありますか。
 「海外の試合を経験したことがない選手がたくさんいたので、声をかけ合ったりとか、あとは選手がレースに行く時に待機場所でみんなで送り出しをやったり。緊張をめちゃくちゃするのも自分も経験していて『楽しんで盛り上がってレースに行けるように』声かけをしました。チームの雰囲気は結構意識して私もみんなもやっていたんじゃないかなと思います」

――ドイツは初めて訪れたということですが、いかがでしたか。
 「食事の部分は正直全然、今回そんなに大変だなという部分はなかったかなと思います。海外のレースだと水温が冷たかったりとか、夜遅い時間のレースから次の日朝早かったりというところが今回も事前に分かっていて。そこはすごく気をつけるところだなと思っていたんですけど、何日もレースが続くときつい部分もあったなと感じます」

――空いた時間などで観光などはされましたか。
 「レースが始まってから帰るまでは全然時間がなかったんですけど、ちょっと早くドイツのに入っていたので、試合が始まる前までの時間で、街の方に観光も行ける時間はありました」

――どういったところに行かれたのでしょうか。
「ドイツはハリボーが本場なので、専門のショップに行ったりとか。そこでしか買えないものを求めて買い物に行ったりしていました」

――改めて、WUGが終わってからの現在のコンディションを教えてください。
 「ユニバーシアードぐらいから夏のシーズンはもう始まっていたので、結構強化やレースはやっていて、400メートル自由形でもしっかり記録が出たので、調子がかなり上がってきているなと感じています。今シーズン、どちらかというと200メートル自由形の方が記録的には伸ばせていないので、短いスピードの方を今強化したいなというところです。それを今集中してできていると思いますし、スピードの部分の調子も上がってきていると思っています」

――ここからインカレについてのお話に移ります。明大のキャップを被って出場するレースは最後になります。
 「私は学校で普段練習したりしないので、全学年の全選手と関わることというのは本当に少なかったですし、大学から出る試合も少なかったです。そう考えると大学での活動は本当にあっという間だったなと感じます。でも本当に明治で出るインカレは毎年楽しいし、ずっと1年生の頃から4年時には200メートル自由形で優勝したいと思っています。それが本当についに4年目になったなという感じです」

――1年時には「4年時のインカレで優勝したい」とおっしゃっていました。今、その言葉を振り返っていかがですか。
 「これまでは(日本)代表の選手もいたので、勝てないなというところはあったんですけど、4年目になって、本当に全然狙えるところにはいると思っています。全てを出して、本当に優勝を狙いたいなと強く、特に思っています」

――特に200メートル自由形は優勝候補として名前が挙げられます。
 「今年はリレーもあってチームとして戦うのもあるので、個人だけに集中ではないですけれど、やはりこのインカレまでに1分58秒台を出している選手も何人かいます。自分のベストは1分59秒台なんですけれど、58秒を出さないと優勝はないと思います。本当に今までの記録やレースにとらわれずに、もう思い切り全力でやってみようという覚悟はすごくあって。自分の記録もそうですし、勝負にこだわりたいなと思っています」

――長尾選手はこれまで多く表彰台に登ってきましたが、優勝からは遠ざかっていると思います。改めて、金メダルに懸ける思いを教えてください。
 「全中(全国中学校水泳競技大会)やジュニアオリンピックは優勝もしていた経験があって、インターハイでもそれに続いてというところではありました。それでもインターハイでは2位で終わって、大学に入ると4年生までいるので、そんなに簡単に勝てるような場じゃないと感じていて。やはり高校とか中学の時と違って、本当に大学4年生は本当にこれで終わりなので、自分が悔い残らないように終わらせたいですし、去年の4年生も最後優勝している選手もたくさんいますし、表彰台のてっぺんに立ってインタビューを受けてみたいです。あと、チームのみんなが勝つと盛り上がるので、楽しく盛り上がる場面をイメージしています。でも優勝へプレッシャーをかけすぎると良くないので、まずは順位もですけど、記録をしっかり狙えば優勝がついてくると思っています」

――4年間を振り返って印象的だったレースはありますか。
 「一番は2年目のインカレです。去年から自分が女子の中では一番上になったので、先輩と戦うインカレは全然経験できていないんですけれど、2年目は4年生の先輩がいたので、一緒にチームで戦う楽しさを感じました。その時は女子でシード権も取れましたし、先輩が個人レースがある中でもリレーも全力で泳いでくれたり、すごく頼もしいかっこいい背中を見せてくれてたっていうのが、すごく自分の中で印象的です」

――強力なルーキーも入ってきました。女子チームの目標を教えてください。
 「もちろんシード校に入ることは目標としていて、あとは自由形の強い選手がそろったなと思っているので、4×100メートルのフリーリレーと4×200メートルのフリーリレー、どちらも優勝をねらえる可能性があるな思っています。そこを取りたいですし、特にその4×200メートルはインカレの最終種目で、私としても本当に最後のレースです。明治のチームとしても男女アベック優勝したいという目標を全体として掲げているので。最後のレースで明治が一番を取るとすごく盛り上がります。みんな一人一人の個人のレースで得点を取ることもそうですし、あとはきついレースが重なる中でもしっかりリレーも力を入れて決勝で勝負することを頑張っていきたいと思います」

――『学生新聞Award』内のアンケートでは木津喜一花選手(商3=淑徳巣鴨)が「(注目は)4年生のお二人」とおっしゃっていました。ともにラストイヤーの遠藤渚選手(理工4=八王子学園八王子)とは何かお話はされていますか。
 「一緒に練習はできていないので、そんなに普段からコミュニケーション取る場は少ないんですけど、彼女も4年生でメドレーリレーも第一泳者を毎年任されています。彼女自身としても最後のレースだと思うので、私たち4年生は『かっこいい背中を見せてくれる』ことを経験しているので、私たちが今年は引っ張っていかなきゃなと思います」

――長尾選手は「今年は女子にも注目してほしい!」と書かれていました。
 「去年それぞれ個人としてしか戦っていなかったので、チームの総合力も高くなっているところも見てほしいです。そのためには一人一人が強いだけじゃなくて、リレーも上で戦えるぐらい強いチームなんだぞというところを見てほしいというか、今年は頑張りたいところだなと思います」

――男女それぞれの注目選手を教えてください。
 「女子は成田実生選手(情コミ1=淑徳巣鴨)が注目かなと。この間も世界ですごく活躍していましたし、インカレでも個人ももちろんですけど、リレーもすごく戦力になってくれると思います。男子は吉田悠真選手(農3=春日部共栄)かな。WUG一緒に行って悔しい思いをしているのも知っていますし、あとは200メートル平泳ぎはエントリー1番で。廣島偉来選手(令7政経卒)など、明治はブレ(平泳ぎ)が強いというのが今まであったと思うので、それを引き継いでいってほしいなっていう期待も込めて、優勝取ってくれるんじゃないかなと」

――成田選手とは大学に入ってからの関わりでしょうか。
 「東京都の国体とか合宿とか、遠征など一緒行きました。でも大学になるまでは、高校とか中学で学年が被らなかったので、一緒のチームとしては全然なかったです」

――チームが一緒になり、改めてどういう印象を持たれていますか。
 「レースになるとすごくかっこいい感じなんですけど、中身は1年生だなという感じの幼さや純粋さがあるなと感じます」

――吉田選手とはどういった会話をされていますか。
 「ユニバ(WUG)の時にチームとして戦っていたので、めちゃめちゃ落ち込んだと思うし悔しかったと思うんですけど、みんなといる時にそういう雰囲気も出さずに、最後までチームの応援とかも積極的にしていました。すごく印象的だなって私の中では思っています」

――昨年度、五味智信さん(令7商卒=現ミキハウス)がおっしゃっていた「インカレはお祭りみたい」という言葉が、私自身印象に残っているのですが、長尾選手はどう感じておられますか。
 「まさに本当にお祭りみたいだと思います。1年間のどの試合よりも楽しさがあって、インカレに勝るものはないなと毎回出ていて思いますし、応援の力はすごいです。自分のレースで力に変わるんだなとすごく感じる試合ですし、普段の選手権だと自分の結果、記録のために泳ぐと思います。でも今回で言うと、ちゃんとチームの得点にもなりますし、リレーもあります。自分個人のレースでもたくさん応援してくれてる選手がいるので、そういうところですごく普段のレースより安心して楽しい気持ちで臨んでいけると思います。チームで戦う試合ですね」

――明大の応援はひときわ目立つ存在だと思います。実際にレース中にはどう感じますか。
 「さすがに自分の泳いでる最中に聞こえるかと言ったらそれはないですけれど(笑)。でも、スタート台に立った時がすごくドキドキする瞬間だと思うんですけど、そういう時に『みんなの応援している顔とかを見ろ』と監督も言うくらい、みんながついていると思っててレースに臨めます。自分のレースじゃなくても、自分が応援している側でも、選手がいい記録を出してチームが盛り上がる瞬間がすごく楽しいし、すごくいい気持ちになる瞬間です。自分がそれをやる側になりたいなと思ってレースに臨めるので、普段よりも力が発揮できます」

――この最後のインカレを一言で表すなら、どう表現しますか。
 「目標を決めて、もう全てを出し切ることに尽きるかなと思います。ここでいい記録、結果が出なかったとしても、もう本当に後悔ないくらい、全て出し尽くしたなと最終日に思えるぐらい、全部のレースを頑張りたいです。この夏のユニバ始まる前ぐらいのシーズンから、本当にもう最後の夏だなと覚悟を決めて毎日頑張ってきたことに変わりはないので、出し切った先に、自分のいい記録であったり結果がついてくるんじゃないかなと思います」

――「最後の夏にする」ということですが、インカレは競技人生最後のレースということでしょうか。
 「もう私はこのインカレで、もう水泳自体引退するので、もう本当に水泳人生としての最後の試合になります」

――最後に、改めて具体的なタイムの目標を教えてください。
 「200メートル自由形は1分58秒台に突入して、1秒ぐらい自己ベストを出せば、優勝という結果もついてくるんじゃないかなと思っていいます。400メートル自由形は、ここも多分すごく接戦になるんじゃないかなと。自分が4分90秒台を出せばトップで戦えるぐらいにはなってくるので、自分の記録を上げて優勝争いまで行けたらいいなと思います。あとはリレー種目で言うと、もちろん優勝を狙っていきます」

――今までお世話になったチームメートや保護者の方、コーチの方々にメッセージをお願いします。
 「親とかコーチも、一緒に戦ってきた選手も、本当にみんながいなかったら、すごくつらい合宿とかも多分乗り越えられなかったと思います。サポートもなかったら合宿ができなかったりとか、普段の食事の面とかも、すごく親がサポートしてくれました。そういう周りの人たちが感動してくれるような、今までサポートしててよかったなと思ってもらえるような、恩返しの気持ちが伝わるレースをしたいです。一緒に戦っている選手としては、4年生がみんな覚悟を決めて今回の試合に臨んでると思うので、そういう覚悟を決めた4年生のかっこいい背中にみんなついてきてほしいです」

――ありがとうございました。

[橋本太陽]