世界選手権事前インタビュー 成田実生/世界選手権

2025.07.27

 7月27~8月3日にかけて、世界選手権がシンガポールで開催される。世界に挑む選手の思いとは。
 200メートル個人メドレー、400メートル個人メドレー、200メ―トル平泳ぎに出場する成田実生(情コミ1=淑徳巣鴨)のインタビューをお届けする。

(この取材は7月6日に行われたものです)

――日本選手権で出場した全種目で世界選手権の出場が決まった時の心境を教えていただけますか。

 「今回の日本選手権は、初めて3種目に挑戦する大会だったんですけど、目標は3種目全部で優勝して、代表権を獲得するという高い目標でした。それを達成できたことで、気持ちの面でも体力面でも、自分の成長をすごく感じられて、本当にうれしい気持ちでいっぱいでした」

――2年前の世界選手権やパリ五輪では400メートル個人メドレーのみでの出場でしたが、今回は3種目の枠を勝ち取りました。特に個人メドレー2種目で優勝された時のことを振り返っていかがですか。

 「200メートル背泳ぎでは自己ベスト更新はできなかったのですが、まず1種目目の200メートル個人メドレーで、理想としていたレースを達成できました。やっと自分の目標や理想のレースができたな、という気持ちになりました。400メートル個人メドレーは、0.01秒の自己ベスト更新でしたが、精神的にも体力的にも一番きつい4日目、最後の種目で自己ベストを出せたのは、自分の気持ちの強さが出たレースだったと思います。最後まで強く泳げたと感じています」

――翌日から強化合宿も3回あったと思うのですが、いかがでしたか。

 「まず1次合宿は、みんなで一気に強化するというよりは、チームを作り上げる感じでした。レース直後ということもあり、きついメニューは少なかったですが、他の選手と交流できて、すごく刺激をもらえた合宿になりました。2次合宿はゴールデンウィークの期間で、オフが1日しかないハードな練習でした。この合宿はすごく自分の成長をさらに感じることができた合宿だったなという風に思っていて、東洋大学の平井コーチのグループで練習したんですけど、以前は平井コーチのメニューができないことが多かったんです。それが今回、何回か挑戦する中で、できるようになってきたと感じることができて、すごく成長を実感できました。3次合宿は少し体調を崩してしまい、大会には出られなかったのですが、合宿から大会への流れの中で、本番を想定したグループ分けやメニューを行い、レースを意識する場面も多く、気持ちの面でも泳ぎの面でも準備が始まったなと感じました」

――体調を崩されたのは、東京都選手権でしたよね。疲労のような感じだったのですか。

 「コロナや胃腸炎、インフルなどではなく、熱もすぐに下がったので原因はわからなかったです。でも今はもう大丈夫なので、気をつけようと思います」

――3次合宿が終わって、そのままスペインに行かれたんですか。

 「3次合宿のあと、一旦家に帰ってから、またみんなで練習をして、その練習からスペイン合宿に参加しました」

――標高が高いところでの練習でしたよね。

 「はい、高地合宿でした」

――スペインでの練習で印象に残ったことはありますか。

 「初めて本格的な高地(2000メートル級)での合宿を経験しました。今までは長野県にある準高地には行ったことがあったのですが、そこではハードな練習をすると本当に苦しくて、足がしびれるほどきついメニューもありました。でも、長距離のメニューで低い脈で楽に速く泳ぐという内容が、以前より速く泳げるようになっていて、自分の成長を実感しました」

――結構標高が違うと、練習のきつさも変わるんですね。

 「はい、すごく変わりました」

――オフの日の思い出などはありますか。

 「オフの日はアルハンブラ宮殿に行ったり、ふもとの町で外食をしたりしました。最初は、高地に順応するために、山登りにも行ったりして、オフの日もアクティブに過ごしました」

――世界選手権に向けた練習を通して、ご自身で成長を感じたことはありますか。

 「〝楽に速く泳ぐ〟ことが前よりもできるようになりました。特にプル(腕のかき)の力が強くなったと感じます。以前はプルが苦手で力が入らなかったのですが、最近はしっかり水をかけている感覚があります」

――大会までの今後のスケジュールはどのような感じですか。

 「明日からは所属先で練習して、火曜日からナショナルトレーニングセンターに泊まり込みで練習します。21日に日本代表が集合して直前合宿を行い、23日に出国します」

――代表選手との関係も深まりましたか。

 「はい。スペイン合宿は一部の選手だけでしたが、交流できる時間が多くて、きつい練習も一緒に取り組めて、刺激をたくさんもらいました」

――特に仲良くなった選手はいますか。

 「今回、初めて同部屋になった難波実夢さん(JSS)と仲良くなりました。以前から代表は一緒でしたが、あまり話したことがなかったんです。でも今回はすごく優しくしていただいて、部屋でもリラックスできて楽しかったです」

――2年前の世界選手権やパリ五輪ではメダルに届きませんでした。国際大会に懸ける思いはどのようなものですか。

 「福岡の世界水泳やパリ五輪を経て、今の自分の立ち位置が以前よりはっきりしてきました。どう戦うか、どういう気持ちで臨むかイメージがしやすくなっています。以前よりも正確に準備ができているなと思います。世界大会でメダル獲得や自己ベストを更新したことがまだないので、今回は絶対に達成したい強い思いがあります」

――大会を控えた今の気持ちはいかがですか。ワクワクと緊張、どちらが強いですか。

 「どちらもあります。寝る前にレースのイメージをすると緊張もするし、観客の様子を想像するとワクワクもします。入り混じった感情です」

――大学生活についても少し伺います。春学期が終わりますが、生活はいかがですか。

 「最初は1日1日が長く感じたのですが、振り返るとあっという間です。勉強もつまずくことはありますが、自分で選んだ教科だからこそ頑張れるし、明治大学の環境も前向きな気持ちにさせてくれます。大変ですが、勉強が苦にはなっていません」

――授業と水泳の両立は大変ではないですか。

 「合宿や大会で授業に出られないことはありますが、今回はテストが1週間前から受けられたので助かりました。課題を後回しにしがちなところは直したいです」

――高校時代と大学での大会の気持ちの違いはありますか。

 「高校生のときは〝ジュニア〟という感覚でしたが、大学生になって〝シニア〟という雰囲気を強く感じるようになり、気持ちも引き締まるようになりました」

――海外遠征で意識していることはありますか。

 「部屋を自分のスペースにするというのは意識しています。卓上カレンダーを持っていくとか、ちょっとした工夫でリラックスできるようにしています。でもあまり違う場所だからといって寝れないとかはないので、あまり意識してることはないですね」

――時差の調整はいかがですか。

 「スペインは時差が大きかったので大変でしたが、太陽を浴びるといいと聞いて、午後の練習の前に陸上トラックを歩いて日光を浴びるようにしました」

――海外にも慣れてきましたか。

 「はい。少しずつ対応のコツがわかってきました」

――大会まで残りの期間、どんな練習をしていきますか。

 「あと2週間ほどあるので、スペインで課題だった“ハードを続ける”メニューに再度取り組みたいです。レースをイメージした練習もやりたいです」

――最後に、世界選手権への意気込みと目標をお願いします。

「一番大きな目標は400メートル個人メドレーでのメダル獲得です。そのためにも世界大会で自己ベストを更新することがメダルにつながってくると思うので目標にしています。200メートル個人メドレーや200メートル背泳ぎも400メートル個人メドレーにつながるレースができるよう、3種目すべて全力で目標を達成したいです」

――ありがとうございました。

[寺井和奏]