慶応に惜敗、大学選手権出場遠のく・・・/関東大学対抗戦

1999.01.01
 負ければ大学選手権出場が危ぶまれる状況に陥る中で行われた今年の明慶戦は、あと一歩まで詰め寄るも届かず敗れるという結果に終わった。
 
  勝ちたかった。とにかく勝ちという結果がほしかった。対抗戦の序盤でまさかの2連敗を喫し、勝ちの味を忘れかけてしまった選手たちは、その瞬間を得るために一歩でも前進しようとした。トライへの執着は捨て、敵陣でペナルティを獲得すれば迷わずPGの3点を狙いにいった。確実に得点を積み重ねていこうとする姿勢の表れだった。さらには、「“明治はFW”という自分たちのこだわりを出していこう」(杉本晃主将・政経4)の言葉通り、失いかけた明治ラグビーを取り戻すため、今シーズン当初から使い続けてきたキックやBK展開を多用せずあえてFWにこだわった。もがき苦しみながら、必死に明日の自分たちの姿を探し求めるかのように。

 その戦い方がはまったのだろうか、スクラムでは圧倒し、第3列がサイド攻撃を繰り返すことでFW戦を優位に進めていく。たが、あと一歩攻めきることができない。ラインアウトでは相手の意表を突くサインプレーも見せたが、「大事なところでサインなどのミスが多かった」(鎌田・法3)と自分たちのミスで生かしきれず。その後のミスはせっかく引き寄せかけた流れを相手に引き渡すことになる。前半半ばには機動力で勝る慶応にショートパントでディフェンスラインの裏を突かれあっさりとトライを献上。結局、7点のビハインドをもって勝負の決する後半に挑むこととなった。

 その後半でもPGとDGで着実に差を縮めていったが、最後に致命傷となったのはやはり相手の機動力を生かしてかき回す攻撃からだった。速い展開とBKの巧みなステップワークに、人数を置いていたはずの外はそれを感じさせないほど簡単に割られてしまった。あまりにも痛すぎるトライ。明治も試合終盤になって待望の初トライを奪取するが、ロングキックで大きく陣地を回復し、いやらしいまでに密集でテンポを遅くしてボールキープを図ることで時間を消費する慶応に対して、奇跡の大逆転トライを奪う時間は残されていなかった。最終スコアは5点差という緊迫したものだったが、3連敗という記録はその点差以上に重くのしかかった。


 例年に同じ11月最初の週末、グラウンドにはこれまた同じ2チームの姿があった。しかし、昨年とは全く違う状況下での戦い。特に明治は考える必要すらもないはずの大学選手権「出場」を懸けていた。それにも関らず、冬のにおいの立ち込める秩父宮にはたくさんのファンが詰めかけた。そんな多くの視線を集めた試合は、内容はともかくとして明治の敗戦で幕を閉じた。これで出場への道はさらに遠ざかることとなり、対抗戦は優勝争いを繰り広げる帝京大、早稲田という強豪との2試合を残すのみ。このチームでまだまだ終わりたくないという選手たちの思いは、見ている側としても同じ。あと1か月、いや、さらにその先まで紫紺のプレーを――。自分たちのために、そして次の2試合でも大きな声援を送るであろう多くのファンのために、意地を見せてほしい。

[大塩拓也]

~試合後のコメント~
藤田監督
「明治のこだわりを出していこうということだったがあまりにミスが多く出てしまい、結果に結びつけることができなかった。スクラムは本調子ではなかったが、けが人を擁する中よく健闘した。戦い方はもう絞り込んでいるので、帝京大戦、早稲田戦でも変わらない。あとは今日やったことの幅をさらに広げていく」

杉本主将
「今回は“明治はFW”という自分たちのこだわりを出していった。しかし細かなミスが響きPGで攻められてしまい、一つ一つのプレーの大事さを痛感した。PGを狙いにいったのは、まだ残り時間にも余裕があったため着実に点を取ろうという自分の判断からだった。もう後がないので一戦一戦必死に戦っていく」。

松浦
「取れるところでは絶対にとろうとPGをねらっていった。最後まで明治ペースだっと思うが、取りきれなかった」。

土井
「今週からの復帰だったがやるしかないという思いで臨んだ。スクラムとブレイクダウンでガンガン押せばいけると思ったが、スクラムの機会自体にあまり恵まれず出し切ることができなかった。神戸製鋼での合宿も控えているので、今日の負けを引きずることなく残りの期間全力でやっていきたい」。

鎌田
「FWで攻めることはできたが、大事なところでサインやラインアウトなどのミスが多かった。帝京戦は戦い方としては変わらないので、あとは精度を高めるだけ」。

山本
「今日はFWにこだわってやるという目標を達成できた。ラインアウトはサインミスがありうまくいかなかった。帝京大戦、早稲田戦共にやることを明確にし、それをやり切って臨みたい」。

杉本(博)
「筑波大、日体大と自分たちのやりたいことが空回りしてしまっていた。今回は改めて昨年の財産である“圧倒”を武器にFWでいこうと試合に臨み、実際ゲインもきれていて手応えがあった。しかしブレイクダウンでのフォローが甘く、倒れてからなかなか立ち上がれない場面が何度もあったので、今後サポートプレーをしっかりしていくと同時に反則もなくしていきたい」。

金澤
「今日は明治らしい戦い方をしようということだった。ミスからのPGでの3点が痛かった。(PGを重ねたことについて)FWで有利に立ち、狙えるところではPGで3点ずつ重ねていこうというプランであった。今日の試合は全員動いていたし、次につながるゲームであった。これからの相手はビデオを見て研究してくると思うが、自分たちはペナルティーを少なくして、シンプルに自分たちらしい戦い方をやるだけ。」

田村
「日体大戦のあと、自分としてはFBをやりたかったが、「おまえをSOで絶対使う」と言われていた。今日のゲームメイクはチームでやると決めてた。ただ、余ったときは自分の判断に任せられた。敵陣ではキックではなく、短いパスにこだわった。今日は前に衛藤とかを出せたのが良かったと思う。ただ、もっとゲームコントロールを勉強していれば良かった。ドロップゴールは、周りが「狙っていいよ」と言ってくれていたのでアドバンテージがでたらやろうと思っていた。「入るかなあ…」という気持ちだった。今日の試合は本当に勝ちたい試合だった。昨年色々な経験をし、今年は4年生に頼るだけでなく、衛藤たちとBKを引っ張りたい、という気持ちが強い。自分はケガをしていて、やっと今週調子が良くなってきた。今回の慶大戦は特にAチーム以下の部員たちが慶大のアタック、ディフェンスなどのビデオを観てくれた。藤田監督はケガばかりなのに大切な試合で使ってくれた。自分は周りに色々良くしてもらっている。だから、今日は特にその人たちのためにプレーをした」。

衞藤
「今日は絶対に勝てると思ってプレーしていたし、負けると思ってなかった。BKはとにかくゲインラインを切ってFWを前に出せた。相手はキックのケアが上手いので、空いたスペースを狙うことを徹底した。ディフェンスはお互いコミュニケーションをとりながら守れたけど、タックルが高く止めきれなかったのが反省点。帝京大戦、早稲田戦は今できること、今までやってきたことを出し切るだけ。試合に出ていない部員、ファンに明治らしいラグビーを見せたい」。

奥田
「とにかく今日は勝ちがほしかったが勝つことができなかった。ただ、今日の試合は手応えがあった試合だったので悔いはない。(PGは)チャンスがあれば確実に狙っていって、最後にトライを取れればいいという判断。同じようなチャンスを相手にも与えてしまったのが悔やまれる。(残り2試合は選手権も懸けた試合になるが)このチームでまだまだ終わりたくないし、5位でも何でもいいから選手権に出たい。魂を込めて戦う」。