筑波大にまさかの黒星…もう後はない/関東大学対抗戦

1999.01.01
 試合終了のホイッスルと同時に天に拳を突き上げた筑波大の隣で、力なくグラウンドに崩れ落ちた紫紺の戦士たちの姿に、思わず目を疑った。「1対1で圧倒できない相手になったときは厳しい」。立大戦での快勝後選手らが一様に見せた懸念が皮肉にもこんなに早く、的中する形となってしまった。格下相手への勝利に予断を許すことなく、自分たちの目指すべきラグビーをストイックに追求していたはずの彼らに、一体何が起こったというのか。

 前半は風上を利用し、まずまずといった試合運び。開始10分、敵陣22m付近で筑波大のペナルティ、田原がクイックスタートからそのまま先制トライを奪った。その後も事前の読み通り、互いにキックを多用した攻防が続く。そして32分、自陣でのヤンボールラインアウトから筑波大が展開とラックを重ね最後はFB大野が同点トライ。なんとか前半リードで折り返そうと積極的に攻め入る明治。そして前半終了間際40分、筑波陣ゴール目前でのマイボールスクラムで今季2本目のスクラムトライを決め、7点リードをもって後半につないだ。


 後半1分、敵陣10m付近での筑波大のペナルティで、明治はゴールを選択。開始早々の加点が追い風となるはずだった――が、無常にも呉(政経3)の蹴り放ったボールの軌道はわずか右に反れ、まさかのゴール失敗。「(PG失敗が)精神的にプラスになった」と筑波大・高木主将がのちに語るように、その後の形勢は両者驚くほど明暗が別れた。FW中心にビッグゲインを繰り返す筑波大と、筑波大の強烈なプレッシャーからミスを続発する明治。そんな状況下で筑波がトライに結びつけることはそう難しいことではなかった。7分には明治のマイボールラインアウトからターンオーバーし、その後素早い展開でトライ。23分には田村(文2)のロングキックをタッチライン間際でキャッチ、BKの快足が光り、その後は息つく間もなくトライを連取した。そして34分ダメ押し3連続トライであえなく試合終了。自分たちのミスからチャンスを与えそこから何の対処もできず、もう彼らになす術はなかった。

 完成度「85%」(藤田監督)の縦横無尽なラグビーで立大を一蹴した1週間前の頼もしい彼らの姿からは一転、皆が肩を落とし中には涙を浮かべる者までいた。「受けてしまった」。杉本主将を初め、多くの選手が漏らしたこの言葉。というのも対抗戦で明治は筑波大に4年連続勝利、負けを知らない現役部員たちは筑波大の脅威を知らなかった。「筑波を甘く見ていた」(山本・政経4)。立大戦以降の1週間はキックの処理を中心に“筑波対策”を講じたものの、ふたを開けてみればFW戦すら危うく、さらにディフェンスも大事な局面でタックルがかすりもしないような悲惨な内容。完全に甘かった、これに尽きるだろう。

 今後の対抗戦は、慶応戦を制した日体大、そして大学選手権4強の慶応、帝京、早稲田と強豪を残すのみ。決して「1対1で圧倒できる」相手ではない。優勝を目指す明治にとってこれ以降の敗戦はほぼ、その夢が途絶えることを意味する。アタック、ディフェンスすべてにおいて課題は山積、早急なチームの立て直しが必要となるだろう。もう、甘えは許されない。

[野村馨子]

~試合後のコメント~
藤田監督
「今日は筑波大の、明治を絶対に倒そうと強い気持ちで向かってくるのと、こちらの意識の甘さの差が表れた結果。向こうの一生懸命やるラグビーにやられてしまった。立大戦で成果を残し、自信を得たことが逆に過信を生んでしまった。システム的にはやっていたが、タックルで前へいけてなかったら意味がない。踏み込んでいないタックルでは相手にプレッシャーを与えることができない。昨年のFWでいく攻めから変化させ、局面ごとにいろいろな可能性を考えさせようとしているが、まだまだそれが考えきれていなかった」。

杉本主将
「試合の入りが悪くFWがあまり機能していなかった。タックルで前へ出れなかったこと、ペナルティを多く出してしまったのはメンタルの部分で受けていたのがプレーにも出てしまっていたと思う。スクラムでせっかくプレッシャーをかけてもその後の展開に生かすことができなかったのが悔しい。まずはミーティングを行いチームの立て直しをはかっていく」。

松浦
「もったいなすぎるとしか言いようがない。BKでいくという形にこだわりすぎた。FWでは勝っていたのだから、それで押せばもっといけていたはず。ディフェンスは向こうの方が激しかったし、こちらも攻めでの反則が多すぎた。今後は気持ちの面を変えていくしかない」。


「今日はタックルで受けに回ってしまった。タックルにしろボールを動かすところにしろ、どれも向こうの方が上回っていた。ディフェンスでも粘り負け。スクラムに関しては押せていたが、その後のプレーでプレッシャーを与えることができなかった。負けたことに関しては、今後のためにも素直に受け止めるしかない」。

山本
「(負けたことに対して)これが今の実力。成蹊、立教と対戦して自分たちが強いという過信があった。筑波をあまく見ていたところがあった。今日は1対1で
負けていた。これからは基本に戻って1対1で勝つということを意識してやる」。

杉本(博)
「筑波の予想以上のプレッシャーに受けてしまっていた。FWがラインに残りすぎていてフォローにいけなかった。後半はディフェンスを中心に声が出せていないなどコミュニケーションの欠如が露呈した。まずは練習中のミスをなくし、精度を高めていきたい」

田原
「今日はスクラムしか相手に勝っていなかった。前半はリードはしていたが、動きは良くなかった。筑波は後半立て直してきたが、自分たちはそれができなかっ
た。もっとボールを散らしたかったがFWが走れていなかった。これからは縦だけでなく縦横無尽なラグビーをやっていきたい。とにかく切り替えてやっていく
しかない」。

大須賀
「今日の負けは言葉では言い表せない。相手にプレッシャーをかけることができなかった。攻めでトライを取りきれるか取りきれないかで差が出てしまった。とにかく早く切り替えて今後に臨みたい」。