(4)天国と地獄を味わい、苦しんだ1年間/石崎孝志
春のリーグ戦、優勝決定戦の早大戦。セットカウント3対3で迎え、石崎が勝てば優勝という場面。その瞬間、石崎は2年前を思い出した。
天国を味わう
2年秋、早大との優勝決定戦、勝てば秋季リーグ連覇。セットカウント3対3となり、優勝の行方は石崎に託された。「すごい緊張して、プレッシャーもあった。だけど、自分の力を十二分に発揮できた」。石崎は降りかかるプレッシャーに打ち勝ち、勝利。秋季リーグ連覇に貢献した。「優勝した瞬間は何が起きたか分からなかった。気づいたら、みんなが自分の背中に乗ってきました(笑)」。この時の石崎は連覇という称号と、その連覇は自分が決めたという二つの喜びを味わった。
地獄を味わう
そして、今春、石崎は2年前と同じ状況に再び立った。「試合する前に2年前と同じだなと思い出した」。しかし、「力が入りすぎて、空回りした」と自分の思うようなプレーができない。しかも、相手は相性が悪いカットマン。終始自分のペースをつかめず、ストレート負け。その瞬間、チームの目標であった3冠の夢が崩れ去った。試合後のミーティングが終わり、石崎は足早に寮に戻った。「誰とも話せる状態ではなかった…。早く一人になりたかった」。みんなと騒ぐのが好きで、いつもその先頭に立っていた石崎。だが、小野主将が石崎を励ますために誘った食事も断るほど落ち込み、もがき苦しんだ。
インカレも…
春のリーグ戦以降、優勝を逃したショックからチームは立ち直り、心身共に充実して臨んだインカレ。予選から順調に勝ち上がり、準決勝、強豪・青森大と当たった。「試合に出場はできないけど、サポートの役割をしっかりこなそう」と石崎は意気込んでいた。しかし、チームは青森大から1ゲームも奪えず、2年連続の3位。「みんな力を発揮できていなかった。もっとサポートしなければいけなかった」と悔しさをにじませた。
最高の贈り物
そしてこの秋、ここまで全勝で迎え、最終日、秋季リーグ4連覇を懸けた戦いはまたもや早大が立ちはだかった。しかし、オーダーに石崎の名が連ねることはなかった。「試合には出場できないけど、準備もサポートもばっちりこなそうと思いました」。
そして、セットカウント3対1で迎え、ここでエース・水野がコートに立つ。石崎は水野に声を掛けた。「おまえが(優勝を)決めてこい」。彼が春、あと一歩で栄冠を掴み取ることができなかった悔しい思いを込めて――。石崎の思いを胸に秘め、水野は力強いプレーで相手を圧倒した。「水野は気持ちの入ったプレーをしていて、とても心強かった」。
優勝が決まった瞬間、「とにかく嬉しい。嬉しいという言葉しか出なかった」と晴れ晴れした笑顔で石崎はこう答えた。「明治で本当に良かった。まわりの環境にも恵まれていた。特に、同期と出会えて、4年間一緒に過ごすことができてよかった」。石崎は春に掴みとれなかったものより、一生輝くものを手に入れたに違いない。
◆石崎孝志 いしざきたかし 政経4 遊学館高出 177cm・63kg
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