
(2)新体操の魅力、思いを込めて精一杯の演技を/山本千尋
3歳のとき自ら「やってみたい」と始めた新体操は、柔軟でのあまりの痛さに泣いてしまう子がいるほどだった。現在は大学に通いながらもイオンで練習を続ける山本。授業が終われば片道2時間をかけてこの練習所に向かい、夜遅くまで練習に励んでいる。それでも山本は「新体操は生活の一部だから」と少しもつらそうな表情はしない。山本を幼いころから見守るナタリア・クズミナコーチも「大学に通いながらも最後まで手を抜かず練習している。努力を惜しまない強い子」と言う。そんな彼女の姿は、練習所の中でも一際輝き、「後輩のお手本になっている」(ナタリアコーチ)。
山本にはほかの選手とは異なる点がある。それは演技に使用する曲や技の構成、さらには衣装のデザインまで自らの手でやってしまうことだ。山本は体の柔軟に優れているタイプではない。ではその代わりに何ができるだろうか。考えた末にたどり着いたのが「全体のイメージを大事に、演技をつくりあげること」だった。まず曲を探し出し、その曲のイメージを感じ取る。そしてイメージした感覚が伝わるように、また得点を考えながら技を当てはめていく。「スポーツをしているけれど、演技者でもある」と山本はうれしそうに語った。
新体操の魅力。それは「ほかのスポーツにはない、芸術性の部分。表現ができるスポーツ」であることだろう。選手たちは単純に技をこなしているわけではない。そこに伝えたい思いを込め、体一杯に演技をしている。そういう視点で新体操を見れば、今までになかった新体操が見えてくる。今月5日から行われるインカレに出場する山本。選手として、表現者としてさらに成長した姿を見せてくれるはずだ。
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