(1)男子新体操発展へ向けて/日本体操協会・山田小太郎氏取材

1999.01.01
――男子新体操が国体で休止となった経緯は?
 国体の競技種目の中で他のスポーツと比べると普及していないこと、国際大会が開催されていないことが休止の理由となりました。

 国体全体の規模縮小が叫ばれる中、競技人口等を考慮し体操競技(器械体操・新体操・トランポリン)の中で競技参加の人数枠を18%減らすことが決まり、その中で先ほど述べた二つの条件が当てはまる男子新体操が削減の対象となりました。そこで国体での競技の廃止という声が上がりましたが、現状は休止の形を取っています。

――これまで男子新体操が国際化していくための活動はしてこなかったのですか?
 01年、02年に国際化を試みましたが、海外に普及させていく以前に国内で普及をしていないため、まずは男子新体操の国内普及を目指しました。それから国際化のための取り組みをしていき、01年までは男子新体操がある国は日本だけでしたが、03年ごろまでには7カ国まで普及しました。しかし、コーチや競技をするための資金が不足しているために、現在は3カ国ほどにとどまっています。

 ですが国際大会の開催を捨てたわけではありません。しかし、もともと男子新体操は日本発祥のスポーツで、もし他国で大きく普及に成功した場合に、その国によっていいようにルールが変更されてしまうのではないかといった懸念材料もあります。

――後継者の育成のために何か取り組んでいることはありますか?
 昔の男子新体操といえば高校から始める人が多かったですが、近年小学校、中学校からでも始められるジュニアクラブの数が増加しています。

 さらに国体での男子新体操休止にともない、新たにユースチャンピオンシップという大会を設けました。この大会は中学3年~高校3年を参加対象とした大会です。ジュニア選手がたくさん生まれることにより、男子新体操離れを防ぐことにもつながっています。

――競技の話になりますが、男子新体操をやる上で重要な要素は何ですか?
 瞬発的な動きに耐えられるような体づくりですね。そのために体幹トレーニングは欠かせません。それと練習に負けない心、試合に強い精神力を作り上げることです。練習でやってきたことを試合でいかに出せるかということです。体調の良し悪しに関わらず練習でやってきたことがそのまま試合に直結しますからね。

 団体ではやはり選手一人一人の個性を生かしつつも行き過ぎを抑えなければいけません。選手間の意思の統一、それに技術面でいえば演技のタイミング、ポジション、一体感が大事になりますね。

――男子新体操と女子新体操の違う点は?
 男子新体操は迫力とスピード感ある演技で人々を魅了するのが女子とは絶対的に違いますね。武道や球技だと男女間の競技に差はないですが、新体操という競技には男女間に大きな差があります。大会では男女の競技の差があからさまに出るので、特色としておもしろいですよ。

――山田さんにとって新体操とは?
 自分に対して目標を提示してくれたものです。競技自体は引退したけど今は男子新体操の価値をつくりだすことが仕事です。

 これからも男子新体操の素晴らしさを伝えていきたい。今後選手が人生を懸けても大丈夫なように、多くの人が自分のように新体操に打ち込めるように、男子新体操の維持、発展に貢献する。最後にはやってよかったと言えるものにしたいですね。

◆山田小太郎 やまだこたろう
平成16年   国士大大学院修士課程修了
平成19年4月 国士大非常勤講師、同大新体操部監督に着任
同時に財団法人日本体操協会新体操委員会男子普及部部長に就任