
有終の美、アンクル王子ここに/全日本選手権
1、2日目に行われたグレコローマンスタイルでは渡邊、佐藤がベスト16に入賞を果たし、好スタートを切った。しかし「得意なグレコでもっと上位に行けると思っていたのに、残念」(佐藤)と勝ちにこだわるコメントを残す姿もあった。
3、4日目に行われたフリースタイルでは、仲間が次々に姿を消していく中、小田、宮原、加藤(大)、相澤の4人が4日目の最終日にコマを進めた。
そして最終日、全ての階級で前日に比べて一層の激戦が繰り広げられる中、去年を思い出させる場面が訪れる。相澤、加藤、小田と順番に姿を消し、去年の今大会で準優勝を果たした宮原が残ったのだ。周囲からも1番の激戦になると注目を集めていた74㎏級で3、4、5回戦と連続フォール勝ちを収め、自分のペースで試合展開を作り上げていた宮原。5回戦で山名(日体大)に勝利した時には、「決勝までは行ける」(宮原)と確信したという。その言葉通り次の準決勝は、昨年のアジア・ジュニア選手権で銀メダルの鎌田(中京学大)を相手に、ストレート勝ちを果たした。
そして迎えた決勝戦。相手は去年、高校生ながら天皇杯全日本選手権で準優勝を果たした1年生の高谷(拓大)だ。タックル王子と称され、誰もが高谷の勝利に傾く中、「相手が誰であろうと自分のやり方で挑戦するだけ」(宮原)と始まった第1ピリオド。激しい攻防が展開される中、相手の一瞬をついたタックルで2点を取られる。しかし残り数秒で相手のタックルから、がぶり返しを決め第1ピリオドを先取。第2ピリオドでも息をのむ攻防が続く中で、以前課題としていたタックルで攻め足を取り、ポイントを重ねていった。そして、平成4年ぶり本学優勝奪還を果たしたのだ。
試合後、「本当によかったー!」と満面の笑みを浮かべる宮原。5月のリーグ戦で左肩を脱臼して以来、「ケガのため練習不足→試合で負ける→焦りとケガ」と苦しんできた。今回もケガを圧しての出場だったのだが「相手がタックルを得意としていたし、本来ならバックを取りに行くところだけど、左肩を使えないから、そこはがぶり返しに持っていった。持っていくだけのオフェンス力を鍛えていたから、タックル王子だろうと、それが自分に不利に働くことはなかった。相性もよかった」(宮原)と振り返った。
多賀監督も「高谷に勝つのは宮原だ」と、言葉通りの結果となった。また授賞式では優勝メダルと同時に優秀選手賞と最多フォール賞のトリプル受賞を果たし、今大会での宮原の活躍がいかに目立ったことかが証明された。
ケガの治療のため、今大会が学生最後となった宮原。宮原の父は、幻のモスクワオリンピックの代表選手であり、本学在学中はインカレ4連覇の偉業を達成している。そんな父を持ったからこそ「自分もやってやる」と、どうせ手術するのだから、思う存分にプレーすると意気込み、負けることができない試合。「大学に入ってタイトルを取れていなかったし、次に続く後輩にもしめしがつかない。このままでは辞めるに辞められなかった」と、最後だからこそ見せることのできた渾身の戦いをやってのけたのだった。
次に続け!と次の学生王座に向け、本学レスリング部の活気と練習に拍車がかかる。
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